ARMアーキテクチャはどのように進化してきたのか?組み込み向け半導体最新動向:ARMプロセッサ

なぜARMプロセッサは組み込み向けで多く利用されているのか? ARMプロセッサの変遷と特徴を解説するとともに、今後の可能性について触れる。

2008年10月23日 08時00分 公開
[大原雄介]

組み込みを代表するプロセッサの1つ、ARM

 組み込みを代表するプロセッサとしてまず挙げられるのがARM(Advanced RISC Machines)であろう。もともとは英Acorn Software Technologies(以下、Acorn)というマイコンのベンダーが、1985年に自社のマイコン用に開発した32ビットRISC(Reduced Instruction Set Computer:縮小命令セットコンピュータ)だった。当時、Acornはモステクノロジーの「6502」というプロセッサをベースにマイコンを作っており、最初のARMプロセッサである「ARM1」は、この6502のエミュレーションを行うことができた。ちなみに、この6502やその後継製品は、今でも米国のWDC(The Western Design Center)で製造されている。

 これに続き、「ARM2」「ARM3」とプロセッサが強化されていくにつれて、ARMそのものの方に人気が出てしまう。最終的に、AcornはARMプロセッサの開発部隊のみを残し、コンピュータの開発/生産ラインをAcornのブランドごと売却してしまった。一方で開発部隊は「ARM(アーム)」と改称され、プロセッサの生産だけでなくプロセッサコアのライセンス供与を主要なビジネスに切り替えて現在に至っている。

 プロセッサコアのライセンス供与とは、要するに「CPUの設計図を売るビジネス」と考えればよい。つまり、アームは物理的なCPUのチップを一切販売せず、設計図のみを販売している。実際のCPUチップは、この設計図を購入したベンダーが自分で製造する形になる。設計図にもさまざまなものがあり、アームが提供している設計図は以下の3種となっている。

  • ハードコア:特定のファウンダリの特定のプロセスでそのまま製造するための設計図
  • ソフトコア:ファウンダリやプロセスに関して、ある程度自由度がある設計図
  • アーキテクチャ:ハードコアやソフトコアよりもっと上位レベル、すなわち命令レベルの設計図。もちろん、アームがもともと設計したCPUの内部構造をそのまま使うこともできるが、これを自由に変更したり作り直したりすることもできる

 ベンダーは自分の欲しいCPUの設計図を購入し、自分で作るようになっている。結果として、PCのように「CPUだけ」で販売されることはなく、最低でもメモリコントローラーやI/Oバス、幾つかの周辺機能を統合したSoC(System on a Chip)の形で製造されることになる。当然、製造プロセスについてもさまざまで、例えば「ARM11」は0.13マイクロメートルから65ナノメートルあたりまで、複数のプロセスで製造された製品が市場に混在している。

会員登録(無料)が必要です

関連ホワイトペーパー

組み込み | 32ビット | フラッシュメモリ | マルチコア



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

新着ホワイトペーパー

製品資料 サイボウズ株式会社

製造業の業務効率化をノーコードの業務アプリ作成サービスで実現する方法

製造業では、迅速かつ正確な情報共有やデータ管理を行い、業務効率を高めることが重要となる。そこで注目したいのが、現場業務に対応したシステムをノーコードで構築できるサービスだ。本資料では同サービスの詳細と成功事例を紹介する。

事例 ファインディ株式会社

3社の事例に学ぶ、開発生産性向上をサポートするSaaSサービスの実力

エンジニア組織の開発生産性を高めるには、開発プロセスのボトルネック特定やチームの改善文化の醸成といった取り組みが求められる。SaaSサービスを活用し生産性向上につなげている3社の事例を基に、同サービスの実力に迫る。

事例 ファインディ株式会社

パフォーマンス測定指標「Four Keys」を用いて開発生産性を向上させる方法

製品・サービスを高い品質で迅速にリリースするため、各社は開発生産性の向上に取り組んでいるが、プロセス改善や課題特定に悩むケースもよく見られる。そこで注目したいのが、開発パフォーマンスを4つの指標で測るFour Keysだ。

事例 サイボウズ株式会社

顧客・案件情報の管理でよくある課題、属人化や二重管理を防ぐための方法とは?

顧客・案件情報の管理は属人化や二重管理が起こりやすく、機会損失につながることも多い。こうした課題の解決策として注目されているのが、ノーコードで業務アプリを作成できるクラウドサービスだ。事例を交えてその効果を紹介する。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

「SRE」と「DevOps」の違いは? 業務分担と連携のヒント

迅速な開発とセキュリティ確保の両立は、アプリケーションの運用管理で重要だ。そのための手法である「SRE」「DevOps」はそれぞれどう異なり、どの場面で連携すべきなのか。

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

ITmedia マーケティング新着記事

news163.jpg

「政府」「メディア」への信頼度は日本が最低 どうしてこうなった?
「信頼」に関する年次消費者意識調査の結果から、日本においても社会的な不満・憤りが大...

news062.jpg

「Threads」が広告表示テスト開始 企業アカウント運用のポイントとは?
Metaのテキスト共有アプリ「Threads」で広告表示のテストが開始され、新たな顧客接点とし...