従来型WANでは駄目な理由
なぜ従来型WANからSD-WANに移行する必要があるのか
従来型WANではパフォーマンスの課題や運用の問題に直面する。さらに安全性が低下するという。それはなぜか。しかし、単にSD-WANを導入すればいいということではない。SD-WANには何が必要なのか。
IDCによると、SD-WANインフラとサービスの全世界収益は、年平均成長率69.6%で増加している。2021年にはこれが80億5000万ドル(約8500億円)に達するという。
アジア太平洋地域では、ソフトウェア定義WAN(SD-WAN)に切り替える企業が増えている。特に東南アジアでは、約56%の企業がSD-WANを既に導入しているか、導入を計画している。IDCによると、SD-WANの導入を促す要因として、こうした企業の30%近くがポリシーベースの制御、WAN最適化といった機能を挙げているという。
だが基盤となる帯域幅が不十分だとSD-WANのメリットは得られない。こう指摘するのは、Tata Communicationsでグローバルネットワークサービス部門のバイスプレジデントを務めるソン・トー氏だ。
企業がクラウドサービスの利用を拡大するには、品質が十分に高い帯域幅に投資する必要があることは依然変わらないというのが同氏の意見だ。
「パフォーマンスが低く、60%の時間しか接続されないネットワークを基盤にSD-WANを展開しても役に立たない。有効なのは、ニーズと接続品質に基づいてトラフィックを管理する制御層を用意することだ。だが、タダでは手に入らない」(トー氏)
同氏は、SD-WANへの移行時に古いネットワーク機器を新しい機器に置き換えるだけでは駄目だとも警告する。「誤った構成によってネットワーク全体がダウンすることがないよう、ある種のゲートウェイアーキテクチャを利用して古いサイトと新しいサイトを分離する必要がある」と同氏は補足する。
またSD-WANの導入に当たって適切なポリシーを設定し、サービス品質(QoS)要件に基づいてトラフィックを最適化することも必要だ。そうすることでネットワークの混雑を避けられる。
「全てをクラス1に割り当てれば、ネットワークは混雑するだろう。従業員の満足度は重要だが、企業ネットワークでは『Netflix』のトラフィックを低減させたり、抑制したりする必要がある」とトー氏は補足する。
IDC Asia/Pacificで電気通信の上級リサーチマネジャーを務めるニクヒル・バトラ氏によると、ブランチオフィスとリモートサイト間の双方向WANトラフィックの大半がクラウドに向けられており、クラウドベースのアプリケーションやホスト型のアプリケーションに送られているという。
「従来型のWANはブランチオフィスとデータセンターのトラフィックを対象に設計されている。そのためクラウド中心の新しいトラフィックパターンを効率的にはサポートできない」とバトラ氏は語る。従来型ネットワークをまだ利用している企業は、パフォーマンスの課題や運用の問題に直面するだろうと同氏は指摘する。
例えば、さまざま部門の多様な要件やアプリケーションをサポートするニーズはもちろんあるが、それだけではない。従来型のネットワークアーキテクチャは柔軟性に欠ける。企業が新たな市場への進出を検討しても、必要なアジリティーをサポートするのは難しい。
シャドーITの増加や従来型WANの安全な領域外からのリモートアクセスなどによって、ネットワークには複雑性も加わる。その結果、従来型WANは自然と安全性が低くなるとバトラ氏は話す。
「SD-WANとは、WANをクラウドの時代に合わせて変えたものにすぎない。ブランチオフィスとリモートサイトの構成に一貫性を持たせ、ユーザーがアプリケーションに確実に接続できるようにする。さらにセキュリティを確保し、ネットワークやアプリケーションのパフォーマンスを最適化して、プロセスの複雑さとコストを軽減する」(バトラ氏)
トー氏によると、多くの企業はMPLS(Multi-Protocol Label Switching)リンクとTata Communicationsの「IZO Internet WAN」を組み合わせてネットワーク接続のコストを抑えているという。IZO Internet WANは、一貫したネットワークパフォーマンスを提供することがサービスレベル契約(SLA)で保証されている。
「10MbpsのMPLSリンクを利用している場合、帯域幅を50Mbpsに増やすとコストが高騰する。だがMPLSリンクに40Mbpsを追加し、SD-WANを備えたIZO Internet WANでトラフィックの品質を制御すればコストを抑えることができる」(トー氏)
トー氏によると、他のサービスプロバイダーもインターネットWANサービスを提供しているが、中にはパブリックインターネットを利用してトラフィックをルーティングするものもあるという。このようなサービスは調子の良いときは機能するが、トラフィックが世界中の幾つかの場所を経由する可能性があると適切に機能しない。
Tata Communicationsは市場に挑戦する立場なので、BTやAT&Tなどの世界的なライバル企業に比べてMPLSの収益は多くない。
「数十億ドルのMPLS収益を得るかもしれない従来型の大手通信会社がこうした切り替えを行うには、大きな困難が伴う。だが、当社であれば企業が品質への要件やニーズに基づいてMPLSリンクの80%から100%を交換するのを柔軟に支援できる」(トー氏)
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