「汎用人工知能」(AGI)への道【後編】
「汎用人工知能」(AGI)と「弱いAI」の違いとは
「AI」と呼ばれる技術には「弱いAI」と「強いAI」の2つがある。両者を隔てるものとは何か。そして結局のところ強いAIすなわち「汎用人工知能」(AGI)は実現可能なのか。
本稿の前編「正真正銘のAI『汎用人工知能』(AGI)とは何なのか」において、「AI」(人工知能)と呼ばれる技術には「弱いAI」と「強いAI」の2つがあると述べた。弱いAIは、強いAIつまり「汎用(はんよう)人工知能」(AGI:Artificial General Intelligence)ではない全てのAI技術だと定義できる。
本当は弱くない「弱いAI」
現在使われているAI技術は基本的に弱いAIだ。単一の、または限られたタスクを処理できる弱いAIは、的を絞ったアプローチで強力な機能を実現している。画像認識やパーソナライゼーション、AIチャットbotなどがその例だ。さらには音声認識や自然言語処理、予測メンテナンス、自動運転といった技術も弱いAIに含まれる。
技術の限界をわれわれが広げ続けるにつれて、弱いAIの定義も変わってきている。数十年前には、OCR(光学式文字認識)が主要かつ最先端のAI技術だと考えられていた。今ではこのOCRは広く定着し、人々はOCRをAI技術だとは考えなくなっている。AI技術、特に弱いAIについての人々の認識は、技術が進化し続ける中で変化するだろう。
「弱いAI」という用語には誤解を招く恐れがある。AI研究者の観点からすると、人が持つ知能の一部とはいえ、それを代替しようとするアプリケーションは、どれも強力だからだ。弱いAIという用語が与える頼りない印象は、実態と懸け離れている。実のところ、弱いAIのアプリケーションの大部分は、特定分野に特化して極めて強力な機能を提供し、成功を収めている。
AIアプリケーションは、組織が日々抱える問題を解決するツールだ。弱いAIは、AGIの実現という目標に向けて投入されるのではなく、特定の問題領域に応用されているが、非常に強力であることに変わりはない。一部の機械学習アプリケーションは、保険や医用画像処理、機械翻訳、会話エージェントなど、さまざまなビジネス課題の解決に役立っている。
AGIの実現は近い?
開発者がAGIを実現するプロセスがどこまで進んでいるのかについて、AI分野における権威者の見解はさまざまだ。一部の人は「数年後にAGIが実現する」とみている。だが「実現は数百年後になる」と考える人もいれば「AGIは決して実現できない」と考える人もいる。
マサチューセッツ工科大学(MIT:Massachusetts Institute of Technology)の教授で、事業を停止したロボットベンダーRethink Roboticsの創業者であるロドニー・ブルックス氏は「AGIが数百年後に実現される」と考えている。これに対し、AI関連組織SingularityNET Foundationの創設者でCEOのベン・ゲルツェル氏は、われわれがAI研究の歴史の転換点に差し掛かっていると考えている。「今後数年でAI研究の活動のバランスが変わり、高度に専門分化した弱いAIから、AGIに比重が移る」というのがゲルツェル氏の見方だ。
さまざまな研究者や企業が努力を重ねているものの、AGIの実現という目標の達成には幾つもの障害がある。コンピューティングインフラ、資金調達、AGIに適したハードウェアの構築が、現在の障害の一部だ。
それでも研究者は前進を続けている。その結果、AI関連の取り組みに今後も引き続き興味が寄せられ、資金やリソースが流入すると、われわれは予想している。AGIが実現するかどうかは未知数だが、実現への取り組みはAI技術の可能性を広げていく。
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