狙いはSharePointとDynamicsのソーシャル機能か?
MicrosoftのYammer買収は何を意味するのか
MicrosoftのYammer買収は、SharePoin Serverの利便性向上、Salesforce.com対抗、Google Docs対抗などさまざまな意味を持つ。Microsoftはソーシャル対応を加速できるか。
この記事は米Microsoftが米Yammerの買収を正式発表する前の2012年5月15日(米国時間)に米TechTargetに掲載された記事を翻訳したものです。
米Microsoftが企業向けソーシャルサービスを手掛ける米Yammerを12億ドルで買収するとの臆測が流れている(※)。Microsoftの狙いは同社のコラボレーションプラットフォームのSharePoint Serverや他のレガシーツールの補強だ。
(※)2012年6月25日(現地時間)、MicrosoftはYammerの買収を正式発表している。
IT業界の多くの専門家が、この買収は完全に理にかなっていると考えている。
Yammerのソーシャルメディアツールは、優れたソーシャルネットワーキング機能や社外コラボレーション機能をもたらすという点で、MicrosoftのSharePoint Serverにとって大きなプラスになるだろうと、独立系調査会社の米Directions on Microsoftでリサーチ担当副社長を務めるロバート・ヘルム氏は語った。
「ソーシャルネットワーキングや社外コラボレーションは、SharePoint Serverが対応し始めている分野だが、もう少し早く対応が進むことが望ましい」(ヘルム氏)
SharePoint Serverはソーシャルネットワーキング機能も提供しているが、ほとんどの企業に使われていないというのが業界ウオッチャーの見方だ。
一方、Yammerはよく「企業向けのFacebookやTwitter」といわれる。コラボレーション機能(チャットや、情報を投稿したり共有するためのウォールなど)の多くが、これらのソーシャルネットワークで提供される機能と似ているからだ。
「SharePoint Serverが今後も有用であるためには、Yammerのようなツールが必要だろう」と、米Alure Home Improvementの技術・通信担当ディレクター、ジョン・ドイル氏は語る。住宅リフォームを手掛ける同社はYammerのユーザーだ。
ヘルム氏は、ソーシャルコラボレーション機能について見ると、SharePoint Serverに対するYammerの強みは、「クラウド対応」と「既にSharePoint Serverを共用している顧客が多いこと」だと指摘した。
Yammerは、2012年第1四半期時点で、Fortune 500社のうち85%の企業の社員を含む500万人の顧客を抱えるとしている。しかし、有料版を使っている顧客は全体の20%程度にとどまり、その他の顧客は無料版を使っている。
だが、MicrosoftのYammer買収のメリットを全てのIT担当者が納得しているわけではない。
「MicrosoftがYammerを買収しても、SharePoint Serverで使われていない機能が強化されるだけではないか」と、原子力発電保険会社の米American Nuclear Insurersで情報サービス担当副社長を務めるダン・アンション氏は語る。同氏は、SharePoint Serverをドキュメント管理に幅広く利用しているが、他の用途にはあまり利用していない。「ソーシャルでは、やはり人と人が顔を合わせてコミュニケーションを取ることが大事だ」
前述のAlure Home Improvementは、各現場への社員の配置をリアルタイムに調整するのに電子メールを利用していたが、今ではその代わりにYammerの有料版を使っている。
「MicrosoftがSharePoint ServerプラットフォームをYammerのシステム要件に追加しないことを願っている」(Alureのドイル氏)
YammerはSharePointとDynamics CRMに新風を吹き込むか
クラウドベースのエンタープライズ向けソーシャルコラボレーションプラットフォームがひしめく中で、Microsoftが今後もSharePoint Serverの価値をアピールしていくには、Yammerのようなソーシャルメディアツールが必要だ。こうしたプラットフォームには、米Jive、カナダのIgloo、英Alfrescoが提供する社名と同名の製品や、米Citrix Systemsの「Podio」、米VMwareの「Socialcast」(関連記事:VMwareがファイル共有アプリ「VMware Octopus」でMicrosoftを追撃)などがある。
また、Yammer買収により、Microsoftの「Office 365」の「Google Docs」に対する競争力が強化され、「Google+」に対抗するサービスをMicrosoftが手に入れ、Microsoft製品は、米Salesforce.com製品の有力な競合になるだろうと、調査会社の米Current Analysisのアナリスト、ブラッド・シミン氏は語る。
「現在はソーシャル化が大きな潮流となっている。Yammerがもたらす技術を活用すれば、Microsoftは『われわれは単なるレガシーシステムのベンダーではない。他社と肩を並べる最新鋭のソリューションを提供できるベンダーだ』と胸を張れる」(シミン氏)
Salesforce.comは2012年6月初めに、ソーシャルマーケティング企業の米Buddy Mediaを7億4500万ドルで買収し、自社のCRMプラットフォームにソーシャルマーケティングツールを追加する計画を発表した。Yammer買収もMicrosoftの「Dynamics CRM」(関連記事:「Office感覚で使える」から実現したCRMパッケージの短期導入)製品に同様の恩恵をもたらすかもしれない。
「MicrosoftはSalesforce.comとの差を詰めようとしている。Salesforce.comは、クラウドアプリケーションとの統合や、社内SNSツールの『Chatter』(関連記事:Salesforce Chatterの基本機能とエディションによる違い)、各種のソーシャル機能など、CRMに加えて他分野も切り開いてきた」と、アイデンティティーサービスを提供する米Ping IdentityのCTO、パトリック・ハーディング氏は指摘した。
ソーシャルネットワーキングツールは、まだ企業にそれほど浸透していないが、「2年後には、企業ソーシャルネットワークは当たり前と思われるようになっているだろう。大部分のビジネスアプリケーションにソーシャル機能が組み込まれるようになるからだ」と同氏は語った。
Yammerは2012年4月に、Microsoft Dynamics用プラグインによるDynamicsとYammerサービスの統合を発表し、Dynamicsのデータに対するUniversal Search(※)による検索などが可能になったことを明らかにした。
(※)Universal Searchは、Yammerサービスのデータに加え、Yammerと統合されたエンタープライズアプリケーションのデータを検索できるYammerの検索エンジン。
Directions on Microsoftのヘルム氏によれば、YammerがSharePoint Serverとも同様に統合されれば、今回の買収はMicrosoftがYammerをどう利用するかではなく、むしろYammerという会社がMicrosoftのどこに組み込まれるのかがより興味深いことだ。
また、同氏は「Yammerは、クラウドサービスのプロバイダーとして成長してきた若い企業だ。一方のMicrosoftは基本的にオンプレミスソフトウェアの会社であり、その中で適応していこうとすることは、Yammerのソフトウェアエンジニアにとって大変だろう」とも話している。
MicrosoftとYammerは共にコメントを控えている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは -
製品資料
クラウド開発環境で高まる運用の課題、選定において重要な判断軸とは? -
製品資料
Oracle DatabaseをAI活用基盤へ、クラウド移行を阻む4つの課題と解決策 -
市場調査・トレンド
数百万台規模のデータで判明、企業のIT環境に潜む「見えない課題」とは -
製品資料
サーバ高密度化を阻む「見えない配線問題」 UTPやDACの限界を超える選択肢は?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
2
月額91.3万円のAIエンジニア システムアーキテクト級に並んだ単価の中身
-
3
ランサムウェア被害額が平均3.5億円に拡大 なぜ企業の復旧は遅れるのか
-
4
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
-
5
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
6
ブラックボックス化したExcelマクロの解読 生成AI「IBM Bob」で95%削減
-
7
逆効果になることもある「レガシーシステム刷新」 失敗しないための知恵とは?
-
8
「ERP(統合基幹業務システム)の導入・活用」に関するアンケート
-
9
IT製品の導入に関するアンケート「サーバ&ストレージ」編
-
10
終わらない脆弱性対処に効く 「WAF」による“時間稼ぎ”の防衛術
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
財務・会計はAI活用でどう変わる? 調査で見えた変革の道筋
-
3
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
7
コスト分析で見る「デバイス復旧」の代償 損失額から導きだされた投資戦略とは
-
8
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
9
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー