中間層の開発者が対象
IDE「AWS Cloud9」の注目度が高まる、Microsoftの開発者基盤を脅かすか
Amazon Web Services(AWS社)は統合開発環境(IDE)「AWS Cloud9」を携えて、Microsoftが最重点分野として長年支配してきた開発者コミュニティーに挑戦する。
覇権を争うクラウドプラットフォームの各プロバイダーは、自社のサービス導入を広げるため開発者に照準を合わせている。
クラウドプラットフォーム大手の最重要課題は、できる限り開発者フレンドリーになり、新たな開発者を引き付けることだ。これを行っているのがMicrosoftとAmazon Web Services(AWS社)だ。例えばAWS社は2017年11月27日から12月1日にかけて開催した「AWS re:Invent 2017」カンファレンスで、任意のWebブラウザからアクセスできるクラウドベースの統合開発環境(IDE)「AWS Cloud9」を発表した。コードの作成、実行、デバッグを行うためのIDEは、他のクラウドプロバイダーと競争するAWS社にとって欠けていた部分だ。
「AWS社はついにAWS Cloud9で開発者に『居場所』を用意した」と語るのは、サンフランシスコのConstellation Researchでアナリストを務めるホルガー・ミューラー氏だ。AWS Cloud9は、他のクラウドプロバイダーと競争するAWS社にとって欠けていた部分を補うことになる。こうした競合プロバイダーの中でも、特にMicrosoftは開発者ツールおける長年の強みと開発者コミュニティーとの関係をこのクラウド時代にも拡大し続けている。
実際、MicrosoftのIDE「Visual Studio」エコシステムで育ってきた開発者は、当然のように「Microsoft Azure」を選んでいる。これは両者が互いに最適化されているためだ。だが、全ての開発者がVisual Studioを使用するわけではない。そのため、クラウドプロバイダーはさまざまなオープンサービスセットを提供してこうした開発者を引き付けなければならない。そこでAWS社は2016年にCloud9を買収し、AWS Cloud9に統合した。これでAWS社は最適化された独自の開発者プラットフォームを手に入れるに至った。
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AWS Cloud9の導入
AccentureでAccenture AWS Business Groupのマネージングディレクターを務めるクリス・ベークマン氏は次のように語る。「当社がAWS Cloud9を利用することになるのは間違いない。当社はこれまで多くのネイティブツールを使用している。だが、アプリ開発ツールにはしばらくの間ギャップがあった。こうしたギャップはCloud9などのサードパーティー製ツールを使って埋めていた。それが『Amazon Web Services』(AWS)の一部となったのだから」
AWS社はこのAWS Cloud9でクラウドを重視したIDEエクスペリエンスを提供する。これは、主要競合会社がIDEで開発者にAWS対応のツールキットを使用させているのに対抗する。こう語るのは、Moor Insights & Strategyでアナリストを務めるレット・ディリングハム氏だ。
「同社はAWSと緊密に統合するIDEを提供するようになる。例えば、『AWS Lambda』を使ってサーバレスアプリを構築する場合、AWSは『AWS コマンドラインインターフェイス』を使用するために、リアルタイムのペアプログラミングとターミナルへのダイレクト接続を備えた機能セットを構築している」(ディリングハム氏)
こうした統合は、使い慣れた開発環境から開発者を切り離す鍵になる。
「AWS Cloud9のニュースを見たとき、素晴らしい、この市場に新たな競争相手が加わったと感じた」と語るのは、ワシントンDCのクラウドファンディング企業GlobalGivingでシステムとクラウドのアーキテクトを務めるジャスティン・ラップ氏だ。同氏は、人気のMicrosoftツール「Visual Studio Code」(VS Code)を使用している。VS CodeはMicrosoftの「Windows」、Linux、Appleの「macOS」に対応する軽量のコードエディタだ。
AWSの課題は、現在使用中のツールを気に入っている開発者を魅了することにある。これは非常に難しいだろう。こう語るのは、Forrester Researchでアナリストを務めるマイケル・フェースマイア氏だ。「私自身も開発者だが、VS Codeの使用をやめるつもりはない」と同氏は話している。
今のところ、AWS Cloud9は現在の開発者に何かを提示する「足掛かり」で、これから時間をかけてこれを育てていくことになるとフェースマイア氏は話す。例えば、AWS Lambda関数を調整するのであれば、開発者はAWS Cloud9が提供するクラウドエディターを開くだけで済むようになる可能性がある。
「これはAWSへの入口になる。AWS社は優れた機能を数多く提供しているが、その機能を利用するためのツールが欠けていることが問題だった。AWS Cloud9はこの大きな問題へのきっかけになる」(フェースマイア氏)
どのプロバイダーがより開発者フレンドリーか
AWSは、ツールの観点では最も開発者フレンドリーなクラウドプラットフォームとはいえず、本格的なプロフェッショナル開発者からは必要とされていなかった。だが、AWSは成長と拡大を続けている。その膨大な量と利用の容易さから、開発者コミュニティーの開発者にとってはよりフレンドリーになっている。AWS Cloud9はコードをあまり記述しない開発者と本格的なプロフェッショナル開発者の中間に位置する開発者にとって魅力がある。こう語るのは、ダラスのTrend Microでクラウドリサーチ部門のバイスプレジデントを務めるマーク・ニュニコバン氏だ。
「AWS Cloud9は主に中間層の開発者を対象にしている。素晴らしいビジュアルとコラボレーション機能を備え、より多くの開発者にAWSクラウドプラットフォームでの構築を広めようとしている」(ニュニコバン氏)
AWS社は新しいIDEを開発者基盤に提供するだけでなく、完全なロイヤリティーを獲得するためにもっと多くのことを行わなければならない。
AWS Cloud9はJavaScript、Python、PHPなどをサポートするが、人気の高いJavaはサポートしていない。これは非常に多くの開発者がJavaを使用していることを考えると意外である。次に、AWSはオープンソースのLanguage Server Protocol(LSP)を使用しないという決定を下した。こう語るのは、Eclipse Foundationでエグゼクティブディレクターを務めるマイク・ミリンコビッチ氏だ。Eclipse Foundationは2014年からWebベースの開発環境「Eclipse Che」を提供している。Eclipse CheはJavaをサポートし、コンテナ化された開発者ワークスペースを2年近く提供している。
「AWSは最終的にJavaのサポートを実装すると思われる。だが、その実装はゼロから自社で行わなければならないだろう。もしもAWSがLSPエコシステムに参加していたら、『Eclipse LSP4J』プロジェクトに基づいてすぐにでもJavaをサポートできただろう。このプロジェクトは、MicrosoftがVS CodeでJavaサポートの提供に利用しているコードベースだ」(ミリンコビッチ氏)
開発者ツールに対する独自のアプローチは、業界のベストプラクティスと懸け離れているとミリンコビッチ氏は話す。「AWS Cloud9はAWS開発者の生産性を高めるかもしれないが、業界が求めるオープンソースソリューションにはならないだろう」
Constellation Researchのミューラー氏もこの意見に賛成で、AWSはある意味Microsoftよりも独自性を高めようとしていると指摘する。
「AWS Cloud9はまだ初期段階にあり、AWSは価値提案に取り組まなければならない。だが、Microsoft Azureで生産性を最大限高めるにはVisual Studioを使用しなければならないというようなことが、数年後にはAWS Cloud9でもいわれるようになるだろう」(ミューラー氏)
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