オブジェクトストレージを理解する(3)
主要ベンダーの製品動向から探る、オブジェクトストレージ普及の可能性
高い拡張性と分散アクセスを実現するオブジェクトストレージ。企業のデータセンターでは、主にアーカイブ用として利用されている。主要ベンダーの製品動向を踏まえて、今後さらに広範囲で利用するために必要なポイントを探る。
これまで「拡張性に差がある、オブジェクトストレージとスケールアウト型NAS」「オブジェクトストレージを定義付ける8つの属性」の2回にわたり、オブジェクトストレージの定義やクラウドインフラの基盤技術になった背景について述べてきた。今回は、オブジェクトストレージ市場のベンダー動向や今後の課題を紹介する。
オブジェクトストレージへの各種アプローチ
「今日、オブジェクトストレージはメディア、エンターテインメント、医療などの業界で多用される後処理型のデータや、アーカイブ用のストレージなどに向いている」と話すのは、米Hitachi Data Systems(HDS)のシニアプロダクトマーケティングマネジャー、ジェフ・ランドバーグ氏だ。「しかしパフォーマンスが向上し、機能が充実してくれば、クラウドストレージをサポートするだけでなく、分散型IT環境を実現できるようになるだろう」
オブジェクトベースのストレージは以下の3つのグループに分類できる。
コンテンツアドレスストレージ(CAS)
CASは、オブジェクトをカスタムメタデータとともにファイルとして保存する。ファイルへのアクセスには、数値形式のオブジェクト識別子を使用する。厳格なコンプライアンス機能が要求されるディスクベースのアーカイブ分野向けにデザインされたCASシステムは通常、データセンターに配備されるため、インターネット上での分散アクセスやマルチテナンシーといったクラウド機能は必要とされない。
CAS分野をリードしているのは、「Centera」という製品を提供する米EMCだ。エンタープライズ市場では、米Caringoなどの企業も活躍している。CASベンダー各社は、自社製品をクラウドストレージに進化させるために、クラウド関連機能を追加するという形でプラットフォームを強化したり、オブジェクトストレージプラットフォームを新たに開発したりしている。EMCは、自社のクラウドストレージプラットフォーム「Atmos」で後者のアプローチを選択した。Caringoは、同社の既存のCASシステムを改良した「Caringo Object Storage Platform」という製品を提供している。このオブジェクトストレージプラットフォームはバージョン5以降、マルチテナンシーおよび最大1Tバイトのサイズのオブジェクトをサポートしている。
Caringoのマーケティング担当シニアディレクター、エイドリアン・エレーラ氏は「2012年第2四半期に発表したCloud Scalarは、当社のクラウドストレージプラットフォームを拡張した製品で、REST形式のインタフェース、メータリング、高度なアクセスコントロールとクォータ管理、Webベースの管理者用ポータルなどの機能が搭載される」と語る。米Dellの「DX Object Storage Platform」は、Caringoの製品をベースにしている。Dellの元社員で現在はCaringoの戦略的顧客担当副社長を務めるブランドン・キャナデイ氏は「DX Object Storage PlatformはCaringoの技術がベースになっているが、Dellでは連係機能や重複排除機能のOcarinaなどで付加価値を高めている」と話す(関連記事:圧縮・重複排除機能を搭載したバックアップストレージ デル)。
第2世代のオブジェクトストレージシステム
その他のオブジェクトストレージベンダーの多くは、オブジェクトストレージソフトウェアを一から開発した。これらのソフトウェアは安価なx86ベースのノードに対応している。各ストレージノードはコンピューティングとストレージの両リソースを提供し、ノードを追加するだけで容量とパフォーマンスを直線的に増強することができる。
オブジェクトストレージソフトウェアは一般に、特定のハードウェアに依存せず、疎結合なサービスで構成される。これらのサービスとしては、HTTPプロトコル(RESTまたはSOAP)およびオプションとして従来のファイルシステムプロトコルを通じてクライアントとのインタフェースを処理する「プレゼンテーション層」、データオブジェクトの保存場所およびストレージノード上でデータを保護・分散する方法を管理する「メタデータ管理層」、ストレージノードとのインタフェースを提供する「ストレージターゲット層」などがある。
EMCはオブジェクトストレージシステムのAtomsを3つの形態で販売している。すなわち、仮想アプライアンス、ソフトウェア単体、そしてソフトウェアと汎用サーバおよびJBOD(HDDの集合体)という形態だ。同社のクラウドインフラストラクチャ部門のマイク・ファインバーグ上級副社長は「Atomsで重要なポイントは、ノードを追加するだけで容量、コンピューティングリソース、ネットワークリソースが拡張されることであり、これらは文字通り無限に追加できる」と説明する。
NetAppは2010年、オブジェクトストレージのデベロッパーであるカナダのBycastを買収した。Bycastの技術は現在、「NetApp StorageGrid」のベースとなっている。NetAppでは、StorageGridソフトウェアと「NetApp E-Series」ストレージシステムを組み合わせたオブジェクトストレージ製品を提供している。「StorageGridはAtomsと同じ部類に入る製品だが、重要な利点もある。ディザスタリカバリ用として複数のコピーを保持するのに加え、E-Seriesのストレージノードに実装したRAIDの保護機能によってローカルでの冗長性を実現できることなどだ」とNetAppのラッセル氏は話す。
ベルギーのAmplidataでは、同社の「AmpliStor」が信頼性、拡張性、高性能を兼ね備えたオブジェクトストレージ製品だと主張している。同社の製品担当副社長ポール・スペシアール氏は「当社独自のBitSpread技術、RAIDコントローラーをリプレースしてテンナイン(99.99999999%)以上のデータ信頼性を実現するコーデック、そしてキャッシング用にSSD(ソリッドステートライブ)が使えるハイパフォーマンスノードを組み合わせることで、AmpliStorは1台のコントローラーに付き720Mbpsのスループットを実現できる」と話す。
「Hitachi Content Platform(HCP)」は、オブジェクトストレージソフトウェアをHDS製ストレージと組み合わせることで、「Hitachi NAS Platform」(旧名称はBlueArc)やその他のHDSストレージシステムと連係した最先端のオブジェクトストレージソリューションを提供している(関連記事:ファイル仮想化を推進するSMB向けプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform 50」)。
クラウド対応のスケールアウト型NAS
これらはオブジェクトストレージアーキテクチャをベースとしたものではないが、ノードを追加することによって水平的に拡張できるため、スケールアウト型NAS製品のベンダーもオブジェクトストレージ市場での競争に参加することができる。CASシステムベンダーと同様、スケールアウト型NASベンダー各社は、HTTPプロトコルのサポートなどのオブジェクトストレージ機能を追加している。スケールアウト型NASシステムはNASにオブジェクトストレージの機能を付加したものであるため、社内クラウドの配備という面では純粋なオブジェクトストレージ製品と比べるとアドバンテージがある。
今後の課題
かつてない拡張性と分散アクセスを実現するオブジェクトストレージは、クラウドストレージとWeb 2.0分野で成功した。企業のデータセンターでは、これらのシステムはアーカイブ用およびファイル集約用のストレージ階層として配備されている。とはいえ、オブジェクトストレージは、ブロックベースおよびファイルベースの従来型ストレージが支配するストレージ市場の極めて小さな一角を占めるにすぎない。オブジェクトストレージが広範に普及するためには、標準化に加え、アプリケーションおよび従来型ストレージとの連係、さらに異種オブジェクトストレージ間の連係が鍵になるだろう。
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