ローカル5Gが効果的な使い道ローカル5Gの可能性【後編】

ローカル5Gはさまざまな分野で活用されるだろう。中でも特に有望で効果的なユースケースとは何か。そしてローカル5Gは今後18カ月の間にどのような展開を見せるのだろうか。

2019年10月21日 08時00分 公開
[Rene MillmanComputer Weekly]

 前編(Computer Weekly日本語版 10月2日号掲載)では、ローカル5Gを巡る環境の整備とローカル5G実現の課題を解説した。

 後編では、ローカル5Gの有望なユースケースやローカル5Gに関する今後18カ月の展望を紹介する。

テスト時間

 5G時代はまだ始まったばかりだ。商用5Gをリリースしている機器メーカーもほんのわずかだ。5Gがその潜在能力を発揮するには、開発、テスト、配備というロードマップを経なくてはならない。イナシオ氏によると、現在導入されている標準バージョン(非スタンドアロン構成)はこのロードマップの最初のステージにすぎないという。

 同氏は、プライベートネットワークの興味深い研究例として、英国政府が後援する「5G Testbeds and Trials」プログラムや、大学のコンソーシアムによる実装を挙げている。

 革新的な企業がこうしたテストベッドを利用して、ネットワークスライシング、完全な「ソフトウェア化」、サービス指向アーキテクチャ、APIとしてのWebサービスの提供など、独特の5G機能からメリットを得るアプリケーションの開発とテストを行っている。

 「こうしたテストの結果として開発されるのが、5Gの標準機能と特性をネットワークアーキテクチャに取り入れたアプリケーションになる。こうしたアプリケーションが、スマートシティー、地方の接続性、スマートツーリズムなど、さまざまなユースケースにおけるソフトウェアとハードウェアの進化を支える」(イナシオ氏)

ユースケース

 ローカル5Gにはセキュリティ、プライバシー、制御、柔軟性という特性がある。これらを活用するのがネットワークスライシング、広帯域幅、低コスト、低レイテンシといった要素だ。

 ユースケースが幅広いのは当然で、最も大きなユースケースの一つは疑いなくオートメーションとIoTだろうとTCSのバダーダ氏は話す。

 「Factory of the Futureの実現を可能にするため、製造関連分野とは特に関係が深い」(バダーダ氏)

 コネクテッドマニュファクチャリングでは、組み立てラインの機械がローカル5Gにワイヤレス接続される。コネクテッドファクトリー環境は大量のデータを生成する。こうしたデータは、ビジネスに関する深い洞察を得て予知保全を実現する人工知能(AI)などで利用できる。

 「全体的に見ると、オートメーション、AI、コネクテッドプロセスなどの開発は、今後数年にわたって企業が業務を適切な方向に変革できるようにする。新たなチャンスを生かして、リスクを受け入れ、製品を充実させるために広いエコシステムを活用することが可能になる」(バダーダ氏)

 海上石油プラットフォームというユースケースもある。このプラットフォームは接続の確立が困難なことで知られている。その理由は、単にプラットフォームから海岸にケーブルを敷設することが現実的ではなかったためだ。従って、石油プラットフォームは長年にわたり低速で頻繁に途切れるネットワークに悩まされている。そう話すのは、NTT Securityでプリンシパルセキュリティコンサルタントを務めるマジッド・アリ氏だ。

 「ローカル5Gの強力なワイヤレス速度を生かして、これらのプラットフォームが生産高の計算、重要なシステムのローカルかつ一元的な制御、より良い形態での通信、悪天候の計算ができるようにすることを目指している」(アリ氏)

 他にも、興味深いユースケースに戦場がある。アリ氏によると、政府機関や義援団体は正確な情報をリアルタイムに提供することにいつも苦労しているという。

 「国家インフラは厳しい制約を受けるため、ここでもローカル5Gが役立つ。政府機関は、世界で最も激しい戦争地域の一部にリモート5Gネットワークを展開できるようになるだろう。5Gの設置が最優先事項になるのは間違いない。事前構成済みで、電源が用意でき次第すぐに使えるようになるはずだ」(アリ氏)

今後18カ月のローカル5Gの行方

 アリ氏によると、幾つかの組織がローカル5Gの導入に積極性を高めているのは確実だという。

 「例えばVolkswagenは、2020年までに122カ所の工場に5Gを展開しようとしている。そのため、今後12~18カ月はビジネス要件の考案、サプライヤーへの入札、5Gのテストを行う重要な期間になるだろう。2020年末には、ローカル5Gが多くの組織で一般的になると予想される」(アリ氏)

 エズィールパバイ氏によると、産業部門については予算とリソースがある大企業がローカル5Gを他に先駆けて導入するという。

 「業界の中でもエンターテインメント、スポーツ、軍需、石油採掘、鉱業、航空宇宙といった分野がローカル5Gを導入すると思われる。エコシステムが十分に確立され、ベストプラクティスのガイドラインが出来上がれば、中小企業もそれに続く可能性が高い」(エズィールパバイ氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€驛「譎擾スク蜴・�。驛「�ァ�ス�、驛「譎冗樟�ス�ス驛「譎「�ス�シ驛「譏懶スサ�」�ス�ス

製品資料 ゾーホージャパン株式会社

ネットワーク遅延の原因を追究、帯域利用の現状分析と将来予測を手軽に行う方法

リモートワークやクラウドサービスが拡大する中、ネットワーク遅延の課題を抱える企業も少なくない。通信遅延は生産性にも影響するだけに契約帯域の見直しも考えられるが、適切な帯域を把握するためにも、帯域利用状況を分析したい。

事例 株式会社マクニカ

通信コストを約4分の1削減&Web会議も快適に、事例で学ぶネットワーク改善術

在宅勤務でSIM通信を利用していたが、クラウドの通信量急増により、帯域が圧迫されWeb会議での音切れが発生したり、コストがかさんだりと、ネットワーク環境の課題を抱えていたシナネンホールディングス。これらの問題を解消した方法とは?

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VPNが「もはや時代遅れ」であるこれだけの理由

VPN(仮想プライベートネットワーク)は、セキュリティの観点から見ると、もはや「安全なツール」とは言い切れない。VPNが抱えるリスクと、その代替として注目されるリモートアクセス技術について解説する。

製品資料 アルテリア・ネットワークス株式会社

VPNの3つの課題を一掃する、次世代インターネットVPNサービスの実力

インターネットVPNサービスの市場規模は増加傾向にあるが、パフォーマンスやセキュリティなどの課題が顕在化している。VPNの利用状況などのデータを基にこれらの課題を考察し、次世代インターネットVPNサービスの利点と可能性を探る。

市場調査・トレンド ゼットスケーラー株式会社

ファイアウォールとVPN中心のセキュリティアプローチは危険? 4つの理由を解説

代表的なセキュリティツールとして活用されてきたファイアウォールとVPNだが、今では、サイバー攻撃の被害を拡大させる要因となってしまった。その4つの理由を解説するとともに、現状のセキュリティ課題を一掃する方法を解説する。

驛「譎冗函�趣スヲ驛「謨鳴€驛「譎「�ス�シ驛「�ァ�ス�ウ驛「譎「�ス�ウ驛「譎「�ソ�ス�趣スヲ驛「譎「�ソ�スPR

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ローカル5Gが効果的な使い道:ローカル5Gの可能性【後編】 - TechTargetジャパン ネットワーク 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

TechTarget驛「�ァ�ス�ク驛「譎「�ス�」驛「譏懶スサ�」�趣スヲ 髫エ�ス�ス�ー鬨セ�ケ�つ€鬮ォ�ェ陋滂ソス�ス�コ�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。