事例で学ぶBI活用のアイデア【第8回】
BIで生産活動情報を見える化、カイゼンに生かした製造業事例
間接部門の業務改善活動を支援する集計分析システムをBIツールで構築。作業日報の集計・作成所要時間を約70%削減した製造業のBI活用事例を紹介する。
ビジネスインテリジェンス(BI)を積極的に活用している業種と聞くと、どの業種を思い浮かべるだろうか。真っ先に思い浮かぶのが、POSデータなどの売り上げデータを活用する小売、流通業での事例だろう。本連載でも「BIによるPOS分析でタイムリーな売れ筋把握を実現した小売業事例」で流通業におけるBI活用事例を紹介した。
一方で、製造業にもBIを積極的に導入している企業は多く存在する。小売、流通業では、「売り上げにどのようにつなげていくか」といった使われ方が多いのに対して、製造業では部品在庫削減、生産活動にかかわる付帯作業(工数分析や品質分析)の効率化など、コスト削減にBIを活用しているケースが多いようだ。そこで今回は、業務改善活動の中でBIツールをうまく活用している製造業の事例を紹介する。
生産現場に定着した改善活動
事例企業プロファイル
業種
- 製造業
企業規模・業種内容の参考データ
- 事務機器の開発設計・生産、リサイクル事業
- 従業員数約420人
今回紹介するBI活用企業は、広幅のデジタル複写機、広幅高速プロッター、ファクシミリなど、OA機器の設計・開発から製造、回収、リサイクルに至るまで一貫した事業を展開する製造業企業だ。同社で現在注力している取り組みの1つが、回収・リサイクルの分野で、1994年にはリサイクル専門工場の操業を開始している。工場では老若男女誰もが作業できる標準化された仕組みで作業効率の向上を図り、さらなる生産性向上を実現するための改善活動も日々推進している。
同社の生産性向上の取り組みは改善活動として1998年にスタートした。生産現場から挙げられる改善アイデアは月700件に上るという。10年以上経過した現在では生産現場を可視化する活動として定着しており、「品質、コスト、納期」(QCD:Quality, Cost, Delivery)の最適化と、生産現場の「ムリ・ムダ・ムラ」から正常・異常が見える仕組みとして、大きな効果をもたらしているという。
課題は間接部門の業務改善。効率化にはIT活用が有効に
一方、同社における間接部門の業務改善活動に関しては、幾度も失敗を繰り返している状況があった。間接部門の業務改善活動は、全社横断的に業務を横ぐしで捉えて改善を実施しなければ狙った効果は得られない。そのため、まずは間接部門の業務の現状を調査し、各個人の業務プロセスのアウトプット/インプットを可視化する必要があった。そして、無駄の洗い出しと排除によるスリム化を実施した後、ITを活用するという計画を立案した。
その業務改善計画に基づき2006年秋から1年間かけて、間接部門にかかわる社員全員からそれぞれの業務プロセスに対する「目的」や「頻度」「作業時間」「インプット情報」「アウトプット情報」などの聞き取り調査を実施した。その結果、定型業務が8割以上を占めるにもかかわらず、毎回データを手作業で編集加工している場合が多く、使用しているアプリケーションも複数あることが判明した。
例えば、生産現場の作業日報の作成では、チームリーダーごとに時間のかけ方や集計方法に独自のノウハウがあり、同じ作業であるにもかかわらず集計結果やかかる時間にバラツキがあるという課題があった。また、ライン終業後に作業日報を作成するため残業時間が増えてしまう。また各ラインの作業日報は月末に集計していたため、全ラインの結果を翌月まで把握できないという課題を抱えていた。これらの調査で洗い出した間接部門のさまざまな課題を解決するために、2007年8月から「集計分析システムの開発」がスタートした。
生産現場と間接業務にかかわる情報の共有化を実現
この集計分析システムでは、工場内で最初に入力されたデータ(1回目の入力データ)を全社活用する情報として共有化することで、重複入力を撤廃するとともに、1クリックの簡単操作で誰でも必要なときに必要な情報を集計・分析できる仕組みを目指した。その中核技術としてBIツールが採用された。
2008年初めに本格稼働した集計分析システムは、Web画面から入力されたライン作業日報と、基幹システムから抽出された生産管理、購買、経理、人事などのデータを集計し、BIサーバに蓄積される仕組みとなっている。蓄積されたデータはBIツールでグラフ化したり、Microsoft Excelにダウンロードしたりして活用できるようになった。
また、生産現場と間接業務にかかわる情報の共有化を実現することで、品質管理や日々の出来高、ラインの人員構成情報など、生産活動に関するあらゆる情報を見える化できるようになった。例えば、ライン作業日報を入力すると、当日までの生産予算実績(工数情報)やライン別能率、ライン別出勤率推移などのグラフにデータが即座に反映される。また、グラフの値をクリックすると詳細な情報にドリルダウンできる。それらの情報は生産現場のラインサイドに設置されている大型モニターにも表示されており、生産ラインの直接作業者でも状況をリアルタイムに把握できるようにしている。
作業日報業務の大幅削減を実現
同社では、BIツールを利用した集計分析システムの構築でさまざまな業務効率化を実現している。月末に手作業で行っていた作業日報の集計自動化をはじめ、全ライン合計で月間238時間かかっていた作業日報に関する業務時間を70時間に短縮している。結果的に、作業日報業務に関する複数人分の人員削減効果も得られたという。また残業時間も大幅に削減できたことで光熱費も低減され、エコ活動にもつながっている。さらに、現在では経費予算とも連動し、管理職向けの経費予算実績の見える化を実現しており、結果的にコスト意識の向上にも貢献しているという。
今回は製造業の間接部門における改善活動でのBIツールの活用事例を紹介した。製造業でのBI活用のヒントとしてぜひ参考にしてほしい。工場のラインサイドでの大型モニターによる可視化は製造業ならではの工夫だが、間接業務は製造業だけでなく全ての業種共通であり、他業種の方にも参考になると思う。
小島 薫
ウイングアーク テクノロジーズ株式会社 BIサポート本部 本部長
1stホールディングス株式会社 BI事業部 事業部長
石川県出身 1959年生まれ。製造業でのシステム構築、経営企画などに従事した後に、独立系パッケージベンダーに入社。汎用機からオープンシステムまでの基幹系データベースを中心に、データウェアハウス(DWH)、XML関連のサポート、プリセールス、コンサルティング、マーケティングを経験。2005年にウイングアーク テクノロジーズに入社し、技術部門、マーケティング部門、製品戦略部門の部門長を経て、国内外を含めた製品戦略に携り、現職に至る。
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