ツールベンダーに影響あり
「iOS 7」登場で泣く人、笑う人 それぞれの事情
高度なモバイル管理機能が組み込まれる予定の「iOS 7」の登場で、これまでiOSデバイス向けのツールを提供してきたベンダーは戦略の変更を迫られる可能性がある。
米Appleは企業の要望に応え、「iOS 7」搭載端末をセキュアに管理するためのAPIを提供する。これによってユーザーエクスペリエンスが犠牲になることはないという。
モバイル管理機能がiOS 7に組み込まれるということは、その機能を提供する製品を開発してきたエンタープライズモバイル管理(EMM)ベンダー各社にとっては、従来の戦略を転換するか、iOS 7の機能を利用する必要があることを意味する。
米VMwareは、「Horizon Suite」のiOSバージョンに関する方針を変更した。同社はこれまで、iOS端末向けにセキュアコンテナとアプリラッピングツールを提供してきた。一部のAndroid搭載端末向けのモバイル用ハイパーバイザーをiOS端末に提供できなかったからだ。
VMwareでエンドユーザーコンピューティングエバンジェリストを務めるベン・グッドマン氏は「当社のアプローチはセキュアコンテナが中心だったが、今後はそういうわけにはいかない」と語る。iOS版のHorizon Suiteではアプリラッピングのサポートが外されることになる。
VMwareはモバイル端末向けのセキュアコンテナを完全に放棄したわけではないが、2013年秋に登場するiOS 7の新機能により、セキュアコンテナ技術の重要性は低下する。同OSには、シングルサインオンや「アプリ単位のVPN」「オープンイン管理」といった機能が搭載される。アプリ単位のVPNは、アプリの起動時に自動的にVPNに接続するようにアプリを設定する機能。オープンイン管理は、従業員が共有ファイルを開くのに使え、アプリのリストをIT部門が設定できるという機能だ。
また、Appleは「Volume Purchasing Program(VPP)」のライセンス方式も見直し、企業がモバイルアプリケーションのライセンス権の継続ならびにライセンスの再請求と再配布ができるようにした。
iOS 7ではまだ欠落している必要な機能がある。それは、異なるアプリケーション間でのマネージド(管理型)コピー/ペーストだ。「この点を除けば、IT管理者はAppleが新たに追加した管理機能を利用することにより、コンテナやアプリラッピング技術を使わなくてもデバイス、アプリケーションおよびデータを管理できる」とVMwareのグッドマン氏は話す。アプリラッピングは、モバイルアプリケーション管理(MAM)ベンダーの多くが採用している技術だ。
モバイル管理ツールは今後も必要
「iOS 7の新機能により、サードパーティーのEMMベンダーの存在理由がなくなると考えている人もいるが、そんなことはない」と指摘するのは、米Solstice MobileでiOS関連の開発とコンサルタントを務めるジェレミー・コンキン氏だ。同社はエンタープライズモビリティを専門とするコンサルティング会社で、iOS 7への移行サービスを提供している。
コンキン氏によると、新しい管理機能はクライアント側のAPIであり、この機能を利用するにはサーバ側のアプリケーションも必要になるという。
驚くことではないかもしれないが、MDM(モバイルデバイス管理)ベンダー各社は、今後もEMMツールが活躍する場があると考えている。
「APIが用意されるからといって、大量のデバイスのアクティベートや設定が簡単になるわけではない」と話すのは、エンタープライズMDMベンダーの米AirWatchでセールスエンジニアリングマネジャーを務めるブレイク・ブラノン氏だ。「OS XサーバとApple Configuratorを使えば、こういった機能の多くを手作業で実現できるが、それでもAndroid端末用のツールやBYOD(私物端末の業務利用)のためのツールが必要だ」
新興EMMベンダーの中には、iOS 7のリリースは競争が激しい市場で頭角を現すチャンスになると期待しているところもある。欧州の携帯電話キャリアにサービスを提供している英GLOBOは2012年、北米市場に進出した。GLOBOでは現在、社内の技術者の60%が、同社の製品である「Enterprise Mobility in a Box」をiOS 7の新機能に対応させる作業に取り組んでいるという。
「MDMエンロールメント」のようなあまり話題になっていない新機能を利用しようと考えているベンダーもある。この機能は、iOS端末をパッケージから取り出す前にMDMベンダーが端末の設定を行うことを可能にするというもの。このため、IT部門は端末のプロビジョニングを行う必要がなく、従業員の端末を設定する作業の大半が不要になる。
モバイル開発を手掛ける米Raizlabsでは、モバイルアプリケーションライフサイクル管理製品である「AppBlade」の新バージョンを準備中だ。同社の主任技術者のジェームズ・ダニエルズ氏によると、この製品は、iOS 7の新しい管理APIを利用するという。
一方、VPPの変更により、従業員は新しいApple製端末を箱から取り出した後すぐに、App Storeからプロダクティビティアプリを追加できるようになる。
「Appleは、IT部門がiDevice(訳注:iOS端末の総称)を大量に配備できるようにシステムと各機能を設定しており、そのやり方は従来とは根本的に異なる。MDMベンダーは新しいAPIを利用することにより、すっきりとした形でMDMを実現できるようになる」とダニエルズ氏は話す。
「さまざまな管理機能を既に開発したベンダーは、iOS 7の新機能が登場することに対して、今までの苦労が水の泡になったような悔しい思いをするだろう」と同氏は付け加える。
しかしAppleがiOS 7で追加した新機能については、大手・中小ベンダー、IT管理者、従業員を含め、EMMに関係する多くのベンダーやユーザーにメリットがあるという見方が大勢を占めている。
「これらのAPIは、Appleの端末とかかわりのある全てのベンダーに新たなチャンスを提供するものだ。これは喜ばしいことだ」と前出AirWatchのブラノン氏は語る。
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