申し分ないデザイン、パフォーマンス
徹底レビュー:魅惑の高解像度だけではない「iPad mini Retina」のトンガリ具合
iPad mini Retinaは、デザイン、パフォーマンス、ディスプレーの品質の点では申し分ない。しかし、ストレージ容量に関しては使用目的と予算を十分に検討する必要がある。
iPad mini Retinaは、米Appleが発売した最新の8インチタブレットだ。同社の代名詞であるRetinaディスプレイを搭載し、その仕様が強化されている。初代の「iPad mini」は、「iPad 2」をスケールダウンしたバージョンだったが、iPad mini Retinaは通常サイズの「iPad Air」に匹敵する機能を備えている。
構造とデザイン
iPad mini Retinaは、スリムでコンパクトで軽量というApple製品らしい魅力を備えたデバイスだ。寸法は200(高さ)×134.7(幅)×7.5(厚さ)ミリで、重量はわずか331グラムである。3G接続や4G接続を利用した無線通信が可能なCellularモデルの重量は若干増えて341グラムになる。
iPad Airと同様に、iPad mini Retinaの枠は薄く、デバイスの小型化に貢献している。しかし、片手で持つのは少々困難だ。片手でも持てる大きさだが、両手で持った方が操作しやすく、安定感がある。ディスプレーの端を親指で押さえていても、そのことが適切に認識されるため、ユーザーはもう一方の手で自由にジェスチャを使用できる。
高解像度ディスプレー
iPad mini Retinaで採用された2048×1536ディスプレーも無視できない。7.9インチのディスプレーで326ppiの高解像度が実現されている。これは、初代iPad miniの解像度163ppiから大幅な向上だ。「Google Nexus 7」や「Amazon Kindle Fire HDX」などの競合デバイスのディスプレーは、やや小さい7インチだ。他のデバイスと並べた場合、iPad mini Retinaは画面が大きいため、縦長という印象はあまりない。
高解像度のおかげでモバイル用に最適化されていないWebサイトの小さなテキストも従来モデルに比べてはるかに読みやすくなった。Kindleアプリでは白い背景に黒のテキストがはっきりと表示され、快適な読書環境が提供される。ビデオのストリーミングは非常に高画質で楽しめる。ホーム画面の各アプリの下に表示される小さなテキストも鮮明で、iPad 2が見劣りするほどだ。
ボタンと端子
iPad mini Retinaには、720p HDビデオを撮影できる1.2Mピクセル前面カメラと、1080pビデオを撮影できる5Mピクセル背面カメラが搭載されている。
デバイス下部には、iOSデバイスで多くの機能を担ってきた、おなじみの丸いホームボタンがある。デバイスの枠の右上には電源のオン/オフとスリープ用のボタンが、左上にはヘッドフォンジャックがある。また、枠の右側には画面の方向のロックまたは消音の設定のいずれかに使用できるスライドボタンが用意されている。スライドボタンの下には音量ボタンがあるが、これは従来のiPadで採用されていた一体形ボタンとは異なり、iPad mini Retinaでは2つの個別のボタンになっている。音量は上のボタンを押せば上がり、下のボタンを押せば下がる。それから、デバイス下部の枠には、8ピンのLightning端子とスピーカーがある。
パフォーマンス
iPad mini Retinaにはデュアルコアの64ビットA7チップが搭載されている。そのため、処理速度はより高額なiPad Airと遜色ない。iPad Airのクロック周波数は約1.4GHzだが、iPad miniのクロック周波数はiPhone 5Sに近い1.3GHzだ。iPad Airと同じ1GバイトのRAMを搭載しているが、プロセッサの処理能力は、いささか残念に感じる。しかし、ベンチマークテストと実際に使用した結果から、このタブレットの処理速度は高速で、ユーザーはあまり不満を持たないことが予想される。RAMの増強がデバイスのパフォーマンス寿命にとって適切であったかどうかは、今後2~3年の技術の進歩によって明らかになるだろう。
「iOS 7」をインストールしたiPad 2に比べると、iPad mini Retinaのアプリケーション稼働は快適だ。iPad 2では遷移アニメーションが非常にもったりして重かったが、iPad mini Retinaでは、この動作が軽快になった。アプリはさっと開き、すぐにコンテンツが表示されて使用できる状態になる。また、iPad mini Retinaで実施したテストでは、「Safari」でのWebサーフィンやゲームのプレイ中にアプリがクラッシュしたり、動作が遅くなったりすることもなかった。古いiOSデバイスでiOS 7を実行しているユーザーは大きな性能の差を感じるだろう。コンテンツのストリーミングはバッファ処理の問題もなく高速だった(ただし、この問題は使用できるインターネット接続にも左右される)。
米TechTargetでは、「Netflix」と「Hulu Plus」のストリーミング、HD画質の番組のダウンロードおよびYouTube動画の視聴を行った。いずれも鮮明な画像が表示され、音量も個人で使用するには十分だ。コンパクトなサイズと不便なスピーカー位置により、音量が素晴らしいとは言い難いが、iPad mini Retinaは申し分ない機能を備えている。
Webページとアプリは簡単にスクロールでき、タッチディスプレーの反応も良い。iPad 2と比べると、ページの読み込みはiPad mini Retinaの方が速い。また、ページがスクロールできるようになるまでの時間もiPad mini Retinaの方が短い。
ストレージ容量
これまでの世代のiPadと同様に、iPad mini Retinaの各モデルでも容量は決まっており、miniSDカードなどを使用して拡張することはできない。一番小さい容量のモデルは16Gバイトだ。2、3年前であれば十分な容量だったが、現在では少し物足りない。
使用目的が基本的なアプリとWebサーフィンだけのライトユーザーは16Gバイトで十分だろう。しかし、多くのメディアコンテンツやデジタルデータを使用するユーザーにとっては不十分だ。現在のメディアコンテンツのサイズはGバイト単位と大きく、16Gバイトではコンテンツを消したり再ダウンロードしたりすることになるだろう。これがiOSユーザーが不満を抱えている実情で、容量を拡張できるAndroidデバイスに乗り換える大きな理由にもなっている。HD映画のサイズは、1本3~4Gバイトある。それに加えて音楽、TV番組を1~2本、写真、お気に入りのアプリを保存すれば、あっという間に16Gバイトの容量はなくなってしまうだろう。
iPad mini RetinaからSDカードやUSBドライブにアクセスしたい場合は、Kingston MobileLite WirelessやApotop Wi-Reader Proなどのアクセサリを利用することも可能だ。このような対応策はあるものの、iPad mini Retinaの少ないストレージ容量は懸念材料だ。
ユーザーは価格の点からも他社の7インチタブレットの存在を無視することはできないだろう。iPad mini Retinaの16GバイトのWi-Fiモデルは399ドル(国内価格、4万1900円)であるのに対し、Google Nexus 7の16Gバイトモデルは最低229ドル(2万7800円)だ。Google Nexus 7に容量の拡張機能はないが、32GバイトのWi-Fiモデルでも最低269ドル(3万3800円)で、iPad mini Retinaの16Gバイトモデルよりも安い。Kindle Fire HDX 7インチタブレットにも容量の拡張機能はないが、本記事執筆時点で64Gバイトモデルは309ドル(3万3800円)、16Gバイトモデルはわずか229ドル(2万4800円)だ。
しかし、iPad Airと比較するとiPad mini Retinaは約1万円安いため、iPad mini Retinaを手頃な選択肢と考えるユーザーもいるだろう。基本的に、iPad AirとiPad mini Retinaの違いは、ディスプレーのサイズと多少の処理速度の差でしかないため、iPad mini Retinaを選ぶことは大きな妥協にはならない。
ソフトウェア
iPad mini Retinaでは、Appleの最新モバイルOSであるiOS 7が導入されている。複数のAppleデバイスを持っているユーザーは、全てのデバイスを同期して利用することができる。使用するデバイスをAppleエコシステムで統一すると、iPhoneおよびiPadの両方と互換性があるアプリとiCloudにより、どのデバイスに保存されているコンテンツも簡単に利用できる。iOS 7はiPad mini Retinaで真価を発揮し、古いiPad モデルよりも優れた使用感が実現されている。
iOS 7のリリースに伴い、Appleは新しいApple iOSまたはOS Xデバイスの購入者に「iWork」スイートと「iLife」スイートの提供を開始した。iWorkでは、クラウドにあるドキュメントで共同作業を行ったり、OS X、iOS、iCloudなどに保存されたファイルを外出先でも編集することが可能だ。iLifeスイートでは、「iPhoto」「iMovie」「GarageBand」などのソフトウェアが提供される。ユーザーが新しいデバイスを起動すると、これらのアプリはApp Storeから無料でダウンロードできるようになる。
カメラ
1.2Mピクセル前面カメラは「FaceTime」と「Skype」用、5Mピクセル背面カメラは写真撮影用だ。恐らくスマートフォンに搭載されているカメラの方が画素数が高いだろう。しかし、iPad mini Retinaの5Mピクセルカメラでもいざというときには十分役立つ。
素晴らしい画質とはいえないが、十分な光量があれば背面カメラでもきれいな写真が撮れる。iPad mini Retina にはフラッシュ機能が搭載されていないため、十分な光量が得られない場所での撮影は難しい。多少画質が荒くなるが、人工の光でも用意できればどのような場所でも撮影は可能だ。カメラアプリの操作方法は他のiOSデバイスと同じで、画面をピンチして拡大し、タップして別の場所にカメラのフォーカスを合わせることができる。フォーカス機能を使うと写真の明るさのバランスを簡単に調整できる。他の部分より暗い/明るい被写体の部分をタップすることで、大抵の写真はホワイトバランスが適正になり、最終的な仕上がりに大きな違いが生まれる。
写真の色は、暖色系よりも寒色系に傾いており、全体的に寒色系になる。明るい照明や直射日光の下で撮影した場合、写真は鮮やかな色ではっきりと写る。冬の曇り空の下で、雪景色、れんが、植物などを撮影した風景写真でも、iPad mini Retina では白、赤、緑をきれいに撮影できた。
バッテリー持続時間
AppleのiPadは充電持続時間が非常に長いことに定評がある。1回充電すれば、再充電する必要なく1日使用できる。この特長はiPad mini Retinaでも引き継がれている。
一般的な使用法の場合、Wi-Fiネットワークに接続した状態で最大10時間、携帯電話ネットワークに接続した状態で最大9時間の使用が可能だとAppleは公表している。米TechTargetで実験したところ、結果は公表されている時間と同程度で、通常のWebサーフィンとアプリの使用ではバッテリーは約11時間持続した。コンテンツのストリーミング、音楽の再生、Bluetoothの使用を行った場合も、バッテリーは公表値に近い10時間持続した。
また、待機状態のときはバッテリーの残量にほとんど変化はなかった。ただし、バッテリーの残量が減る速度はバックグラウンドで実行しているアプリや有効になっているプッシュ通知の数によって異なるだろう。
結論
AppleのiPad mini Retinaは、持ち運びやすくデザイン性も優れている。初代のモデルに比べてパフォーマンスは高速になり、iOS 7にふさわしいモデルとなった。
最大の問題は容量の価格だ。基本の16Gバイトより多い容量のモデルを購入する場合は価格が1万円ずつ高くなる。ただし、メディアコンテンツをデバイス自体にあまり保存せず、アプリでストリーミングするだけのユーザーにとって容量は問題にならないだろう。iPad mini Retinaと競合デバイスのどちらを購入するかを決定する最大の要因は、デバイスの使用目的だ。映画、TV番組、アプリ、音楽などを保存する容量が重要であれば、iPad mini Retina以外の購入を検討するとよいだろう。
パフォーマンスとデザインを重視し、価格が高いことが気にならなければ、iPad mini Retinaを選択するとよいだろう。iPad mini Retinaの処理速度とデザインは7インチタブレット市場で群を抜いている。米TechTargetでは、他のタブレットより0.9ミリ大きなディスプレーサイズも好評価だ。
長所
- 高精細のディスプレー
- 軽量
- 高速な64ビットのApple A7プロセッサ
短所
- 基本モデルでも高価格
- 容量を拡張できない
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