Salesforceの牙城に殴り込み
会議ツールの限界を突破できるか 「AI営業基盤」でCRM参入するZoomの勝算
Teamsの台頭で成長鈍化に悩むZoomが、SalesforceやHubSpotに対抗するAI営業基盤を発表した。企業の根強いCRM乗り換え障壁を崩し、起死回生のシェア奪還を果たせるのか、その勝算に迫る。
Zoom Communicationsは2026年9月15日、AIを搭載した「revenue OS」を発表した。SalesforceやHubSpotなどの有力CRMベンダーに対抗し、大企業市場での存在感を立て直す狙いだ。
Web会議プラットフォームの老舗である同社は、全米最大級の技術イベントであるSalesforceの年次カンファレンス「Dreamforce 2026」(サンフランシスコ開催)の初日にrevenue OSを発表した。
2011年設立のZoomは、Web会議技術の先駆者として知られる。2020年から2021年のパンデミック下のロックダウン期間中に急成長を遂げた。だがその後、Microsoftの「Microsoft Teams」がビジネス向けWeb会議の標準ツールとなった。これに伴い、Zoomの市場シェアと売上高の成長率は急減した。
Zoomが発表したAI営業基盤は、企業の根強いCRM乗り換え障壁を崩し、起死回生のシェア奪還を果たせるのか、本記事ではその勝算に迫る。
revenue OSは何ができるのか?
新しいrevenue OSは、見込み客の動向把握、顧客との対話、営業活動の実行を連携させる統合プラットフォームだ。同社はrevenue OSと併せて、営業支援機能群「Zoom Revenue Accelerator」の新機能「Engage」や「Forecast」を発表した。Engageを使うと、電子メールや電話などの業務を横断した営業プロセスを構築できる。Forecastは商談ごとの兆候をリアルタイムの売上予測に変換する。さらに、見込み客の情報と会話分析、アプローチ、予測を統合する「Common Room by Zoom」も利用できる。
今回のOSと新機能は、Zoomが2026年7月に買収したCommon Roomの技術を基盤としている(買収額は非公開)。Common RoomはAIネイティブな顧客インテリジェンスおよびGo-to-Market(市場開拓)プラットフォームだ。Futurum Group傘下のETRでアナリストを務めるダレン・ブラバム氏は、今回の買収とrevenue OSの投入について、事業の多角化を進めて大企業シェアを回復させる狙いがあると指摘する。
「Zoomを新規に導入したり支出を増やしたりする企業よりも、利用を縮小したり他社製品に切り替えたりする企業の方が多い」(ブラバム氏)
新製品投入で多角化を図るも、既存CRMからの移行には高い壁
Zoomはここ数年、新規顧客の獲得に向けて多様な新製品や新機能の提供に注力してきた。例えばデジタルワークプレース分野では、プレゼンテーション用ツール「Zoom Slides」をはじめとするAI生産性スイートを投入した。また、SalesforceやGoogle、Microsoftなどのサードパーティー製アプリケーションと接続できる「ZoomMate」も提供している。
ブラバム氏は、revenue OSはAIを活用してCRM市場へ進出する試みだとみる。
「Web会議や電話、生産性アプリといった製品群の1要素となり、CRM機能との統合を深めようとしている」(ブラバム氏)
同氏は、CRM市場は競合がひしめいており、SalesforceやHubSpotといった既存の有力ベンダーにZoomは苦戦を強いられると指摘する。Common Roomの買収によって機能は強化されたものの、同社が直面する障壁は大きい。
「SalesforceやHubSpotから市場シェアを奪って本格参入するには多大な労力を要する。既存顧客を乗り換えさせる計画がZoomにあるのか注視したい」(ブラバム氏)
企業が特定のCRMを使い続ける最大の理由は、システムの詳細な構築に膨大な手間がかかり、他社システムへの移行が容易ではないためだ。
「現状維持の慣性が強く働く」とブラバム氏は語る。ただし、revenue OSの価格設定が適切であれば、Zoomのアカウントを持つ企業が関心を示す可能性はある。
「既存のCRMプラットフォームからの移行を支援するコンサルティングを提供できるかどうかが成否を左右する」(ブラバム氏)
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