コストだけでは計れない長所と短所
無償ストレージソフトウェアはリスクに値するか?
無償のストレージソフトウェアを利用すれば、中小企業が抱えているストレージに関する多くの課題を解決できる。しかし、単にコストだけに着目すると思わぬ落とし穴があるようだ。
従来タイプのファイルサーバの購入を検討した人であれば、それが仰天するほどのコストになりかねないことを知っているはずだ。サーバのハードウェアとそのライセンス、クライアントのアクセスライセンスに掛かる費用を合計すると、プロジェクトの総コストは中小企業の手の届く範囲を大きく超えてしまうこともある(関連記事:Windowsファイルサーバのスプロール対策で使えるファイル仮想化ソフトウェア)。
だがうれしいことに、安価な選択肢も存在する。Network Attached Storage(NAS)ベースのファイルサーバを作成するための無償のストレージソフトウェアが、数社のソフトウェア企業から提供されているのだ。ストレージニーズがひっ迫している中小企業の場合は、無償でStorage Area Network(SAN)を構築することも可能だ(関連記事:加速する中堅・中小企業のNAS導入 その最大の要因は)。現在出回っている無償のストレージサーバソフトウェア製品としては「FreeNAS」「Openfiler」「OpenSolaris ZFS NAS」の他、米StarWind Softwareの「StarWind Free Edition」などがある。
無償のストレージソフトウェアを利用するメリット
価格
無償ストレージソフトウェアの最大の利点の1つは、言うまでもなく「価格」だ。タダより安いものはない。しかしソフトウェアが無償でも、ハードウェアとメンテナンスのコストが掛かる。無償のソフトウェアであっても、十分な性能を備えたハードウェア上で動作させる必要があるのだ。
柔軟性
無償ソフトウェアを利用することの重要なメリットとして「ハードウェアの選択の柔軟性が高い」点を挙げることができる。無償のストレージサーバソフトウェアを使えば、PCあるいはサーバをNASアプライアンスに変えることができる。引退した古いサーバなどの既存のハードウェアを流用できる場合も多い。そのようなサーバはアプリケーションをホスティングするのには力不足かもしれないが、ストレージアプライアンスとしては十分使える可能性がある。流用できる古いハードウェアがなければ、PCを購入してそれをNASサーバとして使用すればいい。
無償のサーバソフトウェアがもたらす柔軟性の高さは、それが動作するハードウェアの選択だけにとどまらない。ハードウェアが十分な性能を備えているのであれば、大抵の無償サーバソフトウェアでは、ユーザーのニーズに合ったRAIDレベルを選択できる。ただし、無償のストレージサーバソフトウェアでは、DAS(Direct Attached Storage)を使わなければならないという制約がある製品も多い。また、合計容量や同時接続ユーザー数に制限がある場合もある。
将来的にニーズが変化した場合でも、大抵はメモリの増設、高速ネットワークカード、大容量ディスクなどでハードウェアをアップグレードすることで対応できる。市販のストレージソフトウェアでも同程度の柔軟性を実現するが、ハードウェアアプライアンス(特にローエンドのNASアプライアンス)の場合はそうはいかない。ハードウェアアプライアンスでは、そのメーカーが提供したハードウェアしか使えないのが一般的だ。
無償ストレージサーバソフトウェアの短所
技術サポートを受けられない
無償ストレージサーバソフトウェアの利用のメリットは多いが、考慮に入れておかねばならない短所も幾つかある。特に技術サポートは期待できない。通常、無償製品には技術サポートが含まれないからだ。
高度な技術知識が必要
ストレージサーバを導入するに当たっては、NASアプライアンスを利用する場合よりも深い技術知識が要求されることを忘れてはならない。ストレージサーバは一般に、ローエンドのNASアプライアンスよりも高度な機能を提供するため、ストレージに関する知識が不可欠だ。ストレージサーバの導入を決めた場合は、パッチ管理や日常的なトラブルシューティングといった継続的なメンテナンス作業の態勢を整える必要もある。
ベンダーの保証対象外
無償のストレージサーバソフトウェアの開発者から技術サポートを受けられない可能性があるだけでなく、サーバソフトウェアが動作するハードウェアのベンダーからのサポートも受けられない可能性が高い。ただしハードウェアNASアプライアンスのベンダーの中には、各種のソフトウェアとの組み合わせを保証しているところもある。例えば、一部の「Drobo」アプライアンスは米VMwareや米Citrixなどの製品の動作を保証している(関連記事:中堅・中小企業向けNAS市場が活況化した理由)。
拡張性
無償ストレージサーバソフトウェアのもう1つの問題は、サポートされているファイルシステムがユーザーの将来的なニーズに対応できない可能性があることだ。加えて、ストレージニーズの増大に伴って必要となるかもしれない高度な機能が提供されるのかという心配もある。
ハードウェアのコスト
問題は他にもある。ハードウェアのコストだ。ストレージサーバソフトウェアを無償でダウンロードできるとしても、結局、NASアプライアンスの方が安上がりになるという場合もある。流用できる既存のハードウェアがない場合は、ストレージサーバとして使用する本格的なコンピュータよりも、ローエンドのNASを購入する方が安くつく可能性があるからだ(関連記事:中古ストレージ機器購入の前にチェックすべきポイント)。
ことストレージに関する限り、単独であらゆる要求を満足できるようなソリューションは存在しない。ストレージサーバの各選択肢には、それぞれ長所と短所がある。それぞれのアプローチの長所と短所を見極めた上で、どのソリューションが自社にとってベストなのかを判断することが肝要だ。
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