「Cupid」が一般ユーザーを狙い撃ち
終わりが見えないHeartbleed攻撃、新たな手口で無線LANが危ない
OpenSSLの脆弱性を利用する「Heartbleed」の新たな攻撃手口が発見された。この手法を利用すれば企業の無線LANが無防備な状態になり、接続したデバイスが攻撃の対象になる恐れがあるという。
2014年4月に発覚したHeartbleedは、OpenSSLの暗号化ライブラリに含まれる重大な脆弱性だ。この問題を抱えたクライアントあるいはサーバが攻撃を受けると、最大64Kバイトのメモリが危険に晒され、X.509証明書用の暗号鍵や認証証明など、オープンソースの暗号化技術であるOpenSSLによって保護された情報が盗まれる恐れがある。
この脆弱性は、TLS(Transport Layer Security)の「heartbeat」拡張の処理で境界チェックが欠如していることに起因するもので、TCP接続上でTLSハンドシェイクが行われた後にのみ攻撃を受ける可能性があると考えられていた。だが、ポルトガルに本社を置く情報セキュリティコンサルティング企業Sysvalueの研究者ルイス・グランゲイア氏は、OpenSSLの脆弱性を悪用する新たな手法を発見した。
EAPによってTLS接続を暴露
グランゲイア氏は5月30日付のブログ記事の中で、「Cupid」と名付けられた新しいコンセプト実証(PoC)コードの詳細を明らかにした。これは、EAP(Extensible Authentication Protocol)によってTLS接続を暴露するというもの。EAPはスマートカードやワイヤレスネットワーク上のワンタイムパスワードなどの認証メカニズムの実装を可能にする。グランゲイア氏によると、Cupidの影響を受ける可能性のあるEAP方式には、TLSを利用した技術、具体的には「EAP-PEAP」「EAP-TLS」「EAP-TTLS」などが含まれるという。
グランゲイア氏は「CupidはLinux用の2つのソフトウェアパッチという形で、GitHub上で提供されている。最初に発見されたHeartbleedの場合と同様、CupidもTLSを通じてクライアントとサーバの両方を攻撃できる」と説明する。Cupidでは、パスワードが要求される前に脆弱性への攻撃が可能になるので、攻撃者が認証証明を手に入れる必要はないという。また、TLS接続が完全に確立されている必要がなく、鍵や証明書の交換も不要であると強調している。
脆弱なクライアントを攻撃するには、(Cupidパッチを適用した)hostapdを使って「悪質な」ネットワークをセットアップするという手法を用いる。脆弱なクライアントがTLS接続を要求すると、hostapdが悪質なheartbeatリクエストを送信し、脆弱性を露出させるというわけだ。一方で、脆弱なサーバを攻撃するには、wpa_supplicantとCupidパッチを組み合わせる。脆弱なネットワークへの接続を要求してから、TLS接続が確立した直後にheartbeatリクエストを送信するのだという。
グランゲイア氏は「Cupidはまだ十分なテストが行われておらず、脆弱なシステムのメモリから何を盗み取れるのかについては正確には分からない」としながらも、「こうした攻撃では、TLS接続に用いられる秘密鍵や、接続の認証に用いられる証明書が盗まれる可能性が高い」と述べている。また、「Ubuntuで動作し、脆弱なOpenSSLバージョンを使っているシステムの場合、wpa_supplicant、hostapdおよびfreeradiusのデフォルト実装はいずれも、Cupidの攻撃を許す」と断言する。Androidバージョン4.1.0および4.1.1で脆弱なOpenSSLが実装されたシステムの場合も、Cupidの攻撃に晒される可能性があるという。Androidは全てのバージョンでワイヤレスネットワークへの接続にwpa_supplicantを使っているからだ。
企業内無線LANが危ない!
また、家庭用ルータはEAP方式を使っていないので安全だが、企業のワイヤレスネットワークは攻撃を受ける可能性があるという。
「社内用ワイヤレスネットワークを運用している企業は、この問題に注意しなければならない。マネージドタイプのワイヤレスソリューションのほとんどがEAP方式の認証メカニズムを使用しているからだ。OpenSSLを使っている企業もある。社内の機器をテストしたり、ベンダーに情報提供を求めたりする必要がある」(グランゲイア氏)。
どんなタイプであれ、EAP方式の認証メカニズムを社内ネットワークで使っている企業は要注意だ。802.1Xベースのネットワークアクセス制御技術を利用している有線ネットワークも、この問題の影響を受ける可能性があるとグランケイア氏はいう。
米データセキュリティ企業のVenafiでセキュリティ戦略と脅威情報収集を担当するケビン・ボーセック副社長は、Cupidについて「サイバー犯罪者が有効なパスワードを知らなくても、秘密鍵とデジタル証明書をルータから抜き出す可能性がある」と指摘する。
「これはHeartbleedの最初の変種かもしれない。だが、これが最後にはならないだろう」とボーセックは語る。「ハッカーたちは、鍵と証明書が自分たちのツールキットに大きな価値を付加することを知っている。企業がこれらを厳格に管理しなければ、ハッカーはいつまでも攻撃を仕掛けてくるだろう」
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