パイロットライト方式のDRが活況でも
ユーザーが語る「クラウドで災害復旧対策は間違い?」
リソースを潤沢に利用できる「Amazon Web Services」では、その特性を生かしたDR(ディザスタリカバリ)事業が活況を呈しつつある。しかし、一方で「誰にでも合うサービスではない」という評価もある。
米Amazon Web Services(AWS)は、事実上どこからでもアクセスできる安価なストレージと処理能力を提供する。だが、ディザスタリカバリ(DR)の問題に対する完璧な答えとはまだ言えない(関連記事:コンピュータリソースを無制限に活用できる「Amazon Web Services」)。
例えば、AWSの「Elastic Compute Cloud(EC2)」サービスは、DR用にリージョン間でワークロードをレプリケートする機能をネイティブでサポートしていない。
そうした用途に使用できるネイティブアプリケーションレベルのサードパーティーツールもあるが、フェイルオーバーをスムーズに行うために必要となる統合作業に注意を要する場合がある。そう指摘するのは、プロモーションや物流、医療費請求を手掛ける米Inmarの開発運用担当上級エンジニア、アンドレス・シルバ氏だ。
「当社のサービスの場合、AWSへの依存度が非常に高いため、オンプレミスでDRを行うのは恐らく不可能だ。そのため、もう1つ別のリージョンにも展開する必要がある。今はまだ作業を進めているところだ。半分まで来ている」と同氏は語る。
同氏によれば、Amazonは「Relational Database Service(RDS)」ではレプリケーションをサポートしている。だが、その他のコンポーネントではそれぞれ別途にリージョン間の同期が必要となるため、状況を全て把握するのは難しい場合もあるという。
AWSユーザーの中には、停電によってクラウドへのインターネット接続が断たれることを懸念し、クラウドとオンプレミスの両方でデータをバックアップする二段構えの防御策を講じている向きもいる。
「Amazonを使えば、確かにDRで必要とされる地理的な多様性を確保できる。だが、物理的なバックアップをローカルサイトで行うのには、安心感や即時性といったプラスの側面がある」と、賃貸人や賃借人向けの金融サービスを手掛ける米Neighborhood Pay ServicesのCEO、リチャード・カルマス氏は指摘する。
Amazonのストレージは月額数セントで利用できる。だが、一度にまとまった料金を支払ってバックアップのホスティングプロバイダーを利用するのではなく、ストレージ容量の料金を支払い続けるというのは、誰にでも合うやり方ではない(関連記事:値下げされるクラウドストレージ料金に潜む「隠れコスト」)。
「アプリケーションを迅速に開発する必要があるのなら、Amazonには利用価値がある。だが私は一般的には、自分でできることに対し、他の誰かに料金を支払うことには否定的だ」と米電子商取引会社Monsoon Commerceの上級ネットワークエンジニア、マイケル・ウォーチャット氏は語る。
それでも、Amazonのリセラーやコンサルタントによれば、安価なストレージや、ほぼ全てを自動化できる点が評価され、AWSのDR事業は活況を呈しつつあるという。
クラウドコンサルティング会社で、システムインテグレーターでもある米2nd WatchのCEO、クリス・ブリスナー氏によれば、クラウドを利用した最新の企業向けDRにはハイブリッドなアプローチが採用される場合もあるという。従来の固定セカンダリサイトと、新たなリソースをクラウドでほぼ即座に用意できる仕組みとが融合された方法だ(関連記事:災害復旧におけるホット、ウォーム、コールドサイトの違い)。
いわゆるパイロットライト方式のDRでは、IT部門はインフラの中核となる部分をAmazon上に構築し、障害時にのみ通常規模までインフラをスケールアップできる。パイロットライトとは「ガスストーブなどの種火」のことで、必要に応じて素早く点火し周囲を暖める。これになぞらえて、システムの復旧作業においては、システムの最重要要素を(ここではAWS上に)構築して常に実行しておくことにより、復旧時にその要素を中心にホットスタンバイ環境を本番環境の規模に迅速に拡大して作業を進めるやり方をいう。
ブリスナー氏の顧客である米連邦政府は、ハードウェア障害が原因でオンプレミスサイトからAWS上の環境にフェイルオーバーしたことがあり、その際、わずか数時間でAWSにデータセンターを丸ごと復旧できたという。「現在、AWSに本番環境を構築しており、別のリージョンへのフェイルオーバーを検討中だ」とブリスナー氏は語る。
それでも、この作業には学習曲線があるかもしれない。レプリケーションの統合に関してはなおさらだ。
「米CommVaultや米IBMのTivoli部門といった大手ベンダーが、パイロットライトの概念に着目してくれないかと私は期待している。AWSからはプラットフォームサービスは提供されていない。サードパーティーのツールは各種あり、そうしたツールは役には立つ。だが、ボタンを押すだけですぐに動作させられるような、購入すればすぐに使えるタイプの製品は提供されていない」とブリスナー氏は続けている。
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