既存ハードを生かしてソフト開発で強化
新iPhone登場まで待てない、スマートフォンに“次の驚き”をもたらす6つの進化
スマートフォンの次の驚きに寄与するのは、既存ハードウェアと革新的なソフトウェアの融合――。米Amazonの新スマートフォンや米Googleの“レゴフォン”を分析し、スマートフォンの今後を予測する。
現在、スマートフォンの革新は停滞している。その兆候は各所で見られる。これはアイデアが尽きてしまったということなのだろうか。いや、そんなことはない。実現性の高いスマートフォンの物理的な革新の構想はいくらでもある。例えば、太陽光発電バッテリー実現のために既存テクノロジーを改善する必要があることについて議論が交わされている。また、Bluetoothスピーカーに取って代わる組み込みスピーカーの開発可能性も取り沙汰されている。だが、モバイルテクノロジー業界の専門家は、スマートフォンの次の進化は、確立された主力ハードウェアと大幅に強化されたソフトウェアの効果的な統合という形で表れると予想する。
「スマートフォンは多種多様な用途で使用されている。そのため、次の『大きな変化』として根本的な設計変更が行われることはない。スマートフォンをさらに便利なものにするソフトウェアの強化になるだろう」と米Compass Intelligenceでチーフモバイルアナリストを務めるゲリー・パーディー氏は述べている。
そのための基礎は既にある。スマートフォンは、ホームセキュリティシステムから台所用品に至るまで、あらゆるものを制御する万能リモコンの役割を果たすようになっている。例えば、2014年1月に開催された「CES」見本市では、韓国Samsung Electronicsが「スマートホーム」環境のデモンストレーションを行った。この環境では、ホームエコシステム全体を1つのプラットフォームに統合し、アプリを使用してリモートで操作できる。
進化1:対象物を読み取る「Amazon Fire Phone」
これは素晴らしいが、ホームコネクティビティは氷山の一角にすぎないとパーディー氏はいう。スマートフォンの機能に高いハードルを新たに設けるソフトウェアの進歩の筆頭分野は米Amazonの「Firefly」に見られる。これはAmazon初のスマートフォン「Amazon Fire Phone」に搭載された同社のテクノロジーだ。Fireflyは対象物を「読み取る」テクノロジーである。読み取った物を識別して、最終的にはユーザーが画面を1回タップするだけで購入できる仕組みになっている。
「これは既存のハードウェアと内蔵カメラを活用しながら、問題解決や利便性の向上を図るサービスを提供するソフトウェア開発の例だ。他のスマートフォンメーカーがモバイルコマースのビジネスチャンスに気付き、独自解釈を加えて追随するのも時間の問題だろう」とパーディー氏は話す。米Googleや米Appleでも、対象物を解析して、それを購入できる関連会社のWebサイトにアクセスするアプリが確実に登場するだろう。
進化2:スマートフォンの大型化
スマートフォンの進化として考えられるのは、モバイルコマースのビジネスチャンスの他には、スマートフォンの大型化がある。Samsungの「GALAXY S5」、台湾HTCの「HTC One」、韓国LG Electronicsの「LG G3」などのスマートフォンが絶大な人気を得ていることから、スマートフォンは大きいほど良いとメーカーが考える可能性があることは想像に難くない。また、Appleが5.5インチの大型ディスプレーを搭載した新しい「iPhone」シリーズの生産を計画しているといううわさがあることは言うまでもないだろう。
現状を考慮すると、近い将来、このようなファブレットが新しい標準となり、スマートフォンは両手で操作するものになるのだろうか。必ずしもそうはならないとパーディー氏は予測する。純粋な販売台数に基づいてメーカーが最終的な判断を下すというのが同氏の考えだ。スマートフォンの大型化は進んでいるが、これ以上大きくなることはないだろう。
「今後、画面サイズに大きな革新は見られないだろう。Samsungは考えられるほぼ全ての画面サイズを試している。購入者が全体的な操作性に優れているデバイスを好むことは同社も分かっているだろう」とパーディー氏は語る。
進化3:モジュール方式は解決策となるか
Googleの「Project Ara」に関するうわさから、モジュラーフォンの時代が間もなく到来すると考えている人もいる。十分にカスタマイズされたスマートフォンを注文し、より高性能な交換部品を購入してアップグレードできるという概念は、非凡なアイデアで人気を博すだろう。
ただし、決めつけるのは早計だ。パーディー氏は、低価格を望む消費者が「レゴフォン」普及の障害になると予想して次のように指摘する。「ほとんどの場合、モジュール方式は価格面で大量生産に劣る。大量に生産する方が価格を低く抑えられる」
だが、モジュラーフォンに適所がないわけではない。パーディー氏は、病院や政府機関などの垂直市場では、Araフォンが評価されるという見方を示している。病院や政府機関などでは、旧式のデバイスが役に立たなくなったときにデバイス全体を交換するよりも、高額な先行投資を行う方が財政上有効な選択肢となるからだ。
「デバイス全体を破棄するのに比べたら、特定の市場ではモジュール式のデバイスが非常に有益だろう」(パーディー氏)
進化4:ポケットドクター
スマートフォンで開発の機が熟しているもう1つの分野は、健康/フィットネスアプリケーションだ。スマートフォンには標準で加速度計とジャイロスコープが搭載されるようになっている。そのため、ベルトやセンサーの開発がさらに進み、既存のハードウェアやアプリと連携して私たちの健康を監視できるようになるだろう。
このようなアプリを使用すると、運動しているときの心拍状態などを監視したり、異常が見つかった場合にはかかりつけの医者に通知を送ることも可能だ。これは便利だが阻害要因にもなるとパーディー氏はいう。
「健康は非常に重要だ。だが、プライバシーが侵害される大きな危険が潜んでいる」と(パーディー氏)
より頑丈なスマートフォンの普及と低価格化が進むと、「水蒸気」「汗」「屋外環境」などへの耐久性のあるメインストリームのモバイルデバイスがさらに増えるだろう。これもテクノロジーと運動の融合を促す大きな要因となる。
「軍用品並みの耐久性が一般的になるとは思わないが、低価格で実現できるようになれば標準的な機能になるだろう」とパーディー氏は語る。
進化5:統合OSシナリオ
ソフトウェアの大幅な強化によって、既存のハードウェアのままで日常的に使う機能が向上することが予想されている。さらに、OS自体が進化を続け、さまざまなモバイル/デスクトップデバイスで操作感の統合が進む可能性もある。
今後の大きな疑問は、「モバイルOSがスマートフォンの主要な環境であり続けるのか」「モバイルとデスクトップで別のOS環境を使用し続けるのか」ということだ。例えば、Appleの「Mac OS」は同社の「iOS」と大きく異なる。これらのOSが統合されれば、モバイルデバイスをモニター/キーボード/マウスなどにシームレスに接続できるようになるかもしれない
米Microsoftや、Linuxディストリビューションの「Ubuntu」などでは、OS統合の実現に向けて大きく歩を進めているが、AppleはOSを統合するつもりはないと断言している。Appleが他社の取り組みと距離を置こうとしているのかどうかは分からない。だが、ユーザビリティの面でOS統合が多くのユーザーに大きなメリットをもたらすことは間違いない。
進化6:ハイエンドとローエンドの収束
スマートフォンメーカーは最新かつ最高のガジェットを市場に投入するために激しい争いを繰り広げている。機能の少ない二つ折りの携帯電話が、それほど遠くない未来に、過去の遺物になることはほぼ確実だ。
「そのうちスマートフォンがコモディティーとなる時代が来るだろう。誰もがスマートフォンを所有し、使いこなせるようになるという時代だ」とパーディー氏はいう。また、同氏は、技術が継続的に進歩することで、ハイエンドデバイスとローエンドデバイスの境界がなくなるとも指摘している。
「自動車業界では、さまざまな魅力的なテクノロジーが導入されている。だが、4~5年前まで、このようなテクノロジーは独Daimlerのメルセデス・ベンツや、独BMWの車種でしか提供しておらず珍しいものだった。今では米Fordの「Focus」に自動駐車機能が搭載されている。このようなハイエンド(高級車向けの)テクノロジー機能がローエンド(大衆向け)の車種に搭載されることを誰が想像しただろうか」
本稿では、新しい展開が予想される分野を取り上げた。だが、そのいずれもスマートフォンメーカーがスペックの高いデバイスで勝負するのを諦めたことを示唆するものではない。今後もピクセル数は増加し、カメラの性能も強化されるだろう。だが、ハードウェアの革新速度が緩やかになるにつれ、既存のハードウェアを利用して、スマートフォンを小さくて便利な機器から強力で変革的なツールに作り変える動きが進むだろう。このチャンスをつかんで生かせるかどうかは開発者に掛かっている。
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