「無料Webサービス」に売り渡した個人情報の可視化ツールどんな情報が収集されているのか

無料のWebサービスを使うと、どのような個人情報が収集されるのか。F-Secureがこれを簡単に確認できるツールを公開した。このツールを使って一度確認してみることをお勧めする。

2019年09月06日 08時00分 公開
[Warwick AshfordComputer Weekly]

 F-Secureが、無料のオンラインツールを開発した。このツールは無料のWebサービスを利用すると発生する「真のコスト」を明らかにする。つまり、Google、Apple、Facebook、Amazon.com、Twitter、Snapなどが収集している大量のユーザーデータを可視化する。F-Secureの「Data Discovery Portal」は、見つけるのが難しいリソース(訳注)をユーザーに提示し、ユーザーが自分のデータを安全かつ非公開で確認できるようにする。

訳注:各Webサービスが用意している、個人情報収集状況の確認ページ。

 F-Secureの最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務めるエルカ・コイブネン氏は次のように話す。「データが収集されるのは、ユーザーと利用しているサービス間のデータのみだ。当社がユーザーの設定やデータを把握することはない。把握したいとも考えていない。当社の目的は、そのサービスによってユーザーの情報がどの程度収集されているかを、ユーザー自身が把握できるようにすることだけだ」

 コンサルティング企業Cambridge Analyticaがユーザーの許可を得ずにデータを収集していたことが明らかになったスキャンダルを受けて、Facebookの成人ユーザーの半数以上(54%)がFacebookの利用方法を調整した。だがこの世界最大のソーシャルネットワークは今も成長を続けている。Facebookのレポートによると、2018年末時点で月間ユーザー数は23億人に達し、前年と比べて第4四半期の利益が61%、年間利益は39%増加しているという。

 Facebookは、Cambridge Analyticaの件で50億ドル(約5300億円)を支払うことで連邦取引委員会(FTC)と和解する可能性がある。評論家によれば、2019年第1四半期に150億ドル(約1兆600億円)以上の収益を記録したとされる同社にとって、この支払額は「軽い処罰」であり、たいしたことではないという。

 コイブネン氏は次のように補足する。

 コイブネン氏は次のように補足する。「『サービスに対価を支払っていないとしたら、あなた自身が商品だ』という言葉を耳にすることは多いだろう。だが、サービスに対価を支払っているかどうかを問わず、企業にとってはそのユーザーのデータが資産になる。テクノロジー企業はそうしたデータを利用して、広告や製品で数十億ドルを売り上げることができ、史上最高の利益を生み出すビジネスを構築している」

 データ侵害が起きる前後またはその最中に、ユーザーの身元を安全に保護することを重視するF-Secureの取り組みの一環としてこのツールを提供しているというのが同社の見解だ。「無料」サービスの隠れたコストの認識を広めることで、ユーザー自身のデータやユーザーの身元を保護する重要性がかつてないほど高まっていることを、ユーザーに認識してもらうことがData Discovery Portalの狙いだ。

 F-Secureが英国を含む9カ国400人のユーザーを対象に実施した最近の調査によると、26歳以上のインターネットユーザーの54%が、自身のソーシャルメディアアカウントが誰かにハッキングされることを恐れているという。そうしたデータの安全性は、そのデータを収集する企業のネットワークと同程度で、パスワードやアカウント保護に使われる戦術と変わらないというのが同社の見解だ。無料サイトが提供する設定は役には立つが、その設定でデータの収集が排除されることはないと同社は伝えている。

 「ユーザーは事実上自発的に個人情報を提供している。だが、自分の身元について家族と共有するよりも多くの洞察を含むアカウントを作成することで、プライバシーやセキュリティにどのような影響があるかを認識する必要がある。侵害やアカウントの乗っ取りによって、アカウントに含まれる全ての情報がハッカーの手に渡る恐れがある」とコイブネン氏は話す。

 永久にセキュリティをロックダウンしたり、利用を選択したサービスからセキュリティを隠すために、ユーザーが利用したりできる「確実な手段」はないと同氏は言う。

 「ソーシャルネットワーク、アプリ、ブラウザ、サービスのいずれを利用するとしても、一般に、プライバシーのデフォルト設定は非常に緩くなっている」(コイブネン氏)

 「まだならば、今からサービスの設定を見直してほしい。その後も定期的な見直しが必要だ。何をするにしても、サービスにログインすればそのサービスを提供している企業に情報を提供することになる。それを止める手だてはない」

 F-Secureは、個人のプライベートなデータをソーシャルメディアから切り離すことを推奨する。それには、

  • ブラウザを使い分ける
  • 「WhatsApp」よりも「Signal」などの暗号化されるアプリを使う
  • 「ProtonMail」など、有料電子メールサービスを利用する
  • 年齢、交際状況、場所などの情報をロックダウンする

といったやり方がある。

ITmedia マーケティング新着記事

news115.jpg

「TikTok禁止法案」に米大統領が署名 気になるこれからにまつわる5つの疑問
米連邦上院が、安全保障上の理由からTikTokの米国事業の売却を要求する法案を可決し、バ...

news077.jpg

「気候危機」に対する理解 日本は米国の3分の1
SDGsプロジェクトはTBWA HAKUHODOのマーケティング戦略組織である65dB TOKYOと共同で、「...

news058.jpg

アドビ、Adobe Firefly機能搭載の「Adobe Express」モバイル版アプリを一般提供
アドビは、生成AI「Adobe Firefly」の機能を利用できる「Adobe Express」モバイル版アプ...