JAWS DAYS 2016レポート
アンデルセン、ヤマハ発動機――地方企業はAWSをどのように使って生き残る?(1/2 ページ)
AWSユーザーには、首都圏以外で活動する企業も多く存在する。ユーザーカンファレンス「JAWS DAYS 2016」では、アンデルセンサービスとヤマハ発動機の2社が、AWSによって得た変化を語った。
世界中のどこからでも同じように使えるというのは、クラウドの大きな魅力の1つだ。しかしながら、実際の活用は都市圏の企業や中堅以上のグローバル企業に偏っている。「Amazon Web Services」(AWS)のユーザーグループJAWS-UG(AWS Users Group - Japan)は2016年3月に開催したユーザーカンファレンス「JAWS DAYS 2016」で、「首都圏以外でイノベーションをリードするユーザー企業からクラウド活用を学ぶ ~地方のユーザー企業はクラウドとどうつきあうべきか?」と題したセッションを設けた。このセッションでは、首都圏以外のユーザー企業2社が具体的な導入事例を発表した。
クラウドでIT部門の働き方を変えたアンデルセンサービス
先に登壇したのは、アンデルセンサービスでシステムサポート部 部長を務める堀尾紀昭氏だ。JAWS-UG 広島支部にも属している。アンデルセンといえば首都圏に住む人にとっては駅構内で見掛けるパン屋として身近な存在だが、全国でパンの製造・卸を行っており、事業所も全国に広げている。
「事務系の部署からシステムサポート部に異動してきたときは、あまりいい職場ではないなという印象を持ちました。システム更新などの仕事で他の社員が休んでいる時間に働かなければならなかったり、システムは動いていて当たり前と思われているので減点方式で評価されたり」。他部署からシステム系の部門に移った当時の印象を堀尾氏はそう語る。
以前の部署と比べて残業も多くなったという。この第一印象から堀尾氏は、何でもかんでもIT部門で抱え込むのを止め、楽に前向きに仕事ができる部署に変えたいと考えたという。
まず手を付けたのは、ネットワーク環境の整備だ。各事業所のネットワークをインターネットVPNで統一した。各事業所にITのプロがいるわけではないが、素人が扱っても安定的に動かせるルータを見つけた。こうして社内のネットワークを一元化でき、安定性も向上したことが後にクラウドの採用へと進む礎となった。
「IT部門はITに関するプロフェッショナルであっても、各事業会社の現場の仕事を全て把握するのは難しく、適材適所でアプリケーション開発をするのは大変でした」と堀尾氏は明かす。そのためIT部門は、契約や開発パートナー探しなど上流課程に注力することにしたという。設計は各事業会社に任せ、IT資産はIT部門に集約することでコストダウンと運用負荷軽減を図ったのだ。
しかし社内でサーバを運用し続ける限り、IT部門の負担が劇的に軽減されることはない。その課題を解決するために打った次の手が、サーバ仮想化やホスティングを利用したアウトソーシングだった。自社で資産を持つのではなく、データセンターの機器を利用してコストを削減し、監視や業務オペレーションも委託することにした。これでIT部門は運用監視の束縛を離れ、アプリケーション開発のサポートに専念できるようになった。クラウドは、そうした仮想化やホスティングの延長線上にあり、自然に視野に入ってきた。
大きなきっかけとなったのは、バッチ処理の高速化に分散処理ミドルウェア「Apache Hadoop」だったと堀尾氏は説明する。「Hadoopを使えば確かに高速化できるのですが、それを実現するだけのサーバを用意することはとても無駄でした。バッチ処理ですから、毎日数十分しか使わないのです」。高速な処理能力を持つ機器をどう確保するか。そこで目を付けたのがAWSだった。「時間貸しのクラウドなら低コストで運用できるのではないかと考え、AWSを使い始めました。実際、毎月数万円のコストで効果を得ることができました」
AWSがコスト削減に効果をもたらすことを実感した堀尾氏は、他のシステムについてもAWSへの移行を進めた。システム更改に合わせて新たなシステムパッケージを選定する際、AWSで開発しているベンダーに絞って選定したという。AWSで開発されたシステムなら、確実にAWSで動作するからだ。
各事業会社で必要な新システムも、システムインテグレーター(SIer)とともにAWSで開発していった。「カスタム機能をできる限り排除することで、SIerには事例として展開しやすいようにし、その分安くしてもらったりもしました」
開発者、ユーザー企業、AWSの三者で作り上げられるエコシステム自体が魅力的だと堀尾氏は評価する。何年もかけてクラウドに移行してきた中での実感だ。社外向けWebシステムもクラウドへ移行し、アクセス急増にも動じないWebサイトを構築できた。社内に残る他のシステムについても今後クラウド化していく。
「これまでは機器の寿命に合わせてシステム移行が繰り返されてきました。しかし、よく作り込まれたアプリケーションの寿命は、機器の寿命よりもずっと長いものです。クラウドなら機器の寿命にひきずられず、良いアプリケーションを長く使えます」と、堀尾氏はクラウドの魅力を語る。クラウド移行でシステム全体が安定して動作するようになり、インフラを運用管理する負荷が軽減できたため、IT部門の就業体制も変わったという。「今では有給休暇も消化できるようになりました」と話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
4
“アジャイルの壁”に挑むオリックス生命がIBMの開発管理ツールを選んだ理由
-
5
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
6
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
7
ライオンが挑む「守りのIT」脱却:Google Cloudで加速させるデータ駆動型経営
-
8
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
9
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
10
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー