AIの未来を開く
「Swift」はモバイルアプリ開発に機械学習を取り入れる
AppleのiOS向け開発言語「Swift」には、モバイルアプリへの機械学習の実装を容易にする可能性がある。SwiftでAIモデルを作成するための新しいツールや、そのユースケースを見てみよう。
iOS開発コミュニティーは最近、iOS向け開発言語「Swift」でAI(人工知能)モデルの作成や利用を目指す取り組みを進めており、モバイルアプリケーションにおける機械学習の可能性が広がっている。
ユーザーは、モバイルアプリに機械学習を実装することで、かゆいところに手が届く便利さをスマートフォンに期待している。開発者は、アプリの機能に機械学習を実装することを考えなければならない。2018年6月に米国で開催されたイベント「SwiftFest 2018」で開発者は、機械学習にこうした期待が寄せられるようになった背景や、Swiftで実現するモバイルアプリの機械学習の将来、機械学習の用途について議論をした。
機械学習はなぜモバイルで重要なのか
モバイルアプリ開発者は機械学習モデルを作成することで、開発者が全ての動作や反応を個別にプログラミングしなくても、多くの機能を果たすアプリケーションを構築できる。「機械学習技術は、パターンを形成するルールを理解し、将来の事象を予測できるのに対し、人々は自身の想像力に制約される」と、時間管理ソフトウェアを手掛けるElement55のCTO(最高技術責任者)を務めるレイ・デック氏は、SwiftFestでのセッションで語った。
以前は、AIモデルの作成には、機械が自身の見ている対象を正確に識別するのに必要な、大量のサンプルを集めるのが大変だった。例えば画像内の人物を正確に識別する必要がある場合、開発者が作成するニューラルネットワークモデルの規模に比例した数の画像を集めなければならなかった。
だが約5年前に、ニューラルネットワークの組織化におけるブレークスルー(ディープラーニング)によって、モデルを正確かつ迅速に作成する方法が登場した。そのおかげで、機械学習モデルにより、コンピュータがパターンの予測や対象の識別を正確に行うことが可能になった。
「われわれがこうしたモデルを自力で作成しようとしても、うまくいかないだろう」とデック氏は述べた。
なぜSwiftはAIの未来を開く可能性があるのか
Swift開発者は、これから機械学習に取り組む上で有利かもしれない。幾つかの新しいソフトウェア開発フレームワーク(「Swift for TensorFlow」や、Appleの「Core ML 2」および「Create ML」)のリリースに伴い、開発者はそれほど知識がなくても、モバイルアプリに機械学習を導入できるようになったからだ。
「iOSの最新リリースでは、機械学習が利用しやすくなっている。この技術をもっと探索し、われわれのアプリで使ってみたい」とCisco Systemsのソフトウェアエンジニア、ジェイム・サンタナ・ルーラス氏は語った。
Swift for TensorFlowは2018年3月に、Googleのチームによってオープンソースプロジェクトとして発表された。TensorFlowによる開発では、Pythonが主流の言語となっているが、TensorFlowはC++で書かれている。Swiftでは、C++と同じくC言語をベースにしているObjective-Cのランタイムライブラリも使用できる。「Pythonを使ったモデル作成には時間がかかるが、開発者はSwift for TensorFlowにより、AIモデルの作成時に、より創造性を発揮できる」と、デック氏は指摘した。
「高レベル言語のSwiftが利用でき、ランタイムのコンパイル性能も高く、より自然な接続も可能だ。TensorFlowに直接コンパイルするからだ」(デック氏)
Appleは2018年6月、アプリの機械学習モデルの作成と実装を容易にするために、Create MLとCore ML 2を発表した。Create MLを使えば、開発者はドラッグ&ドロップを多用して、Swiftで機械学習モデルを簡単に作成できる。Create MLは、あまり専門知識がなくても利用可能だ。Core ML 2は、処理速度が速く、アプリに実装するAIモデルのサイズが小さくて済むことが特徴だ。
「Swiftは、機械学習モデルの利用と作成における使い勝手を高める新たな道筋をつけており、自動微分の最前線を切り開く可能性がある。最も強力なモデルがこれから誕生するかもしれない」(デック氏)
モバイルアプリの機械学習で何ができるのか
デック氏はセッション後のインタビューで、アプリの機械学習は、2つの要因から普及が進んでいると語った。1つは、AIを生み出すために開発された優れた技術のおかげで、急速に増加してきた供給、もう1つは、大きな可能性を秘めるAIへのユーザーの需要だ。
「AIの大きな可能性は、例えば、われわれがポケットにカメラだけでなく、“目”も入れて持ち歩き、それらによって見たものや、それに対する高度な理解に基づいて、ソフトウェアに意思決定を行わせることができることにある。AIは、人々がより良い意思決定を行うのに役立つ」(デック氏)
人々は既にAI技術をフィットネスウォッチで使っている。モバイルアプリはこれを推し進め、ユーザーデータを集めて分析し、例えばユーザーが、過去に緊急入院に至った人の事例がモデル化されたデータパターンに当てはまる場合、健康リスクを予測してユーザーに警告する。企業では、モバイルアプリの機械学習は、出張者の移動手段の手配や、迷惑メールのフィルタリングなどに役立つ。
また、アプリの機械学習により、デバイスがユーザーの音声に応答することも可能になる。ソフトウェア会社Netceteraの技術リーダーを務めるマーティン・ミトレブスキー氏はAIを利用して、「音声コマンドに応じてリストを作成する」といった作業を行える会話ユーザーインタフェースを開発している。
「あなたが想像できることは、全てAIでスマート化できる。ほぼ全ての産業で、AIと機械学習による創造的破壊が進むだろう」(ミトレブスキー氏)
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