ムーアの法則が破綻しても性能向上が続く理由でもIntelはムーアの法則は有効と主張

CES 2017で、Intelはムーアの法則が今後も有効であるとあらためて主張した。しかし、ムーアの法則はやはり限界に近づいており、そもそもムーアの法則は性能を語る際の尺度としては意義を失いつつあるという。

2017年03月29日 08時00分 公開
[Daniel RobinsonComputer Weekly]

 2017年初に米ラスベガスで開催された「CES 2017」の開会スピーチで、Intelはムーアの法則が今でも有効であり、2017年後半に10ナノ(以下nm)プロセッサをリリースする予定だと主張した。しかし実のところ同社のエンジニアは、システムのパフォーマンスを押し上げ続ける方法の開発において課題に直面している。

 ムーアの法則はもう無効だという主張が聞かれたのは、今回が初めてではない。しかしIntelとそれ以外のチップメーカーはこれまでのところ、トランジスタを縮小する新しい手法を編み出して演算性能を向上させ、2年ごとに密度を倍増させるという目標を達成し続けてきた。

 Intelのチーフエグゼクティブ、ブライアン・クルザニック氏はCESの壇上で次のように発言した。「私はこの業界で34年も働いているので、『ムーアの法則はもはやこれまで』という説は、昔から飽きるほど聞いてきた。だから私は今、ムーアの法則は今も健在で発展を続けていることを実際に皆さんにお見せして分かっていただくために、ここでお話ししている。ムーアの法則は、私が将来この業界を去った後でさえ、有効性を維持しているだろう」

物理的な限界に近づいている

 しかし性能向上のペースは低下している。そこでIntelは、10nmチップに続いて7nmチップや5nmチップを実現するための技術開発に着手している。しかし10nmチップの市場投入自体、製造プロセスが困難に直面しているために、既に1年も遅れている。そしてこの課題は、解消するどころか増える一方のようだ。微小化のアプローチは物理的な限界にほぼ達しているからだ。

 「チップが5nmよりも小さくなるとは思えない。ムーアの法則はそこで限界だろう。シリコンチップの時代がその時点で終わるだろうから」と話すのは、調査会社Ovumの主席アナリスト、ロイ・イルスリー氏だ。一部のIT業界ウォッチャーも、今後10年程度でその「時代の終わり」を迎えると考えている。

 シリコンに代わるものとしては、光コンピュータ(フォトニクス)や量子コンピュータなどが挙がっているが、今のところ議論は集約されていないようだ。ただしこれは、演算性能の拡大がそこでいったん停止するという意味ではない。データセンターのハードウェアとソフトウェアは、チップを1つだけ搭載したサーバでモノリシックなアプリケーションを稼働させていた時代から進化を続けてきたのだから。

 「アプリケーションの開発手法はすっかり変わった」とイルスリー氏は振り返る。「今は“分散環境でスケーラブルに”が主流となりつつある。ムーアの法則はどのみち、コンピュータの性能を語る際の尺度としては意義を失いつつある」

 実は以前にも、ハードウェア業界は現在と似たような危機を経験している。




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