クラウドスループットランキングTop10
AWSとGoogleのネットワーク性能を比較、意外な競合相手も登場し大接戦に
ある独立系テスト会社が、主要クラウドサービスのネットワークスループットと遅延時間に関するベンチマーク検証を実施した。クラウド各社は大接戦を演じ、意表を突く結果になった。
クラウドのパフォーマンスに関する報告事例は珍しいものではない。だが、多数のネットワークスループットと遅延時間のテストに基づいたベンチマークテストの結果は強力な洞察を提供する。
米Amazon Web Service(Amazon)と米Googleは、いずれも自社のクラウドのネットワークパフォーマンスが優れていると主張する。両社は強力なパフォーマンスを実現する立役者として、SDN(Software Defined Networking)アーキテクチャとデータセンター間をつなぐ私有のダークファイバーを挙げている。顧客とパートナーの報告によると、どちらのプラットフォームでも安定したネットワークパフォーマンスが提供されるという。
電子商取引サイト「PropertyRoom.com」を運営する米PropertyRoom.comの最高技術責任者(CTO)、ケビン・フェリヒコ氏は次のように語る。「『Amazon Web Services』(AWS)に移行したばかりのころ、当社では計算リソースとメモリリソースを過剰にプロビジョニングしていた。その後、スケールダウンしたが、パフォーマンスに目立った影響は見られなかった」
AWSのネットワークはリージョンをまたぐ参加が難しい場合もある。AWSと「Google Compute Engine」(GCE)の両方を使用している某企業のCTOの話では、リージョンではなく「プロジェクト」でネットワークの境界を設定しているGCEの方がネットワーク分野では優れているという。
クラウド管理ソフトウェア企業の米ElasticBoxは、AWSとGCEの両方に対応した製品を提供している。同社でCTOを務めるアルベルト・マエストロ氏と彼のチームは、リージョンベースのアプローチを採用した。リージョンに参加するためにコロケーションで実行するルータをセットアップした。だが、接続は不安定でパフォーマンスが一定しない結果となった。Googleのアプローチでは、別個にルータを管理する必要はなく、国境を越えるほど距離があっても一貫性が保たれる。
扱いやすさという点でもGCEに軍配が上がるとマエストロ氏はいう。
「当社にはAWSのネットワークトポロジを理解しているエンジニアはいない。GCEのネットワークトポロジの方がずっとシンプルだ」(マエストロ氏)
とはいうものの、柔軟性に関してはAWSの方が優れている。例えば、AWSではサブネットごとにポリシー規則が定義可能で、GCEよりも粒度の細かいアプローチが採用されている。
AWSとGCEの性能は、どちらが優れているのか
クラウド市場で最も優れているのは、AWSとGCEのどちらのクラウドサービスだろうか。
どちらでもないというのが、その答えだ。
独立系のベンチマークテスト会社である米CloudHarmonyが2014年10月に実施したテストで、ネットワークスループットが最も優れていたのは米CenturyLink Cloud(旧Tier 3)のクラウド「CenturyLink Cloud」だった。
CenturyLink Cloudはクラウドコンピューティング市場のダークホースとして存続するだろう。2013年のTier 3の顧客ベースは2500~3000人だった。だが、8基のvCPUと16Gバイトのメモリを搭載した同社のハイパースケールインスタンスを10回テストした結果、ダウンリンクの平均速度は18.919Gbpsを記録した。これは、AWSとGCEの最高値を8Gbpsも上回る結果である。
この一連のテストで明らかになったネットワークスループットのランキングでは、トップ10のインスタンスのうち6個をCenturyLink Cloudのインスタンスが占めている。また、上述の同社のハイパースケールインスタンスは、1時間当たり0.33ドルで提供されており、テストを実施した中で安価なサーバに分類される。
CloudHarmonyの創設者であるジェイソン・リード氏は、CenturyLink Cloudの並外れた結果は、同社の仮想マシン(VM)が1台のホストを共有していることが理由だと見ている。AWSとGCEのVMでは、複数の共有ホストで一貫したパフォーマンスを実現するための調整が行われている可能性がある。
だが、この見解にCenturyLink Cloudは異を唱える。
CenturyLink Cloudでクラウドプラットフォームの統括責任者を務めるデイビッド・シャコチス氏は次のように話す。「通常、当社のサーバはデータセンターのハードウェアクラスタ間で分散される。クラスタ全体のワークロードのバランスを取るよう継続的に最適化を行っている。特定のベンチマークテストのワークロードが1台の物理サーバに限定される可能性はゼロではないかもしれない。だが極めて低い」
ベンチマークテストでは、ネットワークパフォーマンスの変動も見られた。リード氏によると、最も変動が少なかったのはAWSのサービスだったという。つまり、複数回実行したテストでネットワークパフォーマンスが最も安定していたのがAWSのサービスだ。
AWSとGCEのコストパフォーマンス対決
AWSとGCEに限定してテスト結果を見てみると、ネットワークスループットのパフォーマンスは拮抗している。だが、コストパフォーマンスには違いが見られた。ネットワークスループットのランキングでは、トップ10のうちGCEのn1-highcpu-8インスタンスが10.791Gbpsで5位、AWSのc3.8xlargeインスタンスが10.319Gbpsで6位にランクインしている。
AWSのc3.8xlargeインスタンスは、32基のvCPUと60Gバイトのメモリを搭載しており、オンデマンド価格は1時間当たり1.68ドルからとなっている。これに対して、GCEのn1-highcpu-8インスタンスは、8基のvCPUと7.2Gバイトのメモリを搭載しており、1時間当たりの価格は0.34ドルとなっている。
AWSのラインアップには、他にもベンチマークテストで10Gbpsに近いスループットを記録したインスタンスが2つ(r3.8xlargeインスタンスとi2.8xlargeインスタンス)そろっている。それぞれ32基のvCPUと244Gバイトのメモリを搭載している点は変わらないが、前者のパフォーマンスは9.835Gbps、後者は9.623Gbpsを記録している。前者のオンデマンド価格は1時間当たり2.80ドル、後者は6.82ドルだ。
GCEのn1-highmem-16インスタンス(16基のvCPUと104Gバイトのメモリを搭載し、パフォーマンスは8.521Gbpsを記録)の価格は1時間当たり1.29ドル。n1-highCPU-16インスタンス(16基のvCPUと14.4Gバイトのメモリを搭載し、パフォーマンスは8.271Gbpsを記録)の価格は1時間当たり0.68ドルだ。
だが、このコストパフォーマンスのパターンから外れるインスタンスが1つある。それはAWSが提供するエントリレベルのインスタンスt2.microだ。このインスタンスは、1基のvCPUと1Gバイトのメモリしか搭載していないにもかかわらず、4.229Gbpsのパフォーマンスを発揮した。また、価格は1時間当たり0.01ドルと安価である。
AWSは、特に米国東部の顧客から遅延についての報告を受けることがあるという。
「約2週間に1回の割合で、遅延に限定した苦情が社内ユーザーから寄せられている。また、AWSのWebサイトの読み込みに時間がかかるという苦情が顧客から寄せられるケースが恐らく1カ月に1回はある」(フェリヒコ氏)
CloudHarmonyのベンチマークテストでは、AWSのc3.8xlargeインスタンスとr3.8xlargeインスタンスの遅延時間が最も短く、いずれも0.09ミリ秒だった。だがAWSのインスタンスの中には、テストを実施した90種類を超えるインスタンスの中で遅延時間のワースト2を記録したものがある。それは、m3.mediumインスタンスの7.65ミリ秒とt1.microインスタンスの17.30ミリ秒だ。
CenturyLink Cloudが提供する2基のvCPUと4Gバイトのメモリを搭載したハイパースケールインスタンスの待ち時間は0.10ミリ秒で、最短の待ち時間を記録したAWSのインスタンスに次ぐ結果となった。一方Googleの遅延時間はごく普通で、全てのインスタンスで0.5ミリ秒から0.6ミリ秒強という結果になった。
その他の結果
ネットワークスループットのテストで、米Microsoftの「Microsoft Azure」プラットフォームはAWS、GCE、CenturyLinkの直後にランクインしている。16基のvCPUと112Gバイトのメモリを搭載したd14インスタンスは、9.452Gbpsのパフォーマンスを記録し、1時間当たりの価格は266.33円だ。
米Rackspace Hostingのネットワークスループットはごく普通だった。同社のインスタンスの中で最高のパフォーマンスを記録したのは32基のvCPUと120Gバイトのメモリを搭載したio120インスタンスで、6.866Gbpsという結果を出した。また、米IBMの「IBM SoftLayer」は、2基のvCPUと4Gバイトのメモリを搭載のインスタンスで、サイズが小さいながらも3.32Gbpsという高パフォーマンスを記録した。価格は1時間当たり0.12ドルだ。
本稿に関してAWS、Google、IBM、Microsoft、Rackspaceからの正式なコメントは得られなかった。ネットワークパフォーマンステストの詳細な結果については、「CloudScores」(CloudHarmonyのWebサイト)で公開中だ。
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