2019年11月01日 08時00分 公開
特集/連載

ハイパーコンバージド製品の選定・調達時に検討すべき要素Computer Weekly製品ガイド

コスト削減とパフォーマンス向上を目的としたハイパーコンバージドインフラの導入方法について解説する。

[Stuart Burns,Computer Weekly]

 経験の少ない担当者にとって、ITの調達は常に地雷原のようなものだ。ハイパーコンバージドインフラ(HCI)でもそれは変わらない。だがHCIは、適切に導入すれば膨大なコスト削減につながる可能性を秘めている。

 コスト削減や性能向上を達成するためには、何を買うかだけでなく、想定されるワークロード(現在と将来的なニーズ)がどのように実行されるか、追加的な(場合によっては有料の)機能がどのように成否を左右し、調達プロセスに影響するかを理解しておく必要がある。

 単純に言うと、完全に同一のワークロードやビジネスニーズは一つとして存在しない。HCIサプライヤーが提供する(有料の)オプションは価格だけでなく、システム全体の性能や機能に多大な影響を及ぼす。

ハードウェア性能

 製品の中核となるベーシックな機能は大抵、どの製品でも変わらない。違いはハードウェア性能(ハードウェア構成の違い)や、そうしたレベルで提供されるソフトウェアのオプションにある。

 新規のHCI購入者に向けた最善のアドバイスは、セールストークや念入りに演出されたデモに目をくらまされてはいけないということだ。その製品が提供する主要機能に加えて、性能に関する最低限の条件を見極めることが最初の一歩となる。その条件をはっきりさせ、ビジネスとITのニーズを確実に優先させる必要がある。そうすれば、選定プロセスがやりやすくなる。

 いったんサプライヤーを選定したら、その後変更することは実質的に不可能になる。インフラを完全に入れ替えることになるため、相当のコストが発生するからだ。

オプションの検討

 HCIの調達を検討する理由として特に多いのがストレージスペースであり、ストレージインフラのコスト削減だ。ストレージとネットワークハードウェアに加え、管理ツールも重要な検討課題になり得る。

 管理ツールは全体を管理する手段を提供し、HCIエクスペリエンスを実質的に下支えする。ここでも各サプライヤーが標準で提供している内容を確認する必要がある。役に立つ機能の多くは、追加オプションとしてしか提供されない。一般的な追加オプションには、一元管理やシングルサインオンなどがある。

 主要アドオンの中でも暗号化には注意が必要だ。欧州連合(EU)の一般データ保護規則(GDPR)に対応して、実質的に全HCIサプライヤーがフルディスク暗号化を提供している。データの紛失や盗難は途方もないコストや罰金につながりかねない。従って、そうした技術の活用は合理的だ。

暗号化の実装

 HCIの暗号化の実装には2つの形態がある。自己暗号化ドライブ(訳注)は、ドライブの最も基本的なレベルであるファームウェアで暗号化を提供する。従って性能が落ちることはまずない。これはHCIの管理画面で管理できるが、料金はHCIとセットになった標準的なストレージよりも相当高額になる傾向がある。

訳注:自己暗号化ドライブについては、Computer Weekly日本語版 2018年11月7日号の「自己暗号化ドライブ(SED)で守れるもの、守れないもの」も参照。

 その代替となる第2の選択肢がソフトウェア実装型の暗号化だ。これはHCIサプライヤーが料金を上乗せできるオプションとして提供することが多い。この2つのアプローチの違いはコスト対性能に尽きる。

 ただし、ソフトウェア暗号化を提供しているHCI企業の大半は、カスタムハードウェアが支える暗号化と圧縮、展開のルーティンにより、ソフトウェア暗号化がHCIアレイの性能に悪影響を及ぼす可能性があると主張する。

 ハードウェアが支える実装とはソフトウェアベースの暗号化を意味していて、復号プロセスは極めて速いということを理解している管理者はほとんどいない。つまり、HCIサプライヤーが提供するソフトウェア暗号化のオプションは優れた性能を発揮する傾向がある。

 大抵の場合、たとえ大規模なクラスタであっても48時間以内に完全な暗号化や復号が可能だ。これはアップグレードや暗号化に関する問題が生じた場合に役に立つ。

 だが最先端にいることは問題も招きかねない。最終的には予算およびどの程度の性能を必要とするかによって、暗号化に対するどのアプローチが自分たちのニーズに適しているのかを判断する。

 暗号化オプションの検討に当たっては、ハードウェアの互換性も考慮する必要がある。提案されたハードウェアがHCIソフトウェアに対応していることを、IT管理者は必ず確認しなければならない。信頼できるサプライヤーのほとんどは、サポート対象の暗号化ハードウェアの一覧を記載したハードウェア互換性リストを提供している。

 ただしこのリストの掲載数は少なく、カスタムファームウェアの選択肢は限られる。一部のサプライヤーは汎用(はんよう)ホワイトボックスサーバをサポートしているものの、これが問題になることもある。もしも想定通りに機能しなかった場合、誰が責任を持つのか。HCIサプライヤーか、それともサーバを販売した業者か。

 HCIは平たん化されたスタックが原因で、標準的な仮想化されたインフラとは違う問題が起こり得る。その一例として、特定の種類のワークロードがうまくいかないこともある。

 例えば「Microsoft SQL Server」のような極端に重い出入力プロファイルを伴う場合、インライン重複排除と圧縮アルゴリズムを経るため性能が低下する。

 小規模であればほとんどのユーザーはこれに気付かない。だがデータのサイズが増えるほど、インライン重複排除と圧縮アルゴリズムを実行するために、より高い性能が求められる。IT管理者によるストレージ最適化を支援するためには、重複排除と圧縮は欠かせない。

性能に与える影響

 だが、複雑なSQL Server環境のケースのように、そうした「必須の」機能が性能に悪影響を及ぼすこともある。HCIを管理するIT管理者は常に、そのインフラを使うワークロードの入出力ニーズの上を行く必要がある。

 インライン重複排除を無効化すれば、容認できるレベルの性能を維持する助けになる。ストレージ最適化の機能(ワークロード性能に好影響を与える場合も与えない場合もある)に加え、ほとんどのHCIサプライヤーは独自のハイパーバイザーも提供している。

 IT部門がITインフラのコストを大幅に削減できる手段を追求する場合、HCI製品にバンドルされるハイパーバイザーを最初から切り捨てるべきではない。

 仮想化のライセンス料がソケット当たり数千ポンドに達することもある時代の中で、無料のハイパーバイザーを使えばコストを大幅に削減できるかもしれない。ただしリスクもある。

 管理ツールは全て、特定のハイパーバイザーに対応した設計になっている。このツールは時とともに進化する。新しいハイパーバイザーに対応するためにそれを入れ替えると問題が起きることもある。そのHCIサプライヤーのハイパーバイザーに対応したツールが存在しないことさえある。

アプローチの変更は慎重に

 ハイパーバイザーの刷新に踏み切る前には慎重な対応が必要だ。IT部門にコスト削減の新しいチャンスをもたらすHCI製品の標準的なオプションは他にも存在する。

 災害復旧システムはHCIに対応しているはずだが、各サプライヤーは自らの製品セットでフェイルオーバー機能を提供し始めている。

 HCI内蔵のフェイルオーバー機能については検証を行う必要がある。全般的に、HCIの導入には十分な計画が求められるので、自社のビジネスニーズのうちどれが必須なのかを問い掛けなければならない。

 自分たちが求める仕様に対応できるHCIサプライヤーは限られる。標準機能やオプションなどの組み合わせはそれぞれで異なる。

 機能やオプションの複雑な要素を検討し、機能やオプションと料金との間で最も均衡が取れたHCIサプライヤー1社に絞り込んだ後も、どんな評価においても見過ごしてはならない最後の要素が一つある。

 サポートや技術および全般的な支援の観点からも、自分たちが選んだHCIサプライヤーに会社として100%満足していることを確認しなければならない。以後はそのインフラのライフタイムを通じ、そのサプライヤーに縛られることになるのだから。

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