IBMが研究を進めている「圧電効果トランジスタ」は、消費電力を大幅に抑える可能性を秘めている。CPUの高速化、バッテリー寿命の延長、デバイスの小型化などが実現するかもしれない。
1991年、ソニーはトランジスタ工学を駆使して持ち運び可能なリチウムイオンバッテリーを商品化した。これにより携帯電話やノートPCに革命が起こり、タブレットやスマートフォンが登場する下地が作られた。
それから4半世紀、リチウムイオンバッテリーに大きな進化は見られない。当初は進化の必要がなかった。ハンディービデオカメラに求められるバッテリーのサイズや重量など、ソニーとっての初期の問題はリチウムイオンバッテリーによって一部解決された。また、その当時一般消費者が利用する携帯電話にとっても適切な解決策だった。
これは2000年代始めまで変わることはなかった。当時の携帯電話なら、バッテリーを再充電しなくても終日使えたからだ。だが、この10年で完全にスマートフォンの時代に突入し、機能やパフォーマンスが飛躍的に向上した。それにもかかわらず、バッテリー寿命だけは依然変わらない。これが問題になっている。
最新のスマートフォンは以前に比べて10倍以上高速になっている。ところが、バッテリーは平均的な使い方をしても終日もてばもうけものというありさまだ。初期「iPhone」と「iPhone 6s」に大きな機能差があることを考えると、バッテリー寿命が変わらないことは驚きだ。だが、この問題ではバッテリー寿命を延長することよりも、プロセッサとの関係性を改善する方が重要視されている。
現在、研究者によって「圧電性トランジスタ」物質の開発が進められている。この物質により、現在の10分の1の電圧でプロセッサが駆動する可能性がある。その結果、消費電力が100分の1未満に抑えられ、バッテリー寿命が飛躍的に向上する。
この新たな圧電性物質は、加えられた電圧に応じてその形状が変化する。つまり、「ひずみ」が生じる。電圧を下げると元の形状に戻る。
この物質の力学的性質と電気的性質には密接な関係がある。電圧を掛けることで物質の分子双極子モーメントが強制的に再配向され、その結果として物理形状に変化が生じる。この関係性には可逆性がある。そのため、圧電アクチュエーターによって生じたひずみを加えることでピエゾ抵抗物質の絶縁状態と伝導状態を切り替えることができる。それによってデジタル情報を読み書きできる可能性がある。
IBMの研究者が、圧電効果トランジスタ(PET)テクノロジーに関する初の特許を申請し、この圧電性物質に基づいたプロトタイプデバイスを開発した。
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