コンタクトセンターを変える先進ユニファイドコミュニケーション【第1回】
コンタクトセンターをプロフィット部門へ変化させる社内連携
顧客接点の戦略拠点として、重要性を増すコンタクトセンター。だが企業の中で連携が取れず「孤立」するケースも多いという。運用が難しいコンタクトセンターをプロフィットセンターへと変えていく方法はあるのか。
ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)は、電話や電子メール、ビデオ、Web会議などのさまざまなコミュニケーションをメディアやデバイスに依存することなく統合し、オフィスに勤務する従業員の生産性向上するソリューションと考えられる。米調査会社のIDCは、コンタクトセンターをUCの一アプリケーションとして位置付けている。本連載では、コンタクトセンターにおけるUCの活用法や具体的なソリューションを紹介していく。
連載第1回目となる本稿では、コンタクトセンターの運営を任せられている立場の方なら誰でも抱えるさまざまな課題をUCでどのように解決できるのかを見ていこう。
「必要最低限」にならない人事配置やIT投資
「コンタクトセンター発祥地」ともいえる米国では、しばしば“Contact Center operation is not a science but art(コンタクトセンター運用は科学ではなくアートである)”といわれるほど、コンタクトセンターの運用は予測した通りに進まないとされている。リアルタイムに変化する顧客からの問い合わせの量を予測して、最小限と思われる人員配置をしても、実際には必要以上にコミュニケーターを配備してしまうことが頻繁に起こる。また、ITソリューションの整備に関しても、過剰投資になりがちだ。逆にコスト削減を優先させ過ぎると、入電が集中するいわゆるピーク時にコンタクトセンターが対応しきれないという、最悪な状態に陥ってしまうリスクもある。
このような多くのコンタクトセンターが抱えている、予測の難しさや人事的な課題点をITソリューションの有効活用で解消しようと考えると、「UC」というキーワードが浮かび上がってくる。
急速に変化する消費者のコミュニケーション
コンタクトセンターに問い合わせをする消費者のコミュニケーション手段は、数年前から飛躍的に変化している。いわゆる「マルチメディア」化はその代表的な変化だ。iPhoneやiPad、そして最近急速に普及しているAndroidベースのスマートフォンのように、通常の通話だけでなくビデオ/ストリーミングを扱え、SNS(ソーシャルネットワークサービス)の端末としても利用できるマルチメディアに対応する携帯端末は、もはや一部のいわゆるマニアックなビジネスユーザーのみが利用するデバイスではなくなっている。そして今後、スマートフォンによって一般消費者のマルチメディア化がさらに進むことになるだろう。急速に進むマルチメディア化をコンタクトセンターに取り込む上で、UCは有効な手段である。
また、コンタクトセンター運用コストの7、8割は人件費ともいわれ、中でもその大きな割合を占めるのがコミュニケーターの給料やトレーニング費用だ。従来の電話のみによる顧客からの問い合わせに対応するためのトレーニングに加えて、年々センターが導入しているシステムの利用方法などのトレーニングが多様化してきているため、トレーニングのコストやそれに費やす時間が増えている。ここでも例えば、優秀コミュニケーターの顧客対応を録画し、動画配信をするといったUCの活用が可能だ。
意外な課題? コミュニケーターの離職率
コンタクトセンターのコミュニケーターは、その98%以上が女性だといわれている。センターを運営する立場の人にとって、彼らの離職率の高さは死活問題にもつながる可能性がある。せっかく時間と費用を掛けて育成した優秀なコミュニケーターに離職されてしまうと、また一から新人を育成することとなってしまう。離職理由は、結婚、出産、夫の転勤、親の介護などさまざまである。例えば、1日数時間であれば家庭と仕事を両立してコミュニケーターの仕事を続けたいが、「定時出勤ができない」「夫の転勤先が勤務していたセンターから遠い」といったことなどが離職の主な原因になっているようだ。
実はこのような課題も、UCを活用した、在宅コンタクトセンターオペレーターなどの運用で解決することができる。インスタントメッセージ、ビデオ通話、電子メールなどのコミュニケーション手段をUCで統合すると、在宅コールセンターセンターやサテライトコンタクトセンターのコミュニケーターは通勤をすることなくセンター内業務に近い環境で顧客対応が可能になる。実際に、こうした仕組みを利用している企業があることに注目したい。
「離れ小島」になりがちなコンタクトセンター
次は、企業サイトやマーケティング活動におけるコンタクトセンターの課題例を幾つか挙げてみよう。
企業サイトと顧客応対の非連動
現在、自社のコーポレートサイトを持っていない企業はまずないといっても過言ではないだろう。また大企業であれば、連絡先に0120などのフリーダイヤルか電子メールアドレスいずれかを掲載していることが多い。
ところが、コンタクトセンターの現状の運用を見てみると、残念なことに企業サイトとコンタクトセンターが連動していないケースが多い。例えば、センターのコミュニケーターは電話による問い合わせのみを扱っていて、電子メールによる問い合わせについては把握していないことがある。これでは消費者が企業に異なるコミュニケーション手段で問い合わせる場合に、スムーズな対応ができるはずはない。同じ内容の問い合わせを電子メールと電話で繰り返してもいいと考える消費者はいないのだ。
消費者がWebサイトを閲覧しながら疑問に思う内容を電話で問い合わせるケースは多いが、例えば電話がつながったタイミングでコミュニケーターが自分の閲覧しているページを把握していたら、どんなに話が早いだろうか。こうしたインターネットとコンタクトセンターとの統合(ユニファイド)を可能にしてくれるのも、UCの1つのメリットなのである。
マーケティング活動におけるコンタクトセンターの課題
これまでコンタクトセンターでは、顧客からの問い合わせ、場合によっては苦情対応などの受動的な業務を担うケースが多かった。企業内でのいわゆる「コストセンター」的な位置付けである。しかし最近は、キャンペーンなどを利用して企業から顧客にアプローチする業務も増えている。これは「プロフィットセンター」的な位置付けだ。
しかしながら、コンタクトセンターのオペレーションは、他部署との連携が行われず、企業内で“離れ小島”的に運用されているケースが多い。せっかく顧客対応に優れたコンタクトセンターの人員を育成し、システムを構築していても、企業の売り上げに貢献できないのはもったいない話だ。そこでUCの仕組みを利用して、コンタクトセンターオペレーターと他部署を連携させると、コンタクトセンターの“離れ小島”状態を解消し、コンタクトセンターをプロフィットセンターに変えていくことが可能だ。
コンタクトセンターとオフィス内コミュニケーション
いかにコンタクトセンターのコミュニケーターを教育しても、顧客からの問い合わせすべてに迅速に対応できるようにすることは現実的ではない。質問内容が専門的になればなるほど、コンタクトセンター内のみの知識だけでは対応できなくなるからだ。
そうした専門的な質問に迅速に対応できる人材は、オフィス内にいることが多い。オフィス内で業務をしている専門家と顧客対応をしているコミュニケーターとのコミュニケーション手段をUCの利用でシームレスに統合できれば、従来はコンタクトセンターからの折り返し電話で対応していた専門的な問い合わせ内容でも、最初の通話で対応することが可能になる。
やみくもに人と人をつなげるのは無意味
マルチメディア化が進む現在、オフィスやコンタクトセンター内のマルチメディアコミュニケーションを、強引に連携(ユニファイド)することは技術的に可能だが、社員の業務効率の観点でいえばかえって逆効果になりかねない。例えば、コンタクトセンターオペレーターが顧客からの専門的な質問に回答するため、社内にいる専門家のスケジュールを把握しないまま、やみくもに問い合わせの通話を転送しても、その時点で専門家が対応できない可能性がある。自分がこれから連絡をする相手の状況をリアルタイムに把握することが重要だ。
ここでキーワードとなるのは、UCの最大メリットの1つであるプレゼンス(状態情報)管理だ。次回は、このプレゼンスの利用がコンタクトセンターにもたらす具体的なメリットを解説する。
平野 淳(ひらの あつし)
日本アバイア ソリューションマーケティング部長
1989年に渡米。1996年シリコンバレーのCRMソフトウェア会社にソフトウェア開発者として入社。その後M&Aを経て2001年アバイア設立当時から同社で勤務。2004年に日本アバイアへ移籍、帰国しAPACコンタクトセンター製品担当者に就任。CRM Demo & ConferenceやInteropなどで数多く公演している。
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