HCIはストレージ共有よりも優れた選択肢になり得るのか。どんな組織がどのような規模で導入した場合に最大の恩恵を受けられるのか。
HCIのメリットの一つに運用の手軽さが挙げられる。
3つの技術スタックを1つにまとめることで複雑性が薄れ、ストレージアレイを評価する必要がなくなる。コンピューティングノードの標準化によってメンテナンスや拡張が簡単になり、過剰プロビジョニングを防ぐ助けになる。コンピューティングとストレージとネットワークのプロビジョニングや導入、管理は単一のインタフェースで行う。複数のチームが関わってコンピューティングサーバやストレージアレイ、ネットワーク機器の調整を行う、コストと手間の掛かる導入作業を排除する。チームがハードウェアを接続して相互運用性を検証したり、組織特有のニーズに対応した難しい設定や変更に苦慮したりする必要はない。
元々HCIは、コンピューティングとソフトウェア定義ストレージおよび仮想化されたネットワークの「構成要素」として提供されていた。従来のSANやNASと比べたHCIの主なメリットは、NASやSANを調達して導入するには時間がかかるのに対し、HCIは比較的少規模の増設が可能な点にある。
英国ストックポート市のIT運用マネジャー、エイドリアン・デイビーズ氏によると、同市が最近導入したHCIによって「古い3層のSANではアップグレードが本当に心配だった状況は、完全に一変した」と言い、その状況は「悪夢」だったと振り返った。
同市が導入したNutanix製品は簡単にアップグレードできる。「iPhoneで最新バージョンのiOSにアップデートすると、たくさんの新機能が導入されるようなもの」と同氏は形容している。
HCIの市場は、SANおよびNASの市場と同様に流動性が高く、どちらを選ぶかの判断が難しくなっている。
Tintri by DDNの上級システムエンジニア、ピーター・スミス氏によると、HCIとSAN/NASの境界は今後もずっと曖昧な状況が続くと予想され、意思決定のプロセスは最終的には個人的な好みに尽きるという。
「だがほとんどの用途において、HCIは依然としてSME(中堅・中小企業)市場に最も適しているのに対し、従来型のSANやNASをベースとする3層アーキテクチャは柔軟性が高く、大企業に向いている」とスミス氏は言う。
マーシナ氏によると、一部のサプライヤーはHCIを解体し、コンピューティングとストレージを個別に拡張できるようにしている。「この場合、ストレージノードはCPUとデータを動かすのに必要なメモリを搭載し、コンピューティングノードはローカルワークロードへの対応に必要なだけのストレージを搭載する。両ノードとも引き続きHCIの『構成要素』として機能し、必要に応じてストレージノードやコンピューティングノードを追加できる。この形態のHCIの方が導入は複雑になる」
サプライヤーのパフォーマンスの向上は、大規模企業がもっと多様な用途にHCIを利用することにつながり、SANを追い抜く可能性もあるとマーシナ氏は言う。「解体も一役買うかもしれない。大企業は一般的に、ある程度の複雑性の増大や最低限のノード条件にはちゅうちょせず、拡張の際の柔軟性が高まることを歓迎する。だが最もエキサイティングな展開は、組み立て可能インフラ、すなわちHCIを超えた次の段階にあるかもしれない。これはIaC(Infrastructure as Code)と形容されることもある」
そうした技術については、それ自体の間に競争が存在しないという認識が大切だ。ほとんどの組織は、さまざまな選択肢を組み合わせて各ワークロードに対応させることでうまくいっており、どれが自分たちのワークロードに適しているのかを自分たちで判断するのが最善だ。
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