校務処理時間の大幅削減を達成
先生の仕事を年160時間分削減、大阪市「校務クラウド」の実力とは?(1/2 ページ)
大阪市教育委員会が導入したプライベートクラウドによる校務支援サービスは、教員1人当たりが校務に費やす時間を年168時間も削減した。その中身とは?
大阪市教育委員会は2014年度から、同市立小中学校全428校、約1万4000人の教職員を対象に、校務システムをプライベートクラウドで構築・運用する「校務支援サービス」を本格稼働させている。ITの活用で教員の校務時間を減らし、児童・生徒と向き合う時間を増やす狙いだ。
2013年度には、大阪市立の小中学校31校で校務支援サービスの試験導入を開始。同市教委は2014年8月にその成果報告を発表した。校務支援サービスを導入した結果、校務処理に費やす時間を教員1人当たり年約160時間の削減に成功したという。
こうした大阪市教委の取り組みは、全国の自治体からも注目を集めている。2015年5月20日から3日間、東京ビッグサイトで開催された「教育ITソリューション2015」(EDIX)では、同市の取り組みに関する専門セミナーを開催。聴衆の関心を集めた(写真1)。専門セミナーは「『教員の時間を1日42分創出』大阪市のとりくみ~導入・運用・サポート 着実な展開とPDCAサイクル~』と題し、大阪市教育委員会事務局 学校経営管理センター 給与・システム 担当課長 山本圭作氏が登壇した。
大阪市教委が導入した校務支援サービスの特徴は何か。今後の展望や課題とは。山本氏の講演の内容を基にリポートする。
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校務支援サービスの中身
大阪市教委の校務支援サービスは、2012年度に構築事業者としてNEC、中核システムとして教育系システム開発のEDUCOMが販売する「EDUCOMマネージャーC4」を選定し、構築が進められた(図1)。校務支援サービスの特徴として山本氏が説明するのは、「統合コールセンター」「テレワーク(遠隔利用)」の2点だ。
1つ目の統合コールセンターは、クライアントPCやプリンタ、スキャナなどの機器操作、システム操作に関する問い合わせに加え、トラブルシューティング、故障診断などに応じる。8時~18時まで利用可能で、リモートで画面を共有しながらオペレーターからのアドバイスを受けることができる。
2つ目のテレワークでは、自宅のクライアントPCから校務支援サービスへ安全にアクセスできるようにして、自宅での校務を可能にした。校務支援サービスの利用には、クライアントPCにUSBメモリ型の認証キーを差し込む必要がある。認証キーを差し込んだ端末は、端末のHDDやインターネット、周辺機器などの利用が一切できないように機能制限が掛かる仕組みだ。端末には最新のウイルス対策ソフトをインストールしている必要がある。
山本氏はテレワークの導入背景について、教員が持ち帰り作業をする際のセキュリティ強化を挙げる。加えて、「教職員の働き方も、選択肢を増やして多様化していかなければ、介護や子育てなどの制約からワークライフバランスと合わなくなる」と同氏は指摘。教員の働き方を整える環境整備の重要性が、校務支援サービスの導入を後押しした形だ。
転記作業を無くす設計思想「ワンソース・ワンマスタ」
大阪市教委は、校務支援サービス導入に当たってKPI(重要業績評価指標)を設定し、教員1人当たりの校務削減時間を年100時間と定めた。校務時間削減の目玉となるのが、紙をベースにした校務作業の見直しだ。紙ベースの校務では、書き直しや転記、誤記、計算ミスなどを招き、重複作業も多い。膨大な紙の扱いも負担になる。こうした課題を解消すべく、大阪市教委が取った校務支援サービスの設計思想が「ワンソース・ワンマスタ」である。
ワンソース・ワンマスタは、同じ内容のデータベースを複数持たず、1つのマスターデータを修正すれば、関係するシステム全てに修正が反映されるようにする設計思想だ。これにより、同じデータであれば入力作業は一度だけにして、転記作業を不要にした(図2、3)。また成績処理に関しては、通知表を小学校2種類、中学校1種類に統一するなどの改訂も実施している。
校務支援サービスと併せてグループウェアも導入し、メールや連絡掲示板、会議室、書庫による情報展開/共有を図った。また職員の朝礼や職員会議の開催回数を減らしたり、会議時間を短縮化するなど業務の細部にもメスを入れた。
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