SMB向けNASシステムの選択肢が拡大(前編)
中堅・中小企業向けNAS市場が活況化した理由
2000年代初頭、大手ベンダー各社が見向きもしなかったSMB市場。現在ではほとんどのベンダーが同市場に大いに注目している。その理由を探る。
ほんの数年前までは、中堅・中小企業(SMB)市場をターゲットにしたNAS(Network Attached Storage)システムは存在しないに等しかった。しかし最近では状況が一変し、高機能・低価格という魅力的なSMB向けNASシステムが大手および中小ベンダー各社から提供されるようになってきた(関連記事:SMBにはSMB向け製品を――大企業の「お下がり」無用)。
米調査会社Gartnerのアナリスト、ボブ・パスモア氏によると、最も安価なNASシステムはワークグループ向けの製品だが、これらは管理型ネットワークに組み込むにはまだ制約があるという。「最も有名な製品は(米Overland Storageの)Snapアプライアンスと米Iomegaの製品(現在は米EMCが製造)だろう」と同氏は話す。その次のカテゴリーに含まれるのは機能を限定したデバイスで、同氏によると、これらもやはりワークグループ向けNASと見なすことができるという。これらの製品では一般に、ファイルを共有するユーザー数に制限があり、最低限のセキュリティ機能しか備えておらず、ストレージ管理機能としては、デバイスを他のメディアにバックアップする方法しか用意されていない。
ベンダーがひしめくSMB NAS市場
この分野には大小さまざまなベンダーが参入している。例えば、米Dellおよび米Hewlett-Packard(HP)が「Microsoft Storage Server」ベースのNAS製品を提供している他、米Nexsanをはじめとする中小ベンダー各社からも製品が出ている。「高機能NAS分野では、米OracleのSun 7000シリーズや米NetAppのエントリー製品があり、これらはいずれもSMB市場向けだ」とパスモア氏は話す。これらの本格的なSMB向けNASシステムは広範なセキュリティ機能を備え、数百あるいは数千ユーザーをサポートする。さらに、シンプロビジョニング、アプリケーションをスナップに同期化するツールを用いたスナップショット機能、ディザスタリカバリのためのリモートレプリケーション、重複排除と圧縮、自動ティアリングなど多彩なストレージ管理機能が付属し、各種のバックアップツールもサポートするという。
米StorageIO Groupの創業者で上席アナリストのグレッグ・シュルツ氏によると、SMB NAS市場の動きが活発化しているという。「NAS分野では、遅きに失した感はあるが、ようやくSMBにもしかるべき敬意が払われるようになってきた」と同氏は指摘する。2000年代初頭は、大手ベンダー各社はSMBやSOHOのニーズにほとんど見向きもしなかった。「これまでの経緯を見れば、NAS市場の拡大はSMB市場を開拓したNetAppの成長と歩調を合わせた格好になっている」とシュルツ氏は語る。しかしHP、Dell、EMCも素早くSMB市場の重要性を認識し、現在ではほとんどのベンダーが同市場に大いに注目しているという。
シュルツ氏によると、市場のSOHO側ではベンダーの選別が本格的に進んでいるという。「EMCがIomega製品シリーズを展開する一方で、米Buffalo Technology、米Data Robotics(Droboシリーズを販売)、米D-Link、米Gridstoreなど多数のベンダーから製品が出ている」
最近のSOHO向けNAS製品の多くは、一昔前まではSMB市場のハイエンドあるいは大企業市場向けの製品にしか見られなかったような機能を備えている。例えば、異なるタイプのディスクストレージやRAIDレベルを選択する機能やマルチプロトコルのサポートなどは多くのベンダーが提供している。「これらの機能はSMBにとって大きなメリットになる。特に小規模SMBでは、1台のストレージシステムしか配備していない企業もあると思われるため、広範な用途をカバーする必要がある」とシュルツ氏は話す。
SMB向けNASシステムに求められる機能
シュルツ氏によると、SMB市場のニーズがようやく満たされつつあるという。SMB市場のハイエンド部分では、強力な複製機能に加え、ストレージ効率を高めるスナップショット機能、自動ティアリング、透過的なデータ移行、ソリッドステートドライブ(SSD)への対応、Fibre Channel over Ethernet(FCoE)を含む広範なマルチプロトコルサポート、オブジェクトベースのアクセスの改善といった機能強化が進んでいる(関連記事:企業向けSSD市場が活性化してきた本当の理由)。
「ローエンド側では、アプリケーションベースのアクセス技術に対応するようになった。例えば、クラウドなどのオブジェクト型ストレージや、アプリケーションからアクセスするストレージで一般的に利用されるSOAPやRESTなどだ」とシュルツ氏は話す。加えて、ビデオ、オーディオ、電子書籍などのデータのストリーミングをサポートするBitTorrent技術をサポートした製品もある。使いやすい管理インタフェースも、このクラスの製品の一般的な特徴だという。「SMB向けNASソリューションでは、VMwareのAPIとMicrosoftのHyper-Vのサポートも追加された他、データ可用性のサポート改善やセキュリティの強化なども進んでいる」(同氏)
しかしシュルツ氏によると、SMB市場での基本要件は価格や機能強化、使いやすいさだが、現実的に考えることも重要だという。
「製品の導入が簡単だというのはよく耳にするが、日常的な使い勝手はどうなのかという点もチェックする必要がある。管理作業を毎日行うにせよ、毎週あるいは年に数度行う必要があるにせよ、保有期間全体で考えれば、こういった時間を合計するとかなりの作業時間になることもあり得る」とシュルツ氏は指摘する。
製品ごとに特定のタスクを容易に実行できるかどうかをチェックする必要もある。「総所有コストや管理の手間、そしてSQL、Exchange、SharePointといったアプリケーションとの相性にも目を向けなければならない」と同氏はアドバイスする。
容易に導入できるかどうかを検討する必要もあるという。「どういったNAS機能が自社に必要なのを容易に判断できるかどうかも重要なチェックポイントだ。ウィザード、導入ガイド、マニュアル、ツールなどによってユーザーの構成作業を支援することがベンダーには求められる」(同氏)
次回は、実際にNAS製品を導入したSMB企業の事例を紹介する。
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