実用化事例が続々登場
「Pokemon GO」は序章にすぎなかった、AR市場の急拡大に開発者はどう対応する?
「Pokemon GO」よりも大きな規模の話だ。拡張現実(AR)は、仮想現実(VR)が作り出す架空の世界を現実世界に融合し、便利でインタラクティブな体験をもたらす。開発者はすぐにも作業に取り掛かるといい。
「拡張現実」(AR)は爆発的な成長を遂げそうだ。ARは、コンピュータが作り出す仮想世界を現実世界に融合することで、没入型のインタラクティブなコンピューティング体験を提供する技術だ。アプリケーション開発者にとっては、速やかに知識を習得すべき新たな技術分野となる。
調査会社Gartnerの研究主任ダリル・プラマー氏によれば、2020年には1億人の消費者がオンラインショッピングにAR技術を活用するようになるという。同氏はこうした体験を「没入型ショッピング」と呼ぶ。その実用化は早そうだ。プラマー氏は、2017年中に世界の小売業者の20%が何かしらの形でARを採用することになると予想する。
AR技術の実用化は、自宅に仮想的に家具を配置したり、仮想メイクアップを試したりなど、さまざまな領域で進んでいる。インタラクティブなゲームにも活用できる。ホームセンター大手Home Depotのモバイルアプリを使えば、部屋の色を仮想的に塗り替え、どんな色でも試すことが可能だ。2016年夏にスマートフォンゲーム「Pokemon GO」に夢中になった人であれば、既にARに慣れ親しんでいることだろう。
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ARとVRは異なる技術だ。VRが作り出す人工的にシミュレートされた仮想空間は、完全にコンピュータの中に存在する。一方、ARは、家具の画像やペンキのカラーパレット、ポケモンのキャラクターなど、さまざまな仮想コンポーネントを現実の風景に重ねて表示することで、インタラクティブな体験を提供する。現実世界と連動するのがAR、ユーザーを完全に人工的な仮想世界に閉じ込めるのがVRだ。
開発者向けのツールキットやプラットフォームとしては、既に「ARToolKit」や「Vuforia」などのARライブラリを利用できる。Vuforiaのジェイ・ライト社長によれば、VRアプリケーションの開発にはこれまでとは異なる考え方が必要だ。ARは驚くべき体験を提供するが、開発には注意を要する。「もはやキャンバスは四角い画面に制限されないからだ。現実の物理的な世界がキャンバスになる」とライト氏は語る。
AR市場は急成長
AR市場の見通しは明るい。調査会社Grand View Researchが2016年5月に発表した調査報告書によると、米国のAR市場は2024年に1000億ドル規模に達するという。スマートフォンやタブレット端末、ヘッドマウントディスプレー(HMD)、スマートアイウェア、自動車など、ARのハードウェア製品は2016年から2024年までに90%以上のCAGR(年平均成長率)で成長する見通しだ。さらに、そうしたハードウェアデバイスでARを実現するための組み込みソフトウェアやアプリケーションは、55%のCAGRで成長する見通しだという。
この報告書はARアプリケーションの開発が進む主要分野として、航空宇宙、自動車、防衛、電子商取引、小売り、ゲーム、産業、医療などを挙げている。
用途はゲームにとどまらず
ARをゲームや家の改装計画のための技術と決め込むと、重要な点を見落とすことになりかねない。そう語るのは、大手会計事務所PricewaterhouseCoopers(PwC)の技術イノベーションセンターでディレクターを務めるビノード・バヤ氏だ。同氏は2016年の白書でARがもたらすビジネスチャンスについて考察し、AR技術の試験運用は既に企業レベルで始まっていると指摘。例えば、国際輸送物流会社DHLの倉庫では、ピッキング作業員がスマートグラスを装着し、ARの映像を通じた指示をもとに受注処理を行っている。航空機製造会社Boeingの工場では、訓練生がAR技術を使って仮想の航空機翼を組み立てている。
「重要なのは、AR技術を簡単にプラグ&プレイできるようにすることで、アーリーアダプター層から次の層への移行を促し、AR技術の利用場面の奥行きと幅を広げることだ」とバヤ氏は白書で指摘している。
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