RESTはオワコンか、クエリ言語は「GraphQL」の時代へRESTで十分な用途もあるが

RESTはコンピュータ間のクエリをシンプルに解決してくれたが、不便な場面も見られるようになった。複雑なクエリについてはGraphQLの方が向いているかもしれない。

2019年10月30日 08時00分 公開
[ITmedia]

 ゆっくりとだが、ある興味深い変化がデータセンター全体に浸透しつつある。それは、運用の管理にREST(Representational State Transfer)を使うという動きだ。これによりデータセンターアーキテクチャのモデルが使いやすくなり、自動化とオーケストレーションの機会が広がる。RESTは、コンピュータが普遍的なHTTPプロトコルを使って簡単に通信する方法として2000年に初めて導入された。RESTにより、さまざまなシステムを疎結合して情報を交換することが可能になった。

 ただし最近、データセンターの軸足はRESTからGraphQLへとややシフトしている。

GraphQLとRESTの違い

会員登録(無料)が必要です

 RESTの中心にあるのは「全てが1つのリソース」という考え方だ。当初は、この考え方が優れたソリューションだった。だが、このアーキテクチャは幾つか大きな問題に直面している。RESTのリソースは1つに限定される。つまり2つ以上のリソースのデータを問い合わせる場合、ユーザーはサーバと複数回やりとりする必要がある。

 例えば「テニスが趣味の35~45歳の女性」を問い合わせるとしよう。まず、テニスが趣味の人を見つけるクエリを実行する。次に対象年齢、性別などを絞り込むクエリを実行しなければならない。

 GraphQLを使えばよりきめ細かなクエリが可能になり、結果のデータを効率良く返すことができる。GraphQLは基本的な前提として、包括的なデータスキーマを利用者に公開し、利用者が必要なものを明確に決定できるようにする。RESTエンドポイントとは異なり、どのリソースでも全てのデータを1回のやりとりでクライアントに送信できる。

 その理由は、GraphQLが柔軟性の高いアプローチを使って設計されている点にある。

APIの柔軟性

 GraphQLは専用のリソースを扱うのではなく、全てのリソースをつながったグラフと見なす。そのため、ニーズにぴったりと合うようにクエリを調整できる。GraphQLを使うと、自身のアプリケーション用に柔軟性の高いAPIをすぐに構築できるため、クエリに費やす時間が大幅に短縮される。

 さらに、GraphQLは応答に含めるフィールドをユーザーが指定できるため、応答に必要なデータを限定できる。1つのクエリで、1つのGraphQLデータクエリ内で結び付いている複数のエンティティーを組み合わせることも可能だ。

 RESTは、データフィールドのサブセットのみを取得するように要求を限定することはできない。そのため、大きなデータセットを管理する際は扱いにくくなる。多くのSaaSプラットフォームがGraphQLを選んでいる理由はこの点にある。

新たな夜明け

 APIを使うと機能が高まり生産性が向上することから、企業がサービスを提供する方法に革命が起きている。こうした企業はマルタ航空からNew York Timesまで多岐にわたる。

 APIの経済効果は後々にまで影響を及ぼす。GraphQLは、各リソースに必要なデータを宣言で指定する新たな方法をデータの利用者に提供する。つまり、転送するデータや必要なコードが少なくなる。その結果として、最終的には動作がさらに高速になる。

 GitHubなどの膨大な量のデータを管理するソフトウェア企業が急速にGraphQLを導入しているのは理にかなっている。

 GraphQLは、RESTへのとどめの一撃というわけではないだろう。とはいえ、長きにわたって利用される豊富な強化点を含んでいる。

レベッカ・フィッツフュー氏はRubrikのプリンシパルテクノロジスト。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 サイボウズ株式会社

「ERP×ノーコードツール」のアプローチを推進するためのポイントとは?

DXが進み、レガシーシステムからの脱却が喫緊の課題となっている今。「ERP×ノーコードツール」のアプローチで基幹システムの刷新に取り組む企業が増えている。そのアプローチを推進するに当たってのポイントを解説する。

事例 サイボウズ株式会社

ローコード/ノーコード開発ツールで実現する、変化に強い組織の作り方

DXの本質は、デジタル技術を駆使して変化に適応する能力を身につけることにある。その手段の1つとして注目を集めているのが、ローコード/ノーコード開発ツールだ。京王グループなどの事例とともに、その特徴やメリットを紹介する。

事例 サイボウズ株式会社

ノーコードツールでDX人材を育成、京セラや日本航空などの事例に学ぶ効果の実態

DX人材の重要性が高まる中、ノーコードツールの活用によって業務改革と人材育成を両立しようとする動きが活発化している。年間約780時間の工数削減を実現した京セラをはじめとする5社の事例を基に、その実態を探る。

事例 アステリア株式会社

ものづくり現場で「足かせ」のアナログ業務、9社の事例に学ぶ業務改善の秘訣

急速に進化するデジタル技術は、製造業などのものづくりの現場にもさまざまな恩恵をもたらしている。しかし、設備点検業務や棚卸業務などの立ち仕事や移動が多い現場では、いまだにアナログ業務が残存し、効率化の妨げとなっているという。

事例 アステリア株式会社

工場・倉庫の「隙間業務」をデジタル化、11社の事例に学ぶ現場DX

あらゆる業界でDXの重要性が増しているが、工場や倉庫の中にはデジタル化が後回しにされている隙間業務が多数ある。その理由を明らかにした上で、それらの業務をモバイルアプリでデジタル化し、現場DXを推進する9社の事例を紹介する。

From Informa TechTarget

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは

いまさら聞けない「仮想デスクトップ」と「VDI」の違いとは
遠隔のクライアント端末から、サーバにあるデスクトップ環境を利用できる仕組みである仮想デスクトップ(仮想PC画面)は便利だが、仕組みが複雑だ。仮想デスクトップの仕組みを基礎から確認しよう。

ITmedia マーケティング新着記事

news025.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年5月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。

news014.png

「サイト内検索」&「ライブチャット」売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、サイト内検索ツールとライブチャットの国内売れ筋TOP5をそれぞれ紹介します。

news046.png

「ECプラットフォーム」売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、ECプラットフォーム製品(ECサイト構築ツール)の国内売れ筋TOP10を紹介します。