クラウドERP製品カタログ【第9回】東洋ビジネスエンジニアリング
Windows Azure対応したグローバル専用ERP「A.S.I.A GP」、その真の実力は
海外拠点での利用を想定して開発された「A.S.I.A GP」はグローバル対応機能を多数搭載する。新たにクラウド基盤「Windows Azure Platform」に対応し、さらなる迅速な海外展開を求める企業のニーズに応える。
日本企業の海外拠点での利用に特化したERPパッケージ
今日、ERPの世界で最も注目されているキーワードと言えば、「グローバル化」だ。長引く円高に国内市場の停滞と、日本企業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、拡大する新興国市場に活路を見いだそうと、製造業を中心に多くの日本企業がグローバル戦略を推し進めている。そうなると自ずと、ビジネス全体の中で占める海外拠点のオペレーションの割合は増えてくる。そこで必要となるのが海外拠点での運用に最適化したグローバル対応型ERPパッケージというわけである。
東洋ビジネスエンジニアリングが提供するERPパッケージ「A.S.I.A」(エイジア)は、そうしたグローバルERPの代表選手の1つだ。同製品はその名の通り、特に日本企業のアジアにおける拠点で採用されることが多い。また、製造業向けのソリューションに定評がある同社製品だけあり、製造企業における導入例がやはり多いが、実は導入企業の約4割は、卸売業や流通業など製造業以外の業種に属している。
A.S.I.Aには、2つの製品ラインがある。1つが「A.S.I.A GP」で、主に中小規模の海外拠点での利用を前提としている。そしてもう1つが、「A.S.I.A Hi-Line」。こちらは比較的規模が大きい海外拠点での運用に適した高機能型のERPパッケージだ。前者のA.S.I.A GPは、2010年に会計モジュールが初めてリリースされ、2011年12月に販売、購買、在庫管理の各モジュールがリリースされた比較的新しい製品だ。にもかかわらず、近年のグローバル化の流れを受けて、既に多くの企業で導入が進んでいるという。
東洋ビジネスエンジニアリング プロダクト事業本部 営業本部 営業3部 部長 三島良太氏は、海外に拠点を展開する日本企業にとって、これまでのERPパッケージは一長一短で、ニーズに的確にフィットする製品が存在しなかったと話す。
「グローバルのオペレーションに対応したERPパッケージの代表格といえばSAPやOracleの製品だが、これらを海外拠点に広く展開するには、膨大なコストが掛かる。そこで、コストを抑えるために現地製のERPパッケージ製品を導入する企業も多いが、本社から見ると仕様も言語も全く分からないシステムが出来上がってしまい、本社からのガバナンスが効かなくなってしまう。これは内部統制の面ではもちろんのこと、連結決算の早期化を図る上でも大きな足かせになってしまう」(三島氏)
A.S.I.A GPは、ちょうどこの両者の中間に位置し、それぞれの欠点を埋めるソリューションだという。欧米ベンダーのグローバルERPパッケージ製品と比べた場合には、導入コストをはるかに低く抑えられるメリットがある。その価格感は、全てのモジュールのライセンス価格に導入支援サービスの費用を加えても、1拠点当たり1000万円以下に抑えることができるという。さらに、導入拠点を順次増やしていく場合、新規にライセンスを買い直すのではなく、法人ライセンスを追加するだけでよい。かつ導入ノウハウもそのまま横展開できるため、さらに導入コストは安くなる。
ただしその分、機能は非常にシンプルに抑えられている。カスタマイズも基本的には行わずに導入する。こうした製品コンセプトについて、東洋ビジネスエンジニアリング プロダクト事業本部 マーケティングアライアンス部 山下武志氏は次のように説明する。
「機能をいたずらに増やしてしまうと、たとえノンカスタマイズが前提であってもパラーメータの設定が煩雑になってしまい、現地で導入や運用が回せなくなる。海外拠点の業務は多くの場合、非常にシンプルなので、A.S.I.A GPは思い切って余分な機能を削ぎ落として、シンプルな機能を安価・迅速に導入できることを目指した」(山下氏)
当初からグローバル運用を前提に開発
最近ではA.S.I.A GPに限らず、多くの国産ERPパッケージ製品が「グローバル対応」をアピールしているが、当初からグローバル環境での利用を前提に開発されたA.S.I.A GPは、そうした製品とは一線を画すと三島氏は力説する。
「A.S.I.A GPは、当初から『多言語』『多通貨』『多基準』を前提に設計・開発された国際対応の製品。海外ベンダーの製品にはこうしたものはあるが、国産のERPパッケージ製品としては現時点ではA.S.I.Aが唯一のはず」(三島氏)
例えば多言語対応では、デフォルトで日本語、英語、中国語、タイ語によるユーザーインタフェース(UI)表示を自由に切り替えて利用できる他、その他の言語であってもUIの文字列に対応する辞書データを登録すれば自由に追加できるようになっている。
また山下氏は、たとえ多言語対応を主張している製品であっても、日付や金額の表示まで国際対応できているかどうかに注意する必要があると言う。
「特に日付の表示形式は“年月日”“日月年”“月日年”など、国や地域によって異なるので、これらに柔軟に対応できる必要がある。日本製のパッケージ製品は“年月日”に固定して作り込まれていることが多く、地域の日付表示に対応できないことが多い。その点A.S.I.A GPは、当初からグローバル環境での利用を念頭にGMT(グリニッジ標準時)で日付を管理しているため、どの表示形式にも問題なく対応できる」
また、グローバル対応には欠かせない「複数の会計基準への対応」、いわゆる多基準機能も当初から備える。ただA.S.I.A GPは、他のグローバル対応ERP製品とは若干異なる形でこの機能を実装している。
「SAPをはじめとする多くのグローバル対応ERPは、『複数会計基準=複数元帳』という前提に立ち、異なる会計基準ごとに複数の元帳データベースを保持する方式を取っている。しかし、欧州におけるIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)対応の先例を見ると、ほとんどの企業はローカル基準とIFRS基準で別々の元帳を持つようなことはせずに、単一の元帳データベースだけを運用し、決算時の組み替え処理で複数の会計基準に対応している。また、複数の元帳を常に保持していると、それぞれについてデータの正当性や整合性をチェックしなければならず、実際の運用を考えると現実的とはいえない」(山下氏)
そこでA.S.I.A GPでは、「複合帳簿」と呼ばれる単一の帳簿データベースの中で、複数の会計基準の仕訳データをそれぞれ区分し、一括管理する方式を取っている。例えば、区分1には通常仕訳のデータ、区分2にはIFRS用の修正仕訳、区分3には現地基準用の修正、区分4には管理会計用のデータ……といった具合だ。そして、用途に応じてそれぞれを組み合わせることで、さまざまな基準での出力に対応する。
Windows Azureのクラウド基盤上でも正式に利用可能に
東洋ビジネスエンジニアリングでは2012年5月14日、マイクロソフトが提供するクラウドコンピューティング基盤「Windows Azure Platform」上で稼働するA.S.I.A GPの提供を開始した。このWindows Azure対応版の提供に至った背景について、三島氏は次のように話す。
「A.S.I.Aはこれまで現地法人が個別に導入するケースが多かったが、最近では本社のグローバル戦略の一環として、本社のサーバに現地法人用のA.S.I.Aを集約して運用管理する導入形態が増えてきた。われわれもこうしたニーズに応えるためにホスティングサービスなどを提供してきたが、アジアの拠点は成長スピードが速いため、すぐハードウェアリソースが足りなくなる。そのたびにハードウェアを増設していては、コスト的にも運用負荷の面でも苦しくなってくる」
そこで目を付けたのが、リソースの拡張を非常に柔軟に、かつ容易に行えるWindows Azureの基盤だったわけだ。クラウドであれば、運用管理に掛かる人的コストの削減効果も期待できる。特に、グローバルに展開するシステムの運用管理は、クラウド化するメリットが大きいと山下氏は話す。
「世界中の拠点でシステムが自前で運用されていると、たとえ日本が夜中だったり、あるいは休日であったとしても、世界各地のカレンダーに合わせて24時間365日、常時システムをサポートしなければならない。自前でシステムを運用するより、クラウド基盤に載せた方がはるかに運用管理の負荷は軽くなる。また、東日本大震災やタイの大洪水などをきっかけに、ITシステムの可用性に対する関心が高まっているが、この点においても自前でHA(高可用性)システムを構築するより、可用性が担保されているクラウド基盤を活用した方が高効率だ」
もちろん、海外拠点にサーバを置きたくない、メンテナンス要員を置きたくないといったニーズにも合致する。またWindows Azureの場合、システムのデプロイ先としてシンガポールを指定できることが、意外にも顧客のウケがいいという。三島氏はその理由について、「アジアの拠点用のシステムを載せる先としては、やはり同じアジアのデータセンターの方が何かと都合がいいと考える企業が多いようだ」と説明する。
Windows Azure対応版のA.S.I.A GPと、オンプレミス版A.S.I.A GPの仕様は、基本的には同一だという。もともとのオンプレミス版がグローバル対応を前提に作られていたために、大きな変更を加えることなくそのままWindows Azureのプラットフォーム上に載せることができたのだという。
「Windows Azureのサーバは、英語ロケール、GMTで動作しているため、それを前提としていない国産パッケージソフトウェアは、そのままの仕様では正常に動作しないことが多い。しかしA.S.I.A GPはもともと多言語、GMTをベースに開発されているので、ほとんどコードを改変することなくそのままWindows Azureに対応できた」(山下氏)
同じく、ライセンス費用もオンプレミス版と変わらない。つまり、Windows Azure上でA.S.I.A GPを利用するには、通常のソフトウェアライセンスに加えて、Windows Azureの利用料金を負担するだけで済む。
ただ最近では、A.S.I.A GPの機能をクラウド基盤上から月額課金で提供するSaaS型サービスに対する要望が増えてきているという。実は東洋ビジネスエンジニアリングでは、A.S.I.A GPをSaaSとして提供するための技術検証を、既に終えているという。
「会計システムをSaaSで調達することに対しては、セキュリティ上の懸念を抱く企業がいまだに多い。だが海外拠点での話となると一転して、SaaSの利用価値に高い関心を示す。現在はサービスをどのような形態で、またパートナー企業とどのような形で協業して提供できるか検討を重ねている。サービス提供の開始時期が決まれば、正式にサービス内容を発表できると思う」(三島氏)
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