5つのツールをまとめて使えるようになったのだが
Dockerの新世代ユーティリティーが「コンテナ管理の決定版」になれない理由
Dockerの「Docker Datacenter」は、Dockerが提供するさまざまな管理作業を1つにまとめたツールだ。コンテナ導入が簡単にできる一方で、他の管理ツールと同様に、解決しなければならない課題が残っている。
Dockerは、IT運用と開発者の連携を密にすることを目的とした「Docker Datacenter」を2016年2月23日にリリースした。これは、運用環境にコンテナを簡単に導入できるように、Dockerがこれまで提供してきた5つの独立した管理ユーティリティーを1つの管理インタフェースに統合するツールだ。
5つの管理ユーティリティーとは、「Docker Universal Control Plane」(管理)、「Docker Content Trust」(セキュリティ)、「Docker Engine」(コンテナランタイム)、「Docker Swarm」(オーケストレーション)、「Trusted Registry」だ。
Docker Datacenterの目的は、開発環境、テスト環境、品質保証環境、運用環境の間でアプリを移管するときに生じる溝を埋めて、コンテナ管理がまだ容易でない従来のIT運用への橋渡しをすることにある。
ヘルスケア評価と教育に携わるHealthStreamでインフラと運用部門のディレクターを務めるジェフ・ロックウッド氏は「当社はマイクロサービスを見据えて、2015年にDockerとMonoをテスト環境に導入した」と話す。HealthStreamがDockerとMonoをテストしているのは、ソフトウェア開発にMicrosoft .NETを使用しており、Linux環境で.NET Frameworkのコードを使えるようにする回避策がMonoだからだ。
ロックウッド氏は、サービスとしてみた場合にコンテナ(CaaS)の概念は理にかなっていると考えている。そして、「自社でコンテナ機能を作成する必要はない」と説明する。しかし、だからといって企業がすぐにDockerを運用環境に導入できるわけではない。「導入は急いでいない。Dockerの成熟度に関心はある。だが、それ以上にDockerを導入してサポートするために市場に提供しているスキルセットに対する関心が高い」(ロックウッド氏)
ロックウッド氏は、次期バージョンの.NET Frameworkのリリースも待っている。現在プレビュー版を配布している次期バージョンは、Dockerをネイティブにサポートする予定だ。ただし、次期バージョンの.NET Frameworkが登場しても、ロックウッド氏はDockerで大規模に.NET Frameworkを利用する実験台になるつもりはない。「テスト用のラボ環境でDockerを積極的に導入しているが、運用環境への導入は不安だ。なぜなら、Dockerにはまだ実績がないからだ」(ロックウッド氏)
Docker管理の「ワンストップショップ」
最先端の技術を活用する企業にとって、Dockerはコンテナとコンテナ管理の「ワンストップショップ」になり得ると大企業を担当するコンサルタントは話す。「独立性の高いマイクロサービス型のアーキテクチャを構築している企業は、あらゆる場面でDockerを使用することになる」と語るのは、クラウドコンサルタント企業Cloud Technology Partnersでバイスプレジデントとプリンシパルアーキテクトを務めるマイク・カービス氏だ。
2013年にDockerが誕生して、コンテナの導入における運用の溝を埋めたことで、スタートアップによる広大なエコシステムが生まれた。「Amazon Web Services」を提供するAmazonや「Google Cloud Platform」を提供するGoogleといったパブリッククラウドプロバイダーも、コンテナ管理にまつわる数多くの課題を取り除くサービスでチャンスをつかもうとしている。
Docker Datacenterを使用すると、コンテナレジストリをオンプレミスで運用して、Dockerのオーケストレーションをコンテナレジストリから制御できる。この運用モデルが適しているのは、純粋なパブリッククラウドやプライベートのPaaSよりも、大規模企業のハイブリッドクラウド導入だとカービス氏は指摘する。
「私がコンテナ分野で担当したベンダーはいずれも、パブリッククラウドを出発点としており、オンプレミスソリューションを考案する必要に迫られていた。というのも、現在どの企業もオンプレミスでコンテナを運用しているからだ」(カービス氏)
一方で、Docker Datacenterには改良の余地があると考えるIT担当者も少なからずいる。例えば、ネイティブのデータベースに対するライブマイグレーション機能の追加、きめ細かなロールベースのアクセス制御、コンプライアンスのベストプラクティスの組み込み、といった対応はしておきたいところだ。ただし、ライブマイグレーション機能の追加については、パートナーのソフトウェアをプラグインとして導入すると対応できる。
また、「Docker Datacenter自体の評価とDocker Datacenterがニーズを満たすかどうかの評価には、しばらく時間がかかる」とRedMonkでアナリストとして働くフィンタン・ライアン氏は話す。
「何らかのツールをまとめて採用し、同時に、独自のソリューションも導入しているユーザーは少なくない。このような対応は、ユーザーにとって技術的な観点から安心できるようだ。だが、企業や最高情報責任者(CIO)にとっては、明快で制御できるものが好ましい」(ライアン氏)
Docker Datacenterは恐らくほとんどのIT担当者が解決したいと考える問題に解決策を提示できるだろう。そのため、データベースのライブマイグレーションなど、特定のニーズがない限りはサードパーティー製ツールを利用する可能性は低いとライアン氏は見ている。なお、データベースのライブマイグレーションは、Docker管理のさまざまなニッチ市場に対応したスタートアップ企業のClusterHQの「Flocker」を使用すると容易に実現できる。
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