Microsoftの未来がかかっている
AWSを追いかけるAzure、ただ今導入企業が週1万社ペースで急増中
米Microsoftによるハイブリッドクラウドの推進が功を奏し、Windowsを利用している企業の間で「Microsoft Azure」の導入が進んでいる。だが、Azureの全ての顧客がこのクラウドプラットフォームを十分に活用しているわけではない。
米Microsoftが5年前にAzureをリリースしたとき、多くの企業のIT部門がそのメリットに懐疑的だった。当時、IaaS(Infrastructure as a Service)に重点を置き、豊富なWebサービスを提供していた米Amazon.comの「Amazon Web Services(AWS)」とは異なり、AzureはPaaS(Platform as a Service)で、その提供サービスは乏しかった。
「AzureはIT部門にとって分かりにくかった。多くのリファクタリング作業を行うことなく、簡単にオンプレミスアプリをAzureに移行することはできなかった。IaaSを提供し、移行支援戦略も打ち出していたAWSを導入する方が、はるかに理にかなっていた」と、米コンサルティング会社Directions on Microsoftのアナリスト、ロブ・サンフィリポ氏は語る。しかし、Microsoftは昔から後追いを得意としている。
企業のハイブリッド戦略に合わせたサービス展開が成長の鍵
この数年、MicrosoftはAzureをIaaSで拡充し、他のプラットフォームへの対応を進めたと、サンフィリポ氏は指摘する。同社はAmazonのアプローチを模倣し、Azure仮想マシンなど幾つかのIaaSサービスを投入した。
のみならず、Microsoftは異例にも、Windows ServerおよびLinuxに対応する主要インフラサービスの提供に乗り出した。IT部門がワークロードをオープンソースのWebサーバ「Apache」に移行する動きが広がっているという認識からだ。
さらに、Windowsの顧客がローカルサーバのアプリケーションとクラウドのアプリケーションを円滑に連係できるようにするMicrosoftのハイブリッド戦略も、同社のクラウドプラットフォームの採用を後押ししている。Microsoftは、このアプローチは顧客から好評で、Azureは毎週約1万件の新規サブスクリプションが追加されていると述べている。
「多くの顧客はもともとWindows ServerやSystem Center 2012、SQL Serverなど、われわれのオンプレミスインフラ製品を使っている。そこでわれわれはクラウドで、こうした顧客が独自の環境で運用できる同じ一貫したプラットフォームを提供している。顧客にクラウドに合わせてもらうのではなく、クラウドを顧客に合わせるわけだ」と、Microsoftのクラウドツール部門担当ゼネラルマネジャーを務めるマイク・シュッツ氏は説明する。
このアプローチのおかげで、IT部門は自らのペースでAzureの導入を進めることができ、最終的な導入目標が基幹アプリケーションの一部をクラウドに移行することであれば、特にこの恩恵を受ける。
ユーザーにとってハイブリッド戦略には「クラウドにコミットしなくても、クラウドを試せる」という利点があると、米メーカー企業のIT担当者は語る。「このため、何をクラウドで運用するのが理にかなっているか、何をオンプレミスに置いておくべきかを、まず見極めることができる。またハイブリッド戦略は、部門単位で徐々にクラウドに移行するのにも役立つ」
Azureの導入実績の裏側
ここ1~2年、Azureの導入が急速に進んでいることを示すデータを詳しく見てみると、Azureを「導入済み」としてカウントされているユーザーアカウントの多くは、まだ評価段階かテスト段階にとどまっていると、Microsoftに近い情報筋は述べている。導入実績の数字は、Azureの本番環境での利用状況を必ずしも反映しているわけではない。
「私の定義では、『導入』には重要なワークロードがAzureに展開されていることが含まれる。だが、大口アカウントでも、契約しているのに遊休状態になっているAzureのリソースが膨大なことは確かだ」と、Microsoftの社内オペレーションに詳しい情報筋は語る。
では、Azureの本格的な利用が伸び悩んでいる理由は何か。利用の1つのネックは、Azureの主要機能を活用できるように全ての企業インフラに適切なセットアップや調整が施されているとは限らないことだ。
同情報筋はこう語る。「多くの場合、ユーザーはAzureを扱うようにセットアップされていない環境の上にレイヤーを重ねる形でAzureを使おうとしている。これでは、Microsoftのハイブリッドクラウドアプローチが台無しだ。そうなると、問題が解決されるまで、導入プロジェクトを放置してしまう組織もある」
それでも、IT部門は、長期のエンタープライズ契約で取得されたが、使われていないAzureライセンスがあることを明確に認識している。この契約も導入実績をかさ上げしているとの見方もある。Microsoftは大口顧客に契約の一環として、1ユーザー当たり月額最大150ドル分のAzure利用権を提供している。
「契約したのに使っていないAzureの利用枠を持っているユーザーがたくさんいる。しかし、ようやく多くのIT部門が、支払っている料金の元を取らなければならないと考えるようになってきていると思う。これに伴って導入が本格的に進むだろう」(サンフィリポ氏)
Azureはどこに向かうのか
Microsoftはハイブリッド戦略を強化するため、クラウドベースのアプリケーションやサービスの投入を着実に継続している。近年にリリースされたクラウドベースサービスの中でも特に注目されるものとして、「Azure Active Directory」と「Azure SQL Database」が挙げられる。いずれも企業ユーザーに広く普及している。既存のオンプレミス版との機能の同期が実現されており、オンプレミス(自社運用)とオフプレミス(社外運用)を組み合わせることが容易だからだ。
「われわれはオンプレミスのActive Directoryに重要な機能を依存している。セキュリティと認証がその最たるものだ」と、米大手運送会社のネットワーク管理者は語る。「このため、クラウド版のActive Directoryを使うに当たっては、両者を透過的に利用できることが必要だった」(同氏)
一方、Azure SQL Databaseは、「Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)」と競合するクラウドベースのリレーショナルデータベースサービスだ。このサービスでは、ユーザーは保存データに対してリレーショナルクエリを実行できる。このサービスはスケーラビリティ、事業継続性、データ保護の向上に役立つ。
MicrosoftはAzureでハイブリッドITサービスを提供しているが、さらなる新機軸を打ち出そうとしているようだ。2015年初めにリリースした「Azure Machine Learning」は、機械学習ソリューションの構築、展開に伴う大きな負担を軽減することを目指したクラウド技術だ。このサービスにより、データサイエンスのワークフローからアナリティクスWebサービスをほんの数分で構築できる。
「Microsoftの未来がAzureにあるのは明らかだ」と、米コンサルティング会社Interarbor Solutionsの社長兼主席アナリスト、ダナ・ガードナー氏は語る。「Microsoftとしては、ユーザーがAzureアプリケーションをクラウドで簡単に開発、展開できるようにするとともに、下位互換性を完全に維持する必要がある。Windowsを使っている企業にAzureも使ってもらうためには、そうするのがベストだ」
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