Yammer の事例を分析
ビジネスで効果を出せるソーシャルメディア活用の極意
ビジネスでも使われることが多くなったソーシャルメディアだが、効果的な活用法についてはいまだ多くの企業が模索中だ。ソーシャルメディア活用のパートナープログラムを持つYammerはどうしているのか。
ソーシャルメディアは今、ビジネスの世界に浸透しつつあり、企業はこの「コミュニケーションやコラボレーションを図るための新たな方法」をいかにして活用するかを模索中だ。企業向けソーシャルにはVAR(付加価値再販業者)も注目しており、まだ初期段階ではあるが、既にソーシャルメディアサービスの提供を開始しているところもある。
米コンサルティング会社Morris Management Partnersの主任コンサルタント、ライアン・モリス氏によれば、こうした関心の高まりには、ソーシャルメディアの効果を実感している企業のケーススタディの存在が大きく影響しているという。「かつて、ソーシャルメディアは盛んに取り上げられていたが、具体的な証拠があまりなかった」と、同氏は語る。今では、「ソーシャルメディアがいかに業務プロセスを加速させ、マーケティングプログラムを改善し、顧客満足度を高められるか」についての事例が広く紹介され、企業の注目を集めている。「ただし、そうした企業は大概、自社ではソーシャルメディアのスキルを持ち合わせていない」と、モリス氏は語る。
ソーシャルメディアには今後、エンタープライズ市場において明るい未来が待っているようだ。米IDCは、世界のエンタープライズ向けソーシャルソフトウェア市場の売り上げは2012年の10億ドルから2017年には27億ドルに拡大すると予想している。
ただし今のところ、ソーシャルメディアのプロフェッショナルサービスをVARが提供することへの需要は限られている。ITジャーナリストであり、ソーシャルメディアトレーニングやソーシャル戦略を手掛ける米Paul Gillin Communicationsの社長でもあるポール・ギリン氏は、そう指摘する。
ギリン氏は、B2B(企業間取引)企業とチャネルパートナー向けのソーシャルメディアトレーニングを専門とする米Profitectureと組んでいる。「B2B企業やチャネルパートナーに対し、顧客のトレーニングにわれわれのプログラムを用いるよう促している。だが今のところ、関心はそれほど高くない」と、ギリン氏は語る。ただし、パートナー企業はソーシャルメディアには関心を抱いており、ソーシャルメディアを「リード(見込み客)を生むための新たな方法」と認識しているという。「だが、顧客向けのトレーニングにはまだあまり興味がないようだ」と、ギリン氏は続ける。
そのため、正式なトレーニング製品はまだ多くない。前出モリス氏によれば、一般的なトレーニングサービスには、「ソーシャルメディアポリシーの策定」「特定の事業目的に特化したソーシャルメディア活用法のトレーニング」「ソーシャルメディアのモニタリング」「セキュリティのツールとサービス」「マーケティング戦略などのビジネスコンサルティング」などがあるという。「ほとんどのサービスは正式には体系化されていない。これは問題だ。サービスの内容が正式に定義されれば、価格設定や価値の売り込みが容易になり、スコープクリープ(プロジェクトの範囲の肥大化)を回避しやすくなる」と、モリス氏は語る。
モリス氏とギリン氏によれば、プロフェッショナルなソーシャルメディアの認定資格といえるのは、米Yammerのものだけという。「専門機関によって提供されるものでない限り、認定資格には極めて限られた有用性しかないというのが私の考えだ」とギリン氏は語り、「ソーシャルメディアのプロバイダーは皆、トレーニングと認定資格制度を用意しているが、まだ市場価値はほとんどないのが実情だ」とモリス氏は語る。
カナダのプロフェッショナルサービスプロバイダーimasonは、Yammer認定パートナープログラムの資格を有しており、何年も前から顧客と協力し、米Microsoftの「Microsoft SharePoint」をベースにしたソーシャルソリューションの提供に取り組んでいる。imasonでアライアンスと人材育成を担当する業務執行社員のビッキー・トムソン氏によれば、顧客企業であるカナダING DirectのCEO、ピーター・アセト氏は従業員と意思疎通を図り、もっと働きやすい職場を作りたいと考えていたという。さらに、社内で各分野の専門家を見つけやすくすることも目指していた。かつては、新入社員が事業の特定の分野について何か知りたいことがあっても、それを簡単にできる状況にはなかったからという。imasonはSharePointで構築したイントラネットにソーシャルコラボレーション機能を追加し、Webページ上で従業員が質問したり対話に参加したりできるようにしている。
imasonは、Yammerを買収したMicrosoftから、Yammerの認定パートナープログラム「Yammer Customer Engagement Partner Program」(YCEPP)への参加を持ち掛けられ、同プログラムのメンバーとなった。トムソン氏によれば、imasonがYCEPPに招待されたのはソーシャル実装の実績を買われてのこと。認定プロセスの一環として、imasonの2人のコンサルタントがYammerに関する集中訓練を受けたという。
imasonは、Yammerネットワークの導入を支援するための4段階のプランを提供している。「エンタープライズソーシャルの価値に関するビジョンステートメントの作成」「コミュニティー管理者の採用とサポートおよびトレーニングプログラム開発のための戦略の策定」「既存インフラとYammerを統合するための技術サポート」「コミュニティー促進戦略の策定」の4段階だ。
トムソン氏によれば、現在、imasonの事業においてソーシャルは大きな割合を占めていないが、「エンタープライズソーシャルの可能性については社内で広く理解されており、顧客企業の間でも認識が広がりつつある」という。同氏は、向こう半年から1年半の間にソリューションの導入は大幅に進むと予想する。「顧客が何を考えているか、ソーシャルメディアはどのようなメリットを提供し得るか、imasonはそれをどう支援できるかについて、毎日のように話している」と、トムソン氏は語る。
同氏によれば、ソーシャルメディアは「社内およびパートナー企業とのつながりを作り、コラボレーションを促し、共同でイノベーションを起こせるチャンス」として関心を集めているという。「大きな組織に入社してくる若手社員は日常生活のコミュニケーションにソーシャルツールを使っているので、社内のコミュニケーションにも同じようなツールを使えるのは重要なことだ」と、トムソン氏は語る。
また同氏によれば、ソーシャルメディアのプロフェッショナルサービスの実装が停滞している背景には、時間とリソースとコストの問題の他、ソーシャルネットワークがIT部門やビジネス部門の優先リストの上位に置かれていない影響もあるという。
「だが、『日常生活にこれだけ浸透しているソーシャルメディアを社内でも活用しない手はない』という思いがあるのは当然だ。興味が持たれているのは確かであり、それはますます明確になっている」と、トムソン氏は語る。
前出Paul Gillin Communicationsのギリン氏も、パートナー企業やその顧客の間で関心が高まっているのを感じている。「どの企業も皆、同じ課題に直面しているからだ。リードを創出すること、リード発掘のための新しい糸口を見つけること、手に入れたリードを選定、育成するといった課題だ」と、ギリン氏は語る。同氏によれば、ソーシャルシステムの導入があまり盛り上がらないのは、パートナー企業の多くがビジネスコンサルティングサービスを提供するというよりも、ハードウェアまたはソフトウェアを扱うソリューションプロバイダーとしての傾向が強いからかもしれないという。「今の時点では、ソーシャルメディアはマーケティングサービスと受け止められているのかもしれない。私の経験から、ITチャネル企業でマーケティングアドバイザリーを手掛けるところは多くない。こういったサービスはITチャネル企業にとっては新しい分野だ」と、同氏は語る。
だがその一方で、ハードウェアパートナーはハードウェアの売り上げが減少傾向にあり、利幅が縮小していることを理解している。
「チャネルパートナーもこの点をはっきり認識しており、事業を多様化させる必要に迫られている。既製の製品だけ販売していたのではもう利益は上がらない。心得たチャネルパートナーは、大きな収益源となりつつあるサービスビジネスに転換する必要性を理解している。複雑なものがあるところに、サービスの必要性が生まれるからだ」と、ギリン氏は語る。
ソーシャルメディアの複雑さは事業目標に適用されたときに表面化する、と同氏は言う。「ツール自体は使い勝手がいい。難しいのは、ツールを活用して事業目標を達成することだ。目標がブランド認知の強化であれ、リードの獲得であれ、顧客サービスの改善であれ、何であれ、事業目標を達成することが大きく難しい問題なのは、多くのさまざまな情報経路を整理し、バックエンドで高度なトラッキングを行うことが大抵必要になるからだ」と、ギリン氏は語る。
「ソーシャルメディアの最大の問題は投資対効果(ROI)だ。ROIは測定が難しい。ソーシャルメディアの取り組みが成果を上げているかどうかを確かめるには、極めて優れた分析能力が要求される。だから、ソーシャルツールを上手に活用して業績に結び付けるのは難しい」(ギリン氏)
前出のモリス氏によれば、ソーシャルメディアのプロフェッショナルサービスを売り込む上での問題を突き詰めると、ユーザーに行きつくという。従来の古いメディアに頼っている企業には、こうしたサービスは売り込みにくい。一方、新しいメディアの採用に積極的な先進的な企業であれば、既存の戦略にも上手くフィットするはずだ。「ソーシャルメディアが有能なビジネスツールかどうかについて、企業の意思決定者の考えを変えるのは難しい。だが、ソーシャルメディアが有能なツールであることを相手が既に理解しているのなら、プロフェッショナルなサービスを売り込むのははるかに容易だ」と、モリス氏は語る。
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