再考:流通業のBCP【第2回】
想定を超えた物流機能への被害、浮き彫りになった自社対応の限界
第1回に引き続き、玉生氏への取材を基に東日本大震災による流通業の被害をまとめる。流通業の物流システムへのBCP意識は高かったが、甚大な被害に遭ってしまった理由は何か。
前回記事「震災前のアンケートに見る流通業のBCP意識」では、東日本大震災前の流通業企業へのアンケート結果を基に、流通業の事業継続計画(BCP)意識をまとめた。本稿では引き続きプラネット 代表取締役社長 玉生弘昌氏のコメントを交えつつ、比較的BCP意識の高い流通業にとっても想定外の被害となった物流機能への影響をまとめる。
物流機能への影響は想定を超えた
流通業界にとって商品の出荷から消費者に届けるまでの任を負う物流機能は、業務上、極めて重要な存在に位置付けられる。だが、震災は多くの企業の物流機能に少なからず打撃を与えた。事実、2011年3月23日付の「石鹸日用品新報」(※)によると、花王やライオン、資生堂などのメーカー各社では、一部工場の操業停止などの被害を受けている。また、卸売業者の物流センターにおける被害も甚大で、稼働不能なセンターも一部では見られた。さらに、小売業においても店舗の損傷やライフラインの停止、福島第一原子力発電所事故に伴う周辺住民の避難指示などにより、営業停止となる店舗も発生した。
※せっけん、洗剤、日用品、コスメタリーなどの商品、メーカー、卸・小売流通、市場全般に関する情報を掲載する業界専門紙(石鹸新報社発行、週刊)。発行部数は約1万2000部。
「大規模な物流センターでは物流効率を高めるため、入出庫作業を自動化した自動倉庫がよく用いられている。それらの多くは地震による庫内の崩れによって使えなくなる事態に陥った。また、当社が出資しているプラネット物流の倉庫でも、積荷が崩れ、商品のキズの確認や積み直しなどの作業が発生した」と玉生氏は今回の物流関連の被害を振り返る。
とはいえ、各社の被害状況によって数週間ほどの時間差はあるものの、現在各社の物流機能は確実に回復しつつあることは周知の通りだ。「被災の程度が軽いエリアから店舗が回復し、卸店を通じてそこへの商品供給も既に始まっている」
プラネットが流通業企業を対象に行った「消費財メーカー・卸売業における災害対策アンケート(2010年7月実施) 第2回調査報告書」によると、BCPを「策定済み」または「策定中」と答えた企業では、BCP策定対象システムに「物流」(75.3%)を挙げる企業が「受発注」(88.7%)に次いで多かった。システムへの意識の高さから、業務そのものに対しても災害対策が十分に講じられていたことは容易に推察される。にもかかわらず、物流機能を維持することが難しかったのは、今回の震災被害における次のような特殊性があったからではないだろうか。
想定外のトラブルを織り込んだBCP活動を
「食品や飲料、衛生用品、大衆薬などを定常的に供給し、日々の生活を支える流通業界は、必需品を提供する社会的なインフラの1つに位置付けられる」。加えて、経営への影響をできる限り小さくとどめるためにも、各社はできる限りBCP活動に取り組んできた。だが今回の震災では、中小企業のみならず比較的余力がある大企業も大きな影響を受けた。
この理由として、東日本大震災の規模が国内の観測史上最大のマグニチュード9.0に達したこと、また、直後に発生した津波が想定以上の高さであったことに異論を挟む人はいないだろう。しかし、それ以上に見逃せないのが、福島第一原子力発電所事故による避難勧告や電力不足に伴う計画停電など、かつて経験したことのないトラブルに幾つも見舞われたことだ。「日本では電力供給が極めて安定していたことから、ユーザー企業の多くは20年ほど前にバックアップの電源装置を取りやめていた」と玉生氏は語るが、信頼していたインフラが機能しなかった場合の影響の大きさは想像するに難くない。
計画停電や、交通機関が震災後の数日間十分に機能しなかった影響は大きく、自社による対応には限界があることも今回、あらためて明らかになった。ただし、「ここで思考停止に陥ってはならない」と玉生氏は警鐘を鳴らす。
「天災は必ず起こる。そのことを認識し、被害を防ぎ、被害を受けた場合には復旧、代替手段を用意するために新たな知恵を絞ることが大切だ」
今回の経験を踏まえたBCP活動の見直しが今、流通業界に求められている。次回では引き続き玉生氏へのインタビューを基に、流通業企業が今回の震災を踏まえて具体的に何をすべきかをシステムと業務の両面から探る。
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