専門家が語るゼロデイ脆弱性の脅威と対策
オーロラ攻撃やStuxnetの引き金に――ゼロデイ脆弱性とどう対峙すべきか
セキュリティパッチ未提供の脆弱性であるゼロデイ脆弱性。これを悪用したゼロデイ攻撃の発生件数は少数であっても、被害は想像以上に甚大だとセキュリティ専門家は警告する。
セキュリティパッチ未提供の脆弱性である「ゼロデイ脆弱性」の悪用に関する米Microsoftの現状分析に対し、セキュリティ専門家からさまざまな意見が寄せられている。
同社のマルウェアや脆弱性悪用に関するリポートである「マイクロソフト セキュリティ インテリジェンス レポート(SIR)」の第11版によると、2011年上半期の全マルウェアのうち、ゼロデイ脆弱性を悪用したマルウェアが占める割合は1%に満たなかった。同社はこの結果を受け、企業はウイルス対策ソフトの導入など現状のセキュリティ対策を優先すべきだと結論付けている。専門家は同リポートにおいて、ゼロデイ脆弱性を悪用した攻撃(ゼロデイ攻撃)の脅威が過小評価されていることを不安視している。
「企業は警戒を緩めるべきではない」と専門家は口をそろえる。攻撃者は時間と資金を費やしてゼロデイ攻撃の手法を開発し、特定の企業や組織を狙ったサイバー攻撃である「標的型攻撃」の実行を企てている。脆弱性管理を手掛ける米Qualysで脆弱性研究所長を務めるアモル・サウォート氏は「標的型攻撃において、攻撃者は知的財産や財務情報といった企業秘密に狙いを定めている」と説明する。
「ゼロデイ攻撃対策は最優先で実施すべきだ。ゼロデイ攻撃の目的はアカウント情報やクレジットカード番号を盗むことではない。標的とする企業にとって絶対に外部に流出させたくない情報を搾取することが目的だ」
ゼロデイ脆弱性を突くマルウェアに関するMicrosoftの動向分析は、同社が提供するマルウェア削除ソフト「悪意のあるソフトウェアの削除ツール」のユーザーから集めたデータに基づいている。同ツールは、Windows 2000/XP/Vista/7やWindows Server 2003を搭載したコンピュータのマルウェア感染の有無をチェックするものだ。
Microsoftの報告書によれば、2011年上半期に発生した脆弱性の悪用事例におけるゼロデイ脆弱性の悪用は約0.12%で、ピークは2011年6月の0.37%と取り立てて大きな数字ではない。だが最近大きな注目を集めた情報流出事件の多くはゼロデイ脆弱性を利用したものだ。例えば、米EMCのセキュリティ部門であるRSAの認証トークン「RSA SecurID」に関する情報が流出した事件がその1つ。この事件では、サイバー犯罪集団がゼロデイ脆弱性を突き、特定組織を狙ったフィッシング攻撃である「スピアフィッシング攻撃」をEMCの従業員に対して仕掛けた。「資金力と高度な技術がある攻撃者であれば社内システムへの侵入は容易だ」とサウォート氏は注意を促す。
Microsoftによると、脆弱性を悪用した攻撃の約45%はシステムのエンドユーザーの操作を必要とするものだったという。約26%はWindowsの自動実行機能である「Autorun」を使い、ドライブレターが割り当てられたUSB機器やネットワークボリュームに感染するものだ。こうした背景から、Microsoftは2011年2月にリリースしたアップデートでAutorunのセキュリティ強化を図っている。
業務アプリケーションのホワイトリスト作成を手掛ける米Bit9でセキュリティ研究ディレクターを務めるダン・ブラウン氏は、Microsoftの報告書についてやや誤解を招く点があると見ている。「大きな被害を引き起こした危険な攻撃の幾つかはゼロデイ脆弱性を利用していた」(ブラウン氏)のがその理由だ。米Googleなど数十社を狙ったサイバー攻撃である「オーロラ作戦」がその例で、攻撃者はInternet Explorer(IE)のゼロデイ脆弱性を突いて企業のネットワークに侵入した(参考:オーロラ攻撃の教訓──ゼロデイ攻撃と未知のマルウェアに対抗する)。それから1年もたたないうちに出現した「Stuxnet」は、イランの発電施設に狙いを定めた高度なマルウェアである。StuxnetはMicrosoft製品のゼロデイ脆弱性を少なくとも4件悪用していた。
「もしゼロデイ脆弱性が存在しなければ、ウイルス対策など通常のセキュリティ対策を万全にしておけば安心できる。だが現行のOSはあまりに多くの問題を抱えており、最近は誰も安心できなくなった。問題に対する包括的な解決策が近いうちに出てくる見通しもない」(ブラウン氏)
Windowsのセキュリティ対策関連記事
Microsoftはゼロデイ攻撃の防御策として、データ領域におけるプログラム実行を制限する「Data Execution Prevention(DEP)」やデータを書き込むメモリ領域をランダムに変更する「Address Space Layout Randomization(ASLR)」といった機能を開発した。だがこうした機能でさえも、攻撃者がその気になれば無効にできてしまう恐れがあるという。「ゼロデイ攻撃は、われわれがここ数年で目にした凶悪な攻撃の多くに絡んでいる。企業は警戒を緩めてはならない」とブラウン氏は強調する。
自社が標的型攻撃のターゲットになり得ると考える企業は、どういった対策を取ればよいのだろうか。セキュリティベンダーの多くは、ゼロデイ攻撃が明らかになり次第、ゼロデイ攻撃を回避するための情報を提供する「インテリジェンスサービス」を提供しているので利用を検討したい。脆弱性やシステムの弱点を発見するためにセキュリティ監査を受けるのもいいだろう。「システムの機能のうち、使っていない機能に弱点が存在することも多い」と英Sophosの上級テクノロジーコンサルタント、グラハム・クルーリー氏は注意を促す。「使っていないシステム機能を無効化すれば、攻撃対象となる可能性を抑えられる」(クルーリー氏)
「“人”が絡む攻撃は最も対応が難しい課題であり続けるだろう」とクルーリー氏は指摘する。攻撃者は、人をだまして情報を得たりする「ソーシャルエンジニアリング」によってエンドユーザーが利用するシステムへのアクセス権限を得る。次にシステムのゼロデイ脆弱性を悪用して企業ネットワーク全体にアクセスを試みる。「従業員にセキュリティ研修を施し、メールやソーシャルメディアで受信する添付ファイルやWebサイトへのリンクに対する警戒心を強めておくことがリスクを減らす一助になる」とクルーリー氏はアドバイスする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー