BI導入事例:SAS Marketing Automation
【事例】オリコカードのBIによる顧客管理基盤刷新の狙いとは
オリエントコーポレーションは、クレジットキャンペーン業務の改善と与信精度の向上を目的としたシステム更改に「SAS Marketing Automation」を活用。業務負担を大きく改善しつつある。
オリエントコーポレーションが取り組んだ2つのプロジェクト
オリコカードをブランドに持つオリエントコーポレーションは、1954年の創業以来、個品割賦(個別クレジット)やオートローン、クレジットカード、金融機関の保証業務をコア事業として成長し、近年はEC決済ソリューションやリースなど事業を拡大している。2011年3月31日現在のクレジットカード会員数は1257万人、取扱量は1兆4858億円、銀行保証残高9308億円、加盟店舗数は90万店に及ぶ。
同社の情報系システムでのビジネスインテリジェンス(BI)活用の歴史は長く、SAS製品では「Base SAS Software」「SAS Enterprise Guide」「SAS Enterprise Miner」などを導入してきた。そして2011年11月、マーケティングプロセスをサポートする「SAS Marketing Automation」を活用して、「キャンペーン業務支援機能の新規構築」と「途上与信システムの更改」という2つのプロジェクトを行った。
プロジェクト開始から半年を過ぎた2012年5月24日、SAS Institute Japanが開催した「SAS Forum Japan 2012」で、オリエントコーポレーション システムグループ システム企画部 部長代理の岡本俊一氏がその取り組みの経緯と現状の効果について報告した(関連記事:【事例】なぜアムウェイ商品は売れるのか? 同社の顧客分析基盤に迫る)。
「運用開始から半年を経て、利用部門からは『結構使える』という評価や『もっと活用を推進したい』という意見の他、システム改善の要望なども寄せられている」(岡本氏)
キャンペーン履歴や反応結果などの一元管理に課題
クレジットカードやローンカードの利用促進と会員獲得、個別クレジットや融資商品の契約獲得などを目的に実施する各種キャンペーン。その業務は、請求書やWebを介して広範囲にエントリーを募る「オープンキャンペーン」と、有望な顧客を抽出して電子メールやテレマーケティングなどでアプローチする「クローズドキャンペーン」とに大別される。同社はキャンペーン業務でどのような課題を抱えていたのだろうか。
まず、キャンペーンの効果検証のためには、情報系データベース以外のデータ(業務システムの一部)の活用が必要だった。そのため、開発側への個別依頼や担当者自身でのデータ加工が行われており、時間と手間が大幅に掛かっていた。また、キャンペーン実行に伴う一連の作業(対象顧客抽出作業やコンタクトポリシーによる除外適用、チャネル連携)も自動化されておらず、全て手作業のため担当者の負担が大きく、キャンペーン実施可能数に制約があった。
一方で、複雑なキャンペーンに際して精緻に体系化されたシナリオを運用する場合は、キャンペーン履歴や反応結果などの一元管理が不可欠だ。しかし高度なデータ加工や抽出が必要な場合は専門部署に依頼しなければならず、また同じキャンペーンでも実行チャネルが異なると別管理となるため、実行に多大な時間と負荷がかかっていた。
さらには、多数のキャンペーンを実施する中で、問い合わせ窓口と各商品所管部でキャンペーン内容の一元化と情報共有ができていないことも大きな課題だった。そのため、問い合わせに迅速に対応できないことによる顧客満足度の低下や、社内調査に時間を取られることなどを問題視していた。
これらの課題を解決するために、新規に構築するキャンペーン業務支援機能には以下2つの目標を掲げたという。
- キャンペーンの量(実施数)と質(精度)の大幅な向上
- 会員からの問い合わせに対する業務負荷軽減と顧客満足度の向上
頭と身体をつなぐ神経の一部としてのSAS Marketing Automation
途上与信とは、既存顧客の利用状況や信用状態の変化に対し、収益とリスクのバランス、改正貸金や改正割販などの法対応を踏まえた適切な信用供与を判断する業務だ。クレジットカードやローンカードの限度枠や適用金利について、一定期間、または随時判定を実施する他、提携先金融機関に対する更新可能調査や極度額判定を調査する。
同社の各商品所管部と与信部では、途上与信システムでそれらの業務を行っている。しかし、与信ルール検討や作成時にデータ加工処理を伴う新たな項目が必要になる場合、開発側にデータの抽出・格納・加工・パッケージへの連携などを依存しなければならず、工数や期間の増大が問題になっていた。
一方、基幹系システムの更改が近々予定されており、周辺システム環境変化に伴う改変の柔軟性も求められていた。基幹システムがメインフレームからIAサーバベースに変更されることで、DWHアプライアンスに対応したBIが必要だったという。
こうした背景から、途上与信システム更改では以下3つの目標を掲げた。
- 与信精度の向上と与信基準見直しの柔軟性向上
- 周辺システム環境変化に伴う改変の柔軟性
- システム経費の削減
「ユーザーインタフェースが重要な要素の1つとなるため、システムの選定はシステム企画部だけで検討せず、各利用部門と共同で行った」。そう語る岡本氏は、SAS Marketing Automationの選定理由について以下を挙げる。
- データハンドリング機能によるEUC(エンドユーザーコンピューティング)環境の実現
- 基本機能の操作性の他、精緻な設定、キャンペーン管理データ体系の実現
- キャンペーン業務支援機能と途上与信機能を同一パッケージで実現
また、キャンペーン業務支援機能と途上与信機能をSAS Marketing Automationで整備する背景には、システム基盤全体の強化を図る目的もあったという。
「頭脳である情報系システムと、身体である業務系システム、あるいは顧客接点チャネル系システムとが分断している状態を改善する必要があった。頭からの命令を身体に伝達し制御する神経機能の一部をSAS Marketing Automationで整備し、ユーザー部門が顧客に対してどう判断し、どうアクションするかが分かる、バッチ処理系ビジネスロジック制御システムを実現したかった」(岡本氏)
SAS Marketing Automationの各機能を最大限に活用
システム構築プロジェクトは2010年12月にスタート。同社はEUC環境を意識的に構築し、改修依頼などの開発側への依存度を段階的に低減させるとともに、既存の情報系システム環境を有効活用しながらSAS Marketing Automationの各種機能を最大限に活用している。
キャンペーン業務支援機能では、キャンペーンの企画・分析、キャンペーン対象者抽出、コンタクトポリシー除外・チャネル連携、キャンペーン履歴・反応結果管理、キャンペーン効果検証といったレイヤーごとにSAS Marketing Automationの各機能を配置。
情報系データウェアハウス(DWH)と連携しながらキャンペーンデータを一元管理し、データ抽出や加工業務の負荷を軽減するとともに、複雑なキャンペーン実行時もデータ加工処理(スコアセグメント、中間ファイル作成など)を容易にしている。
また、キャンペーン情報の登録・変更・承認の他、キャンペーン対象者の抽出条件の登録・変更、チャネル連携関係指定、コンタクトポリシー適用などが自動バッチ実行され、精緻で複雑なキャンペーンの運用負荷を軽減した。
さらに、キャンペーン実施履歴の更新やキャンペーンレスポンス情報履歴の登録、キャンペーン効果分析リポートの登録などを一元的に実施することで、効果検証の負荷軽減とリードタイムの短縮を両立。加えて、キャンペーン照会リポート(顧客番号/契約番号検索)によって顧客からの問い合わせに迅速に対応できるようになったという。
2011年10月末のシステムリリースから同年度内においては中核メンバーが既存キャンペーンで活用し、SAS Marketing Automationへの移行のノウハウを蓄積。2012年度からはユーザー数、キャンペーン数とも範囲を拡大した。キャンペーン履歴の一元化についてはその登録精度を検証の上、2012年2月から各センターのキャンペーン履歴照会の運用を本格開始した。現在、ユーザー数は約40人。また、各センター300席からキャンペーン履歴照会を行っている。
キャンペーン履歴一元化によって、キャンペーン実施時のコンタクトポリシー制御を精緻化し、過去実施したキャンペーン履歴を踏まえて後続キャンペーンの実施負担を軽減する一方で、問い合わせ業務の効率化も図られているという。
システム活用の自由さとシステムの確実な動作との両立
途上与信システムについても、キャンペーン業務支援機能と連携させてSAS Marketing Automationの機能を配置。また、ユーザーがプログラムを作成した時点でデータベースへ書き込み、自動的にバッチ実行可能なシステムを構築し、開発側に頼らずユーザー側で実施できる環境を整えた。2011年10月末に更改版がリリースし、現在は20人で活用。大きな業務障害もなく無事に稼働中という。
今回のプロジェクトでは、「システム活用の自由さ」と「システムの確実な動作」という要求をどのよう両立するかが大きなチャレンジだったと岡本氏は話す。「情報系DWHとの連携や、ユーザー作成SASプログラムでの自由なデータ加工、判定項目の組み込みなどが可能になったため、与信基準の見直しや精緻化が加速していくだろう」(岡本氏)
今後、オリエントコーポレーションとしては、キャンペーン業務支援におけるさらなるEUCを拡大し、精緻化と期間短縮を進める計画だ。また、情報系DWHとは異なるデータ管理系システムのデータ活用を推進し、キャンペーンの高度化を目指すという。「現状でもSASの各ツールの補完運用によって、EUC環境として優れた機能が提供されている。今以上に開発側に頼らず、自由に正しく簡単に、ユーザーがやりたいことを実現できるような機能向上を期待したい」(岡本氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー