モバイル向けオフィスイートをめぐるバトルに発展か
iOS向けに無償化された「iWork」、「Microsoft Office」はどうする?
米Appleが全ての新しい「iOS」デバイスに「iWork」を無償提供する。その一方で、iOSをめぐるMicrosoftのモバイルOffice戦略は不透明だ。この分野での勢力争いが激化する可能性がある。
米Appleは、全ての新しい「iOS」デバイスに「iWork」を無償で提供する。エンドユーザーにとっては同社純正のオフィススイートが手に入るわけだが、Appleにとって、これは「iPad」向け「Office」を計画する米Microsoftへの対抗手段となる。
iWorkの無償化は2013年9月中旬、「iPhone 5s」および「iPhone 5c」の発表と併せて明らかになった。
「これはAppleが新たに仕込んだトロイの木馬だ」と話すのは、モバイルエンタープライズコンサルティング会社の米High Rock Strategyの創業者で主席アナリストを務めるクリス・シルバ氏だ。「iPadはiOSファミリーの中でも文書作成に向いている。そして、新型機が10月にも発表・リリースされるとうわさされる中、ユーザーを新しいスマートフォン端末の新機能に慣れさせ、これらの機能に依存させるのが同社の狙いだ」
実際、モバイルワーカーたちはiPhoneとiPadをコンテンツ消費用のデバイスとしてだけでなく、コンテンツ作成用のデバイスとしても利用し始めている。
Apple専門のコンサルタント会社である米Tech Superpowersの創業者、マイケル・オー氏は「これが何を意味するかといえば、実質的にオフィススイートといえる製品が、Appleの全ての端末およびあらゆるiPhoneに無償で付いてくるということだ。十分な機能を備え、Microsoftのアプリケーションとも互換性がある。これは抜け目のない作戦といえる。ソフトウェアとデバイスが結び付いているのが強みだ」と話す。
iWorkアプリの無償化は、ユーザーにとって基本的には歓迎すべきことだ。だが、既存ユーザーにとっては、有償のiWorkを購入するか、もしくはサードパーティーのオフィススイートを購入するという選択肢しかない。
米市場調査会社のIDCでクライアントとディスプレーの調査を担当するボブ・オドネル氏は「Appleは全てのiOSにiWorkをバンドルし、既存のデバイスを持っているユーザーにも無償で提供すべきだ」と話す。
色あせるWindowsベースのOffice
タブレットに押されてPC市場が縮小するという状況の中、モバイル戦略を見直している企業らは、Windowsベースの「Microsoft Office」スイートから離れるための方策を模索している。
例えば、米ボストン市は「Microsoft Exchange」プラットフォームの使用をやめ、電子メールとオフィススイートとして「Google Apps」を採用する方針を2013年春に明らかにした。
しかし、全ての企業がそういった移行を進めようとしているわけではない。
バイオメメディカル製品メーカーの米Luminexでフィールドサービスディレクターを務めるスティーブ・ナーバ氏は、「当社のIT部門では、Microsoft Officeスイートの価格が下がるのを期待している。Google Docsを採用する予定はまだない」と話す。
ナーバ氏はiWorkもまだ本格的に採用するつもりはないという。「iPad上でiWorkを使用する上での制約は、情報を素早く入力できないことだ」と同氏は指摘する。特に手の大きい人にとって、タブレット用の外付けキーボードは、通常サイズのノートPC用キーボードの代わりにはならないという。
Microsoft OfficeドキュメントをiOSデバイス上で表示/編集する場合、iWorkがベストな選択肢となるかどうかはまだ分からない。ちなみに、Microsoft Wordドキュメントは、Appleのワープロソフトウェアと100%の互換性があるわけではない。
しかし、アナリストによると、Appleが製品を改良するのに伴い、こうした問題もいずれ解決するだろうという。
iPad向けMicrosoft Officeはどこに?
MicrosoftがiOS版Officeのリリースを延期したのは、Microsoft Officeのフルバージョンが利用できる「Surface」タブレットの販売へ悪影響が及ぶのを恐れたためである。iOS版Officeのリリースを見合わせるという判断は、Microsoftのモバイル戦略の破綻を示すものかもしれない。
Microsoftは先ごろ、「Office Mobile for iPhone」をリリースした。これは、「Office 365」のユーザーを対象としたアプリで、「Microsoft Word」と「Microsoft Excel」のドキュメント作成と簡易編集および「Microsoft PowerPoint」のプレゼンテーション表示が行える。Office Mobile for iPhoneはiPadでも使えるが、小さい画面サイズのままか、2倍に拡大した表示となる。Microsoftは、iPadでは「Office Web Apps」の利用を推奨している。
iPad版Officeを提供しないMicrosoftのモバイルOffice戦略には、まるで大きな穴がぽっかりと開いているようだ。金融アナリストらによると、iOS版OfficeスイートをいまだにリリースしないMicrosoftには理論上、何十億ドルもの損失が生じているという。
「AppleのiWork無償化は、MicrosoftにiPad向けOfficeのリリースを促すだろう。それでも2年遅れといったところだ」とアナリストらは指摘する。
「Officeという巨大なドル箱のせいで、Microsoftはこれからも危ない綱渡りをしなければならない」とIDCのオドネル氏は語る。
だが、従来型のMicrosoft Officeスイートや、好調なOffice 365に代わる選択肢をiWorkが企業に提供できるかどうかは、現段階では不明だ。
「問題は、iWorkが業務で使えるという評判をAppleが確立できるかどうかだ」(オー氏)
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