ARMサーバ入門【前編】
消費電力をIAサーバ比90%削減するARMサーバの可能性
最先端のサーバで徐々に採用されてきたARMプロセッサ。その要因は、GoogleやFacebookなどのクラウド事業者が求めるデータセンター要件が急速に変化したことにある。
新世代のサーバがデータセンターに出現した。ARMプロセッサを搭載したこれらの新サーバは、極めて高い拡張性を実現する一方で、電力消費と冷却要求を低く抑えられるのが魅力だ。こういった可能性を秘めたARMプロセッサだが、データセンターで本格的に普及するまでには至っていない。今回から2回にわたり、ARMサーバの現時点でのメリットと限界について解説するとともに同技術の今後の展望を示す。
ARMプロセッサの歴史は意外と古い
従来型のプロセッサは、数百種類の命令を処理できる汎用型デバイスだといえる。こうした汎用型プロセッサの問題は「多数の命令に対応するのに必要な無数の論理条件を処理するため、数億個ものトランジスタが必要になること」だ。これはとりもなおさず、製造コストが高くなることを意味する。最近の米IntelのXeonプロセッサは、1個当たり1000ドル以上もするのが普通だ。それよりも深刻な問題なのが、個々のプロセッサの電力・冷却要求が高いことだ。これはデータセンターサーバの運用コストの増加につながる。
それとは対照的に、RISC(Reduced Instruction Set Computer)アーキテクチャをベースとするARMプロセッサは、これらの障害の多くを克服できる。命令の種類が少なくなれば、プロセッサはシンプルかつ安価になる。消費電力もはるかに少なく、熱放出も極めてわずかだ。トランジスタの数が減少すれば、プロセッサのパフォーマンスも向上する。命令処理に必要な論理段階が少なくなるからだ。実際、ARMプロセッサは最近登場したものではない。スマートフォンやプリンタ、デジタルカメラなどの商用エレクトロニクス製品に何十年も前から採用されてきた(関連記事:ARMアーキテクチャはどのように進化してきたのか?)。
サーバ用ARMプロセッサのメリットは「拡張性」
ARMプロセッサは、一部の最先端のサーバで徐々に採用されるようになってきた。ARMプロセッサの普及を促している最大の要因は「拡張性」だ。この点に関しては、データセンターが急速に変化していることを理解することが重要だ。インターネットを基盤とする米Googleや米Facebookなどの企業は、高価な高性能サーバに頼るよりも、安価なコモディティハードウェアでデータセンターを埋め尽くした方が一般に費用効果が高いことに気付いた。多数の汎用サーバを利用するという手法は「ハイパースケーリング」と呼ばれることもあり、多くのクラウドサービス業者も、データセンターをハイパースケール化するというコンセプトを採用している。
ハイパースケーリングは、ハイエンドの大型サーバに代わる低コストの選択肢を提供するかもしれないが、問題がないわけでもない。企業がデータセンターをハイパースケール化したことで直面する可能性がある最大の問題は、恐らく消費電力の問題だろう。個々のサーバを稼働させるのに必要な電力コストは通常、微々たるものだ。しかしそのコストを、大規模なデータセンターに配備された何十万台ものサーバの数に掛け合わせると、サーバの総電力コストは膨大な額になる。そしてこれらのサーバ全てから熱が発生するため、データセンターの冷却のために、電力コストがさらに50%くらいは優に増加する(関連記事:環境配慮型のデータセンター冷却システムを導入したドイツ証券)。
このようなハイパースケーリングの電力・冷却問題に対処するには、ARMサーバが最適かもしれないという認識が企業の間で広まりつつある。消費電力削減という目標を見据える米Hewlett-Packard(HP)の推定によると、ARMプロセッサを搭載したサーバは、Intelベースのサーバと比較して消費電力を最大90%削減できる可能性がある。
次回は、ARMプロセッサ導入のメリットやデメリット、今後の技術展望をより具体的に紹介しよう。
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