Microsoftの本気度で探る
「Office for iPad」「iWork」の比較で見えてきたiPadユーザーのファイナルアンサー
iPadユーザー待望の「Office for iPad」がついにリリースされた。「Microsoft Office」のほぼ全ての機能を利用することができる同アプリだが、代替製品が数多く存在する中で、勝機を見いだせるのだろうか。Microsoftの戦略を考察する。
世界中のビジネスパーソンが待望していた「Microsoft Office」のiPad版「Office for iPad」がついにリリースされた。ただし、一般消費者にとってはそれほど魅力的ではないかもしれない。
タブレット向けに一から設計されたiPad版Office
米Appleの人気タブレット「iPad」が発売されて以来、「Word」「Excel」「PowerPoint」のiPad版の提供が長らく待ち望まれていた。その一方で、Office製品の穴を埋める競合製品も数多く登場した。Appleのオフィススイート「iWork」はその一例だ。同アプリでも、Office文書を閲覧/保存することができる。
ただ、iPad版Officeが登場するまでのこの数年間で、代替製品はますます洗練されてきたが、それでもMicrosoft Officeを完全に再現できるわけではなかった。
こうした背景から、初代iPadの発売から4年が経過した今でさえも、iPad版Officeが発表されたとなれば、大きな注目を集めるのである。
無論、iPad版Officeはフル機能を利用できる。Word、Excel、PowerPointの各アプリは、「iPhone」の代替製品をはるかに凌いでいる。iPad版Wordには非常に多くの書式オプションがあるし、iPad版Excelは豊富なグラフや数式が用意されている。iPad版PowerPointも多くの画面切り替えをサポートしている。
iPad版Officeのインタフェースや動作は、Windows版Officeと多くの点で共通している。だが、マウス操作を中心に考えられたWindows版Officeとは違い、iPad版Officeではタッチ操作を中心に考えられている。つまり、iPad版Officeは、デスクトップではなく、タブレットで動作するように一から設計されているということだ。
ビジネスパーソンにお勧めのiPad版Office
企業幹部や営業部員など、iPadを支給される企業ユーザーは、iPad版Officeを気に入るだろう。Windows版Officeに搭載される全ての機能を利用できるわけではないが(マクロに未対応など)、大半のユーザーが必要とする機能は全て提供されている。
その一方で、一般消費者にとってはあまり魅力的に映らないかもしれない。その理由は簡単で、コストの問題である。iPad版Officeを利用するには、サブスクリプション形式のオフィススイート「Office 365」の契約が必要になる(閲覧は無料)。Office 365は、個人向けの最も低価格なプランで年額70ドル、あるいは月額7ドルとなる。
iWorkが新規購入されたiPadに無料で付属することを考えると、iPad版Officeは苦戦を強いられるかもしれない。Appleの「Pages」「Numbers」「Keynote」は、Officeを完全に再現するわけではないが、精度は非常に高まっている。これ以上の利便性のために、年額70ドルを払う価値はあるのだろうかと考える人も多いはずだ。
時機を逸したiPad版Officeの登場
iPadはこの4年間で2億台以上が販売されてきた。その間、iPad利用者はMicrosoft Officeのない環境でやり過ごさなければならなかった。そして今、Word、Excel、PowerPointのiPad版がようやく手に入るようになったからといって、低価格の代替製品が存在する中で、サブスクリプション契約の必要なiPad版Officeに飛び付く人がいるだろうか。
iPad版Officeが数年前にリリースされていたら、状況は大きく違っていただろう。だが実際には、iPad版Officeの市場投入は大幅に遅れ、AppleやDataViz、Infrawareといった競合に代替アプリを開発する時間を与えてしまった。
Officeがもはや時代遅れだと決め付けるのは時期尚早である。だが、かつて絶対的な優位性を持っていた同製品に強力な競合が存在しているという事実は、Microsoftによる深刻な戦略的ミスの表れだといえる。
Microsoftの新戦略
Microsoftの新しい最高経営責任者(CEO)であるサトヤ・ナデラ氏は、タッチ操作を中心にしたバージョンのWord、Excel、PowerPointを、WindowsではなくiPadで先にリリースした。これは、前任者のスティーブ・バルマー氏では成し得なかっただろう。
うわさによると、バルマー氏はWindowsタブレット向けOfficeの開発を続ける一方で、iPad版Officeのリリースを遅らせていたという。その背景には、Windowsタブレットを提供するベンダーを支援するという狙いがあった。iPadでは使うことのできないOfficeの存在が、Windows搭載デバイスを売り込むときのアピールポイントの1つになるためだ。
iPad版Officeのリリースによって、WordとExcel、PowerPointは、Windows以上に重要な存在になるとナデラ氏は考えている。つまり、どのデバイスであっても、Officeが動作可能になるべきであるということだ。
というのも、タブレット端末の売り上げは伸び、ノートPCの売り上げは落ちている昨今の市場において、MicrosoftはOffice製品をWindowsだけにとどめておく余裕はない。恐らく、バルマー氏にはそうした状況が見えなかったのかもしれない。だが、ナデラ氏は違うようだ。
Microsoftは、iOSだけにとどまらず、Officeスイートの(米Googleの「Android」も含め)マルチプラットフォーム化を進めていく計画を明らかにしている。
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