ユニファイドコミュニケーション(以下、UC)とは、電話や電子メール、プレゼンス、インスタントメッセージ、テレビ会議、Web会議などのさまざまなコミュニケーションツールの統合によりもたらされる、効率的なコミュニケーションのことである。一般にその導入効果は、乱立したコミュニケーションツールを統合し、情報の相互流通を迅速に行い、ユーザーの生産性を向上させることだとされている。しかし、コミュニケーションにかかわる課題は千差万別であり、UCを適用すべき範囲や組織は幅広い。つまり実際のところ、その導入効果を一口で言い表せるわけではない。
真に効果的なUCの導入を目指すのであれば、業務における課題とコミュニケーションのかかわり、ふさわしい適用範囲を正しく見極める必要がある。具体的に、どのような業務シーンでUCを活用すれば改善効果が得られるのか、あるいは、従業員のワークスタイルに合ったコミュニケーション手段やツールをいかに選択・提供すべきか、といった視点が必要だ。
以下に、企業が業務改善を進める手段としてUCを検討する上で、まず知っておくべきポイントを述べよう。
UCは現在、業務を円滑にするための工夫や仕組み、業務の悩みや課題を解決するための道具として利用するという現実的なフェーズに入ろうとしている。
その端的な例として、社内の協働作業や社内コミュニケーションの変化に合わせて、インスタントメッセージのようなコミュニケーションツールが活用されている。従来は自席にて業務を遂行することが多かったが、最近は場所を問わず協働して作業するようなワークスタイルが増えてきた。そのため、オフィスにはいるが、ほかのフロアや会議室で仕事をしているといったケースも珍しくない。そうした場合も、インスタントメッセージを利用すれば、自分のチームメンバーなどと相談するのにどこにいるのか探す必要がなくなる(図)。また、相手がどのような状態なのかを確認してから必要な連絡手段を選択できる。
同じ部署に所属しながらも、それぞれの働き方が違ってきている背景から、業務を円滑に進めるツールとしてUCが利用され始めているわけだ。
現在、大多数の企業はどんな形であれ、グループウェアを利用していると思われる。情報システム部門の管理者なら、グループウェアの導入時には「どのように利活用したら生産性が向上するのか」という点を検討した経験があることだろう。その結果、グループウェアの数ある機能のうち、自社の業務やビジネスプロセスに合ったものを利用しているはずだ。その名の通り、グループで利用されることを前提としたツールであるため、全社員が効果を一律に実感しやすい。
しかしUCにおいては、一様に効果が得られるとは言い切れないケースもある。なぜなら、ある業務課題の解決を狙いビジネスプロセスに組み込まれるという点ではグループウェアと同様でも、UCにはコミュニケーション文化や利用者のワークスタイルに大きくかかわってくる側面があるからである。UCの導入効果を最大限に得るには、自社のビジネススタイルを把握することも重要なのである。
UC黎明(れいめい)期の2000年前後、特にIP電話が普及した当時、企業の総務部門および情報システム部門の管理者は、企業統合、電話の運用コスト、レガシーシステムから新しい技術トレンドへの移行などを目指して順次導入を進めてきた。これまでは、管理者視点や企業のIT戦略に基づいた導入、またはPBXからのテクノジー移行による導入が多かったわけだ。
しかしながら、UCをIT戦略やビジネス戦略の一部として明確に位置付け、業務に組み込む形へとユーザー意識が変わってきている。筆者は最近、顧客からIT戦略、ビジネス戦略の中でUCを検討したいという相談をよく受ける。これには、2000年以降UC関連の技術革新によりさまざまなデバイスが出現し、その機能が向上してきた事情もある。企業や個人にとって選択できるコミュニケーションツールが多種多様となり、機能も豊富になったためだ。
こうした動きの中で重要な役割を占めるのは、企業や働く人にとって実践的な効果が得られるコミュニケーションツールを検討し設計する「コミュニケーションのデザイン」という考え方である。また、この考え方においては、企業内だけでなくビジネスにかかわる顧客やパートナーにもユーザーメリットが得られることが求められる。

企業が業務改善のためにUCを検討・導入する背景としては、従業員のワークスタイルの変化やビジネスプロセスの短縮化、企業の事業継続インフラの必要性などがある。こういった企業活動における変化に対応するコミュニケーション環境・基盤こそが求められていると筆者は考える。以降は、業務課題に基づくUCの適用や効果についてどのように分析していくか、概要を説明しよう。
UCによる業務改善を検討する場合、業務上改善が必要となる課題や、主となるコミュニケーションの改善個所を探し出すことが当然ながらポイントになる。現にコミュニケーションに課題を抱える組織や個人では、非効率に業務が遂行されているケースもある。その課題がどのようなコミュニケーションにおいて、誰と誰との間で発生しているかを把握すれば、おのずと解決策や改善策の適用個所を明確化できる。
では、実際にどの課題にUCを適用するのか? 例えば、「離れた事業所との連絡手段の効率化」や「社外にいる営業社員との効率的なコミュニケーション」「社外パートナーとの連絡手段の改善」など、コミュニケーションにかかわる課題は決して少なくない。表1に業務課題の例と改善から得られるであろう結果を示した。
| 業務課題例 | 得られる結果 |
|---|---|
| 社内での電話取り次ぎが多い | 業務効率化 |
| 外出している社員との連絡が取りづらい | |
| 電話連絡しても不在で連絡が取れない | |
| 別オフィスとの会議手段が欲しい | |
| 移動・出張コストが多い | コスト削減 |
| 会議資料(印刷物)が多い | |
| 顧客とのコミュニケーションロスが多い | 顧客対応改善 |
| オフィス外で仕事ができない | 在宅勤務支援 |
| 災害・新型インフルエンザに見舞われた場合、業務が停止する | 事業継続 |
表1の例から、業務課題によって得られる効果が変わってくることがお分かりいただけると思う。このような業務課題のうち、どの項目が働く従業員の生産性向上につながるか、優先順位付けを行うことにより、改善活動が決まってくる。何を優先して改善活動を実行していくかは、企業が置かれているビジネス環境によって変わる。業務課題の洗い出しは、UCを導入する方向性や方針を見えやすくする。実際にUCを導入し、効用を得ている企業は、業務改善の側面から導入を検討、推進したというケースが多い。
もし「業務課題だけを見てもコミュニケーション上の課題など見いだせない」と思うのであれば、視点を変えて企業内でコミュニケーションが生じる場面ごとに問題を考えるといいだろう。その上でもう一度、業務分析に戻ってみることもできる。そこで、日々のコミュニケーション場面ごとに改善すべき項目の例を表2に示した。従業員がどのようなコミュニケーション形態を取っているケースが多いのかを踏まえた上で、効率化などさらに改善できる内容の検討が可能になる。
| 適用個所 | 改善すべきこと |
|---|---|
| 社内 | ・社内の電話取り次ぎが多い ・会議資料(印刷物)が多い |
| 部門間 | ・部門間でコミュニケーションロスが多い |
| 拠点間 | ・拠点間でコミュニケーションロスが多い ・移動/出張コストが多い |
| 外出時 | ・外勤職向けコミュニケーション手段がない |
| 在宅勤務 | ・オフィス外で仕事ができない ・遠隔会議の手段が少ない |
| 海外 | ・海外拠点との会議手段が電話のみ |
| 幹部・経営者 | ・意思決定の迅速化 |
また、これらの例以外にも、対顧客や対パートナーといった企業外コミュニケーションにかかわる課題ももちろん存在する。優先して対処・改善していく課題は、企業活動の重要度や改善する項目の生産性向上度合いによって判断しよう。
課題と必要なコミュニケーションツールを整理できたら、次は実際のワークスタイルを例に解決策を考える。
UCを適用する場合に重要な要素となるのが、従業員のワークスタイルである。これは、職種や業務内容によって大きく異なる。そのため、仮に同じコミュニケーションデバイスを付与しても、利用率や業務効率性に大きな差が出てしまう。過去にUCを導入した企業において、従業員に対して一律にコミュニケーションツールを付与するのがコミュニケーションプロセスやビジネスプロセスの改善につながると考えられていたこともあった。しかし、従業員に統一のコミュニケーションツールを提供しても、業務で必要とされる頻度が少ない、または付与されたコミュニケーションツールが機能的にその従業員の業務ニーズを満たしていないなどということが起こっていたのだ。生産性向上を図る従業員のワークスタイルによっても、採用すべきコミュニケーション手段や導入ソリューションは異なるのである。
こうしたことから、従業員のワークスタイルに適合したコミュニケーションツールの付与が重要となる。表3に、電話取り次ぎに関する課題を例として、ワークスタイル別に最適とされる解決方法とそれを実現するツールを示す。
| 業務タイプ | 在席型(自席での執務) | 社内モバイル系(社内での移動型) | モバイル系(外出が多い) | 在宅勤務 |
|---|---|---|---|---|
| 部門・職種 | 総務・経理職 | 管理職/経営企画部門/エンジニア職 | 営業職/エンジニア職 | エンジニア職/管理部門 |
| 課題 | ・自席にいないときに連絡が取れない | ・会議室にいるが連絡が取れない ・内線電話では連絡が取れない |
・社内と必要なメンバーに連絡が取りづらい ・自宅や出先でも会議できる仕組みが欲しい |
・業務をいつ行っているのか把握できない ・連絡が取りづらい |
| 解決策 | 連絡してくる相手が状況を見て判断 | 社内にどこにいても連絡が可能な手段 | 社外にいても連絡が取りやすい手段 | 自宅で執務してもコミュニケーションがしやすい手段 |
| ツール | ・固定電話 ・ビデオ会議 ・Web会議 |
・携帯電話 ・インスタントメッセージ ・Web会議 ・ビデオ会議 ・フリーアドレス |
・携帯電話 ・インスタントメッセージ ・Web会議 ・ビデオ会議 ・フリーアドレス ・VPN/モバイルデータ通信カード |
・携帯電話 ・インスタントメッセージ ・Web会議 ・ビデオ会議 |
ここまで、業務改善に着眼したUC導入の検討の仕方を説明してきた。では、実際の業務改善型のUCソリューション像は何かというと、一様に示せるものではない。その企業が抱える課題により、選択するソリューションも変わるからである。企業によってコミュニケーションの方法や従業員の使い方、利用するビジネスシーンは異なるので、たとえ同様のシステムを導入しても、ツールの利用法や効果はそれぞれで違うはずだ。
業務改善型UCの具体像を探るためにも、前述した内容を踏まえて、自社の業務上のコミュニケーションの行われ方とその課題を正しく認識し、適切なゴールを設定しなければならない。本連載では今後、UC導入を検討している情報システム部門の管理者やユーザー部門の担当者に向けて、UCがどのように業務課題を解決できるのか、UCを導入した企業の利用シーンを例に紹介する予定である。
次回は「外出している社員にもっと簡単に連絡が取れないか」といった、日常業務にありがちなコミュニケーションの課題を題材にして、UCによる実践的なソリューション像を明らかにする。
国内システムイングレーター、外資系ネットワークインテグレーターを経てネットマークスに入社。2007年よりUCの技術評価および営業支援業務を担当。Cisco Systems、Microsoft、TANDBERGなどのマルチベンダーUC連携ソリューションの開発および技術支援業務にも従事している。