ストレージ最新動向解説【第3回】
ストレージの理想的な管理要件を満たす「オブジェクトストレージ」
近年、ストレージ分野ではデータの爆発的な増加に伴う容量の拡張性が注目されている。しかし、増加するデータをいかに効率的に管理、利用するかという点にも注力すべきである。それを実現する新しい技術を紹介する。
サーバやストレージの仮想化、クラウドコンピューティングなどの普及によって、ユーザーは物理的な格納先を意識することなくデータにアクセスすることが可能になった。また、文書ファイルや画像、動画などの非構造化データが急増したことで、ストレージ容量の増大と併せてそれらのデータを効率的に管理することが求められている(関連記事:ゼタバイト時代の企業ストレージ環境とは)。そうした中、新しいデータ管理技術として注目されているのが「オブジェクトストレージ」だ。今回は、オブジェクトストレージの概要を解説する(編集部)。
ストレージ最新動向解説インデックス
ストレージ接続形態に依存したデータ管理
これまでデータの格納やその管理方法は、ストレージの接続形態に依存してきた。現在広く使われている「DAS(Direct Attached Storage)」「NAS(Network Attached Storage)」「SAN(Storage Area Network)」の3種類のストレージ接続形態ではそれぞれデータのアクセスおよび管理方法が異なる。
例えば、DASはストレージに直接接続するため、物理的にセキュアな点が利点だった。その一方で、ストレージ容量の拡張性やデータ共有が難しかった。DASの欠点を補うために誕生したのがNAS、SANである。NASはファイル単位でデータを管理し、セキュリティを保ったまま複数のホストからデータ共有できることが利点。しかし、ファイルシステムの容量の拡張性に一定の限界があった。また、LUN(論理ユニット)単位でデータにアクセスするSANでは、単一ホストのみがそのLUNへのアクセスや制御を実施するため、データの共有が難しかった。
その後、「データ共有と容量の拡張性を両立し、かつ急増するデータを効率的に管理したい」「データへの不正アクセスを防止するセキュリティ面も重視したい」というニーズへの解決策として、幾つかの新しい技術が検討されてきた。例えば、以下のようなものである。
- ストレージ仮想化技術:NASとSANにまたがったストレージ統合の実現
- 分散ネットワークファイルシステム:pNFS(parallel NFS)、GFS(Google File System)、Hadoopなど
- ストレージ装置とのインタフェース(管理単位)の変更
オブジェクトストレージは、上記の3つ目「ストレージ装置とのインタフェース(管理単位)の変更」をする技術の1つだといえる。
オブジェクトストレージにおけるデータ管理
オブジェクトストレージとは、データ本体に加えて「メタデータ」と「属性情報(アトリビュート)」をセットにした「オブジェクト」を単位として、ストレージ装置にデータを保存、管理する方法だ。オブジェクト単位のデータにはサイズや個数などに制約がなく、IDとひも付けて管理される。また、階層型の名前管理(ネームスペース)を実施する従来のファイルシステムと比べて、データの移動が容易に行える点も特徴だ。
さらに、オブジェクトストレージのメタデータは、従来のファイルシステムよりも細かい設定が可能である。通常のファイルシステムのメタデータは「作成/更新日時」や「データサイズ」「所有者」などの情報が付与されるのみだが、オブジェクトストレージのメタデータでは、データを利用するアプリケーションがデータの特定や制御が容易になる付加情報を設定できる。アトリビュートにはデータアクセスの挙動に応じたデータの配置(パフォーマンス管理やQoS)、データの複製作成や保存期間などを設定できる。オブジェクトストレージでは、その管理ポリシーに応じた自律的なデータ管理が可能になる。
オブジェクトストレージの実装モデル
オブジェクトストレージ技術の実装には、幾つかの方法がある。その中には、SCSI関連の標準化を進める「INCITS(International Committee for Information Technology Standards)」のT10(SCSIストレージインタフェース技術委員会)の「Object-based Storage Device」(以下、OSD)がある。
OSDを利用するためには、サーバ側にOSDの独自プロトコルに対応したクライアントプログラム(ファイルシステム上位層あるいはデータに直接アクセスするアプリケーション)が必要になる。この点がOSD普及の1つの課題となっていた。しかし、Amazonのクラウドサービスである「Amazon Web Service(AWS)」の「Simple Storage Service(S3)」の普及により「オブジェクトを保存する」ということが一般的に認知されるようになった。
標準化が重要な意味を持つ
汎用的なアクセスと自律型の管理を目指すオブジェクトストレージにとって、ベンダーや製品に依存しない標準化は非常に重要な意味を持つ。例えば、SNIAではデータアクセスと管理インタフェースの標準化として「CDMI(クラウドデータ管理インタフェース)」を推進している(参考URL:Cloud Data Management Interface)。
CDMIのオブジェクトは、コンテナとデータオブジェクトの2種類がある。また、コンテナのメタデータに「エクスポート」属性を指定することで、CDMI規定外の独自アクセス法やベンダー固有の拡張機能を定義することもできる。コンテナに指定するデータシステムメタデータでは以下のようなものが規定されており、ベンダー非依存の多様なニーズに対応する。
CDMIで定義されているベンダーに依存しないメタデータの例
- 冗長コピー数
- 格納媒体数
- 遠隔地保管の有無
- 暗号化の有無
- アクセス性能の規定
- データ消去方式
- データ復旧時間
オブジェクトストレージが注目される理由
理想的なストレージの要件として「信頼性、可用性の高さ」「容量制限のない拡張性」「自律型のデータ保護/復旧」などが挙げられる。これら全ての要件を実現するのは夢のような話だと思われていた。しかし、オブジェクトストレージは、OSやファイルシステムなどのシステム環境に依存することなく、セキュリティやコンプライアンス対応、将来のデータ移動や管理要件の変更などへの対応を含んだ、ストレージの拡張性や管理容易性を提供する。そのため、理想的なストレージの要件を実装可能なソリューションの1つとして注目されている。
著者紹介
菊地宏臣(SNIA日本支部・副会長 兼 マーケティング委員会委員長:EMCジャパン)
ナカミチ技術研究所にて、磁気記録装置の基礎研究業務に従事。その後、サン・マイクロシステムズなどでマーケティングを担当し、現在はEMCジャパン EBC(エグゼクティブ・ブリーフィング・センター)にてストレージソリューションの啓発を行っている。SNIA日本支部主催のストレージセミナーでは講師も担当している。
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