最も注意すべきはデータプライバシー
あなたの情報を集める“スマート家電”、ベンダーが陥る罠とは?
IoT(モノのインターネット)に接続する機器を視聴に投入したい企業は目先のビジネスチャンスに目がくらんで、簡単なトラップにあっさりとかかったりする。そんなみじめなことにならない3つのポイントを確認する。
スマート家電市場が急成長し、ベンダーやサービス事業者に新しい大きなビジネスチャンスをもたらしている。だが、2016年2月に米国で開催したカンファレンス「IoT Data Analytics & Visualization」で講演した専門家は、「企業はこの新興市場を開拓する上で、よくある落とし穴を避けなければならない」と警告した。
企業が最も注意すべきことの1つとして、データプライバシーがある。ホームセキュリティを扱うADTで行政対応担当副社長兼最高プライバシー責任者のポール・プロフチャン氏は、顧客データを分析するときは透明性を確保することが重要だと語った。
顧客の立場に立つ
ADTは現在、同社のホームセキュリティで利用できる多数のスマート家電を手掛けている。ユーザーはリモートでドアのカギを開けるだけでなく、照明の点灯、防犯カメラ映像の確認などができる。IoTに接続したこれらの機器に関連するタスクは、自動化も可能だ。
こうしたタスクにおいては必然的に、ADTがユーザーに代わって扱いがデリケートな個人情報を保持する必要がある。プロフチャン氏は、「そのためにADTとしては、誠意をもって行動し、ADTがどのようにデータを扱うかをユーザーが理解する手助けも重要になる」と述べている。
こうしたタスクにおいては必然的に、ユーザーに代わってADTが個人情報を保持することになる。プロフチャン氏は、「ADTは、誠意をもって行動し、ADTがどのようにデータを扱うかをユーザーが理解するために手助けすることが重要になる」と述べた。同氏の指示によってADTはプライバシーポリシーを改定し、ADTがサードパーティーとデータを共有しないことを明記する措置を講じた。
「ADTは、ポリシーで、『ユーザーのデータを販売することはありません』という明確な方針を掲げている」(プロフチャン氏)
また、ADTは販売やマーケティングで多くのデータ分析も事業として展開している。例えば、新規顧客を特定のニーズに基づいて商品と結び付けるアルゴリズムを持っている。さらに、顧客が導入したセキュリティシステムの種類に応じて、契約している住宅保険会社から保険料の割引を受ける機会も調査している。
プロフチャン氏によると、こうした顧客データの活用は市場から一定の支持を受けているという。それは、ADTは個人のデータを、既存ユーザーの匿名化したデータセットと比べているため、個人を特定できる情報の漏えいリスクがほとんどないからだ。さらに、こうした顧客データの活用はユーザーに対しても付加価値を提供する。
ユーザーに価値を理解してもらう
個人データの提供を要求するスマート家電をユーザーに受け入れてもらうために最も効果的なのは、スマート家電の価値をユーザーに向けて明確にすることだと、Belkin Internationalで製品担当副社長を務めるピーター・テイラー氏は主張する。同社はホームオートメーション分野への進出に注力しており、この分野で提供している製品にはスマート照明スイッチやスマートコンセント、スマート防犯カメラなどがある。これらの製品は一般的に、使用状況に関するデータをBelkinに報告するが、同社がこうした製品の投入を進める中で、プロダクトデザイナーはプライバシーに関するユーザーの幅広い好みへの配慮に努めている。
テイラー氏は、「例えば、アーリーアダプターは新しい製品で何ができるかに興味津々であるため、個人情報の提供に応じる傾向が高いだろう」と語った。だが、一般的な多くのユーザーは、個人情報の提供に慎重かもしれない。データの収集と分析が製品の機能の向上や、ユーザーがストレスを感じる問題の解決につながることを証明すれば、個人情報の提供に消極的なユーザーも考えを変えるかもしれない。
Belkinは現在、ユーザーがスマート家電をどのように使っているかを分析し、顧客が製品の機能を効果的に利用していない場合は電子メールで知らせている。これは一部のユーザーからプライバシーの侵害と思われる可能性もあるが、大多数のユーザーは、こうしたアドバイスを受けてスマート家電を最大限有効に活用することに価値を見いだしていると、テイラー氏は説明した。
「この取り組みは、各製品でできることをユーザーが利用できるようにすることが目的だ。全体的な行動パターンを分析することに関して、ユーザーは特に不快と思っていない」(テイラー氏)
いつでもどこでも、名前を売ろうとはしない
パナソニックでは、多様な分野でさまざまなスマート家電を提供する中で、目立たないようにすることを重視していると、同社製品戦略・イノベーション担当エグゼクティブディレクターのハカン・コストペン氏は説明している。
同氏とそのチームは、多くのユーザーが利用する製品やサービスを提供するAppleやGoogleがやってしまった幾つかの失敗から、「ユーザーは、有名企業が自分たちの全てのデータを一手に収集することを好まない」と認識している。ユーザーは、自分の電子メールや聴く音楽、Web閲覧に関するデータを同一企業が収集、分析すると不愉快になるという。
そこでパナソニックは、機内エンターテインメントシステムやコネクテッドカー向けエレクトロニクス機器(インフォテインメントおよびディスプレイシステムなど)に注力するとともに、あまり目立たない存在であろうとしている。
コストペン氏は、顧客にとって重要なのは、幅広い利用場面でどのような機器やサービスを利用できるかであって、ディスプレイやIoT機器を提供する企業のブランドではないと述べる。パナソニックは、こうした機器からデータを収集して取りまとめ、ユーザーがそれらの機器をどのように使っているかを分析できる一方で、生活の多くの分野に立ち入ってユーザーがうっとうしく感じてしまう存在になることを回避できているという。
「すべてに四六時中つながるブランドを好きになる人はいない」(コストペン氏)
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