シンプルなソフトが結局は求められる?
“意識の高い”コラボツールに疲れた社員が「Dropbox」を再評価する理由
最新のコラボレーションソフトウェアでは、ドキュメントを共有する以外にさまざまなことが行えるが、企業は基本的な機能しか求めていないのかもしれない。
今日のコラボレーション(共同作業)は、自分の席を立って、同僚の席に行って話をするという単純なものではなくなっている。以前と比較して、従業員は世界各国に分散している傾向がある。その結果、企業の情報は雑然とした状態で複雑になっている。
人的な交流だけでは、作業を遂行することができない。そのため、従業員にはビジネスコラボレーションソフトウェアが必要だ。ビジネスコラボレーションソフトウェアがあれば、情報の一元管理、ドキュメントの共有、プロジェクトの管理、リアルタイムのコミュニケーションを共通の場所で安全に行うことができる。
求められるのは「シンプル」であること
米IDCが2014年中盤に公開した「Worldwide Semiannual Software Tracker」(半年後とのグローバルなソフトウェア追跡調査)リポートによると、コラボレーションソフトウェアの年間成長率は10%を超えているという。高度な企業のニーズに対応するため、ツールも複雑になっている。例えば、米Jive Softwareや米Zimbraなどの企業が提供するツールでは、コミュニケーションと知識の共有を可能にするための豊富な機能が用意されている。
だが、従業員がシンプルなコラボレーションソフトウェアを望んでいることを示す動かぬ証拠がある。ユーザーはさまざまなアプリケーションを使いこなさなければならない状況に疲れている。さらに別のアプリケーションの使い方を学習することに否定的な態度を示している。その結果、クラウドベースのファイル共有システムなどのコラボレーションツールを使用することを選択している。
米AIIMが2014年3月に公開した「Content Collaboration and Processing in a Cloud and Mobile World」(クラウドとモバイル環境におけるコンテンツのコラボレーションと処理)リポートでは、回答者の63%が社内のコラボレーションが重要だと考えている。だが、コラボレーションツールが必要になる状況の第1位はドキュメントの共有で80%と2位以下に大差を付けている。ちなみに第2位はワークフロー(50%)、第3位はチームのプロジェクトサイト(43%)だ。
このリポートでは、多くのユーザーが一般消費者向けのクラウドベースのファイル共有サービスを利用することになるだろうと締めくくっている。具体的なサービスとしては、米Dropboxの「Dropbox」、米Microsoftの「OneDrive」、米Appleの「iCloud」、米Googleの「Googleドライブ」、米Hightailの「YouSendIt」が挙げられている。
ドキュメントの共有だけでいいのか
電子メールによるコラボレーションに取って代わる「キラーアプリ」が誕生しない限り、小さなニーズへの対応に他のツールを使用するのは当然の流れだろう。その一例が、従業員がドキュメントを共有できるようにするツールだ。
米Centric Projectsでは、プロジェクトの管理と社内のコミュニケーションに使用しているアプリケーションがある。だが、ドキュメントを一元管理して保存する方法を必要としていた。ただし、そのためのインフラを管理する必要がないことが条件だ。
そこで採用されたのが、クラウドベースのファイル共有アプリケーションであるDropboxだ。Dropboxにより、従業員は一元管理された場所にあるファイルにアクセスできるようになった。その結果、同社では、サーバを管理する必要性とサーバの費用が削減され、リモート(オフサイト)で働いている従業員もドキュメントにアクセスすることが可能になった。
Centric Projectsの共同設立者で共同経営者でもあるリチャード・ウェッツェル氏は、「当社では、ある時点でサーバに投資する必要性について検討することになった。そして、その必要はないという結論に達した。当社の従業員数は45人で、125台のデバイスを所有している。具体的には、ノートPC、タブレット、スマートフォンがある。全従業員が1日中Dropboxを使用しているので、ハードウェア(サーバ)に投資する必要はなかった」と語る。
複雑なドキュメント管理という観点では、Dropboxのようなツールには改善の余地がある。バージョン管理などの中核となる問題は依然解決されていない。バージョン管理の機能が実現すれば、複数の従業員が、同じドキュメントで同時に作業をしても、他の従業員が加えた変更内容を上書きすることはなくなる。これは、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)ツールなどの複雑で重い、高額なソフトウェアが台頭してきた理由だ。だが、小さな企業であれば、バージョン管理はそれほど重要な機能ではないかもしれない。少なくともCentric Projectsは、Dropboxにバージョン管理の機能がないことを問題視していない。
「複数の従業員が同じドキュメントで同時に作業する頻度は思ったほど高くない。私たちはファイルの所有者を意識している。他の従業員のファイルには、それほど頻繁にアクセスしない。そのようなファイルにアクセスすることがあるとすれば、ファイルを確認するためにアクセスしているときだ。必ずしも変更を加えるとは限らない」(ウェッツェル氏)
ウェッツェル氏によると、Centric Projectsは潜在的なファイルの競合を特定するための回避策を編み出したという。「他のファイルと競合している可能性のあるファイルを特定するために、週に1回、ファイル名に競合する単語を使用しているファイルを検索している。特定したファイルに問題を見つけた場合は、それぞれのファイルの所有者に競合の可能性があることを通知し、問題を解決するように依頼している」
コラボレーションツールは重要資産の管理ソフトになり得るか
Centric Projectsにとってバージョン管理は大きな問題ではないとウェッツェル氏は話している。だが、ドキュメント管理に安価なコラボレーションツールを採用している企業もある。
米Hardesty & Hanoverは、米国各地に拠点を持つ橋梁工学会社である。同社は、BoxやDropboxなどのファイル共有ツールも検討したが、最終的には、ユーザーにとって使いやすく、ドキュメントのバージョン管理機能を備えた費用効果の高いツールを採用することにした。同社のマーケティング部門では別のコラボレーションツールを使用していたが、そのツールは使いづらく、導入はうまくいっていなかった。
そこで採用したのが、英Huddleのチームコラボレーションツール「Huddle」だ。あるプロジェクトでHuddleを試験的に使用した結果、Huddleは全社レベルで使用されるようになった。利用者は25人から250人に増えた。Huddleが初めて導入されたプロジェクトでは、米国各地で作業をしているエンジニアは他のチームメンバーとコミュニケーションをとって、上級エンジニアから図面と見積もりについて承認を得る必要があった。そこで、Huddleを使用して、変更内容が上書きされることを心配する必要なく、複数のユーザーがファイルを表示して編集できるようにした。
Hardesty & Hanoverの建築技師のバリー・ケウン氏は当時を振り返って「Huddleを試験的に使用していた当時、電話やメールだけでは事足りていなかった。ドキュメント管理の方法を改善する必要があると考えていた」と語る。
ケウン氏によると、Huddleによって特定のプロジェクトで目標を達成することはできたという。また、Huddleは全社レベルで使用されるようになったが、作業中のファイルには使用しておらず、プロジェクトの準備段階のファイルのみに使用している。Hardesty & Hanoverでは、会社の重要資産である現場の図面やアクティブなプロジェクトの図面をクラウドベースのサービスに保存する準備はできていない。クラウドベースのサービスに保存した場合、データ漏えいやドキュメントの上書きといったリスクが生じる。それに対応する準備ができていないのだ。
「当社では、まだ準備が整っていない。個人的には作業中のファイルは本社のサーバに保存するのが好ましいと考えている。だが、状況が変化すれば、自分の考え方も間違いなく変わるだろう」とケウン氏はいう。運用中のファイルにHuddleを使用するつもりはないというものの、Hardesty & Hanoverのグローバル化が進めば、物理的な境界をまたぐコラボレーションを実現する新たな方法が必要になる可能性は否定できない。
完璧なツールはいらない
企業は、全てのコラボレーションタスクに1つのアプリケーションしか使用しないということはない。特定のニーズに対応するために、パッチワークの要領でツールを導入していることが明らかになっている。コラボレーションタスクには、ドキュメント管理、リアルタイムのコミュニケーション、ミーティングの準備、ソーシャルネットワーキングなどがある。企業は、コラボレーションソフトウェアの幾つかの特定の用途を順守し、対応していないタスクには他のツールを使用することが多いのが実情だ。
突き詰めると、企業はファイルを共有するために手ごろな金額のツールを求めているとケウン氏はいう。「全てのオフィスにあるサーバのデータをキャッシュするために仰々しいクラウドベースのファイルシステムに大金を注ぎ込んだりはしない。完璧なドキュメント管理を実現するためだけに、高額な資本を投資するつもりはないのだ」
企業も試行錯誤している段階だ。ユーザーがコラボレーションソフトウェアで本当に重視するものを特定して、自社で使っているツールにその機能を組み込む方法を模索している。
「どのベンダーも同じことを行っている。企業の領域に侵入し、クライアントに提供できる新機能を見極めている」とケウン氏は語る。
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