ニッチ技術か、成熟技術か
徹底比較:ベアメタルクラウド vs. 仮想サーバ、支持者が口をとがらせて語るメリットとは(1/2 ページ)
仮想化はITの生産性を新たなレベルに引き上げたが、イノベーションの停滞によって、一部の企業はベアメタルシステムの方がパフォーマンスへのニーズに合うと考え始めたようだ。
米IBMはこの1年、自社のクラウドサービス「IBM SoftLayer」でベアメタルサーバ(OSがインストールされていない物理サーバ)戦略と、米Dockerとの連係を通じてコンテナ戦略を積極的に進めてきた。自社の主要ソフトウェア製品全てをSoftLayerに完全に対応させる移植作業も行っている。SoftLayerは、ベアメタルサーバのパフォーマンスを活用できるように最適化されている。
さらにIBMは、オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」のプロジェクトも後押ししている。OpenStackを、「企業ユーザーが従来の仮想環境とコンテナやベアメタルサーバをスムーズに統合できるようにするための鍵を握るコンポーネント」と位置付けているからだ。
「われわれは仮想化ユーザーに、自社の環境をOpenStackで管理することを勧めている。Dockerを導入してコンテナを利用するのに役立つからだ」と、IBMのクラウドアーキテクチャ担当副社長を務めるエンジェル・ディアス氏は語る。「われわれがDockerと提携している目的の1つは、ユーザーがSoftLayerでベアメタルサーバを活用できるように支援することにある。これが活用できれば、従来の仮想環境と新しい技術の統合が完了したことになる」
SoftLayerのようにベアメタルサーバをクラウドサービスとして提供するベアメタルクラウドの市場には、米Rackspaceも2014年に「OnMetal Cloud Servers」で参入している。「OpenStack API」を利用した迅速なプロビジョニングが可能なこのIaaS(Infrastructure as a Service)のターゲットは、インフラの急速な拡張を迫られ、クラウドならではの柔軟性や使い勝手に加え、物理サーバの性能も求めている企業だ。
「ユーザーは秒単位で請求されるため、従量課金という点では、このサービスにおけるサーバの扱いは従来のクラウドのサーバと同様だ。プロビジョニングと自動化に関しても、その扱いは従来のクラウドのサーバと変わらない。唯一の違いは、このサービスにおけるサーバには仮想化のレイヤーがないことだ」と、RackspaceのCTO(最高技術責任者)を務めるジョン・エンゲイツ氏は説明する。
ベアメタルが、利益を生むニッチ市場になり得る1つの理由として、パフォーマンス集約型の処理である膨大なビッグデータの収集および分析が、企業ユーザーの間で重視されるようになってきたことが挙げられる。またIoT(モノのインターネット)の普及が進みつつあることから、この傾向が近い将来に鈍化することはなさそうだ。
「分析クエリに必要な処理速度を考えると、高速なRISCまたはCISCプロセッサが使えることが望ましい。となると、ソフトウェア抽象レイヤーでCPUを大量に使用するオーバーヘッドは避けたい。このため、ベアメタルサーバを高速なアナリティクスエンジンとして使うのが理にかなっている」と、米調査会社Technology Business Researchのソフトウェアアナリスト、アンドルー・スミス氏は指摘する。
ベアメタルクラウドには物理サーバの処理速度の他にも、仮想サーバを提供する従来のクラウドに対する優位点がある。ベアメタルクラウドがユーザーに提供する専用サーバでは、使用可能な全てのITリソースに高速にアクセスでき、アプリケーションパフォーマンスの予測可能性が高く、そして最近では、複数のアプリケーションが相互に適切に分離されている。この分離は、セキュリティを確保するとともに、リソースを共有するアプリケーション間で、あるアプリケーションの動きが他のアプリケーションの動作に影響する問題(いわゆる「Noisy Neighbor《迷惑な隣人》」問題)を軽減するために必要になる。
「以前は、専用サーバを使うには、長期契約を結ぶか、自前で持たなければならなかった。しかし、もうそんなことはしない。従来のクラウドの仮想サーバのように専用サーバをレンタルでき、物理サーバとクラウドのいいとこ取りができる。こうした専用のベアメタルサーバを好む人が増えている」(Rackspaceのエンゲイツ氏)
また、コンテナは、仮想化がかつてそうしたように、専用ベアメタルサーバでリソースを最大限に活用することを可能にしていると、エンゲイツ氏は説明する。しかし、ベアメタルサーバとコンテナの組み合わせでは、こうしたリソース活用の最大化が、大規模で複雑な企業環境で首尾よく実現されるという点が、仮想化を利用した場合とは異なっている。
「大規模なマルチコアサーバでは、使用可能なリソースをアプリケーションに最大限活用させることが課題となっている。それができないと、リソースを無駄遣いしているように感じてしまう。だが、コンテナは、極めて軽いインスタンスを多数実行することで、リソースを最大限に活用できるようになっている。プロビジョニングも高速で、実行に必要なリソースも少ない」(エンゲイツ氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社kickflow] 2社の事例に学ぶワークフロー改革:属人化解消や年数万件の申請書類削減のコツ -
製品資料
[NTTPCコミュニケーションズ株式会社] 「回線速度不足」だけが原因ではない? Web会議の遅延を解決する方法とは -
製品資料
[東京エレクトロン デバイス株式会社] 工場の可用性向上に重要な「7つの領域」と対策 OTセキュリティ強化の基礎知識 -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 問い合わせ対応で本来の業務が進まない、総務や情シスの負担をどう減らす? -
製品資料
[リコージャパン株式会社] 自社データから高精度な回答を生成、簡単に生成AIチャットボットを構築する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
本当にそのIBM iに問題はない? ブラックボックス化と属人化を防ぐ第一歩
-
4
「Microsoft一択」で本当にいいのか 知らぬ間にライセンス費用が膨らむ真相
-
5
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
6
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
7
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
8
【基本情報技術者試験】「デュプレックスシステム」と「デュアルシステム」の違いは?
-
9
「世界一給与にハングリー」な日本のエンジニアが“雇用の安定”を求める理由
-
10
MS月例パッチが1000件突破 人手不足の情シスを襲う「月1回メンテ」の崩壊
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
3
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
4
Windows PCとMacの選択制で生産性向上 LINEヤフーが実践する運用管理方法とは
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
8
AI時代に成功するための「ナレッジマネジメント」ベストプラクティス
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー