ERPやCRMとの連携基盤構築が急務
タブレットでのドキュメント管理ニーズが増加、課題は拡張性
タブレットをドキュメントの閲覧・作成端末として業務利用する企業が増えている。ベンダー各社はドキュメント管理製品を充実させつつあるが、ERPなどのバックエンドシステムとの連携など課題が残る。
企業は何かしらの用途を意図して新製品を売り出すものだが、そうした意図とは想定外の使われ方をされてしまうのは珍しいことではない。このことはタブレットにも当てはまる。タブレットはコンシューマー向けの製品として開発されたものだが、最近ではビジネスの世界、とりわけ現場の営業担当者の間で人気が高まっている。
タブレットは本来コンテンツを楽しむための端末として位置付けられており、実際にもおおむねそのように使われている。だがビジネスの世界では、ドキュメント管理用の端末として作成と利用の両方に使われるケースも増えてきている。
テクノロジーのポピュリズム
「タブレットがビジネスの現場に広まりつつあるが、この流れはMacBookやiPhoneがノートPCやBlackBerryの代わりとして職場で使われるようになったときと同じだ。人々が自分のお気に入りのハードウェアを職場に持ち込んでいる」と語るのは米Forrester Researchの副社長兼主任アナリスト、クレイグ・ルクレア氏である。
「最大の懸念の1つは、職場に持ち込まれるテクノロジーをどう掌握するかだ。これまでも、インテリジェントな端末をいち早く取り入れるのは現場の営業担当者や販売担当者だった。ビジネスシーンでタブレットの使用が広がっていることは、少しも驚くことではない」と同氏は続ける。
米Gartner副社長のデビッド・ウィリス氏は、同社が2011年11月にオーストラリアで開催した「Gartner Symposium/ITxpo 2011」において、次のように述べている。「タブレット向けの商用ビジネスアプリは当初、低価格の個人向け生産性向上ツールが主流だった。今では、主要なビジネスアプリベンダー各社がタブレットを重視し、ユーザーのニーズに応えようとしている」
Gartnerが発表した「タブレットデバイス向け商用ビジネスアプリケーショントップ10」には、顧客向けカタログやセールスプレゼンテーション、受発注システムなどのセールスオートメーションシステム、ビジネスインテリジェンス(BI)、ミーティング用のコラボレーションアプリなどが含まれる。
モバイルドキュメント管理
米Adobe Systemsの製品管理担当ディレクター、エラン・アローニ氏は次のように語る。「人々はタブレットで主にデータを利用しているが、コンテンツも作成している。コンテンツを作成する方法や状況はさまざまだ。当社はタブレット向けにフル機能版のPhotoshopを用意するつもりはないが、タブレットで画像の編集や共有を行うためのソフトウェアはリリース済みだ。ただし、想定する用途は通常のPhotoshopとは若干異なる」
Adobeが提供する企業向けアプリケーションの1つに、iOS端末でドキュメントを安全にやりとりするための「EchoSign」がある。EchoSignは法的拘束力を持つドキュメントをiPadに送信したりするのに利用できるアプリだ。ドキュメントには、法的に有効な電子署名を直ちに行えるため、紙の文書をやりとりする手間を省くことができる。
iPadで安全なドキュメント管理を実現するソリューションには、米WatchDoxが提供しているサービスもある。WatchDoxのサービスでは、iPadとサーバ間にセキュアな接続を確立し、ファイル内容のプリンタ出力や画面キャプチャーを禁止することができるだけでなく、iPadの画面を写真に撮ることもできないようになっている。同社の戦略担当副社長兼最高マーケティング責任者(CMO)であるライアン・カレンバー氏によると、画面を撮影しても画面が光って不鮮明にしか写らない仕組みになっているという。
「われわれの使命は、どこからでもドキュメントにアクセスできるようにすることだ。さらにドキュメントのセキュリティを確保し、場所や端末を問わずドキュメントの管理を可能にすることだ。ファイルのセキュリティを確保するために、われわれはバックエンドでさまざまな作業を行っている。ユーザーはドキュメントのコピーや転送はできないが、自分用に修正を加えたり、権限を持つ関係者とだけコラボレーションしたりといったことが可能だ」と同氏は説明している。
WatchDoxには、ハリウッドの映画会社が完成前の作品のやりとりに使ったり、航空会社がフライトプランを安全かつ確実に飛行機に転送するのに使ったりといった事例があるという。
こうしたベンダーが直面しているのは、iPadはまだ新しい端末であり、エンドポイントでデータを保護できるセキュアで有用な製品となるためにはまだ大いに成熟する必要があるという問題だ。
「さらに大きな問題はフロントエンドでのセキュリティではなく、バックエンドシステムとの統合だ。私には、その方が大きな問題に思える。ユーザーがどんな作業を実行中であれ、それをサポートできるようなアーキテクチャを構築しなければならない」とForresterのルクレア氏は指摘している。
CRMベンダーの対応
ルクレア氏によると、この「タブレットの新世界」への対応という点では、ERPベンダーやCRM(顧客関係管理)ベンダーの動きは遅過ぎるという。「そもそもこの業界の動きは遅い。従来、ERP業界の開発プロセスでは年1回のアップデートが普通だった。だがモバイルの世界ではアジャイル開発が不可欠であり、週1回あるいは四半期に1回のペースでアップデートが行われる。そのため、古参ベンダーは速さを競うコンシューマー向け技術の分野で抜きん出ることができずにいる」と同氏は言う。
WatchDoxのカレンバー氏も同じ意見だ。「うまく連係できるソリューションが何もなかったため、自分たちで全て構築しなければならなかった。情報セキュリティの対象はもはやデータだけではない。だがユーザーの使い勝手という点では、デジタル著作権管理(DRM)も公開鍵インフラ(PKI)も駄目だった。そのため、コンテンツ周りの全ての要素をわれわれが保護するしかなかった」と同氏は語っている。
Adobeのアローニ氏も、タブレットはまだ初期の段階にあるという考えだ。「これまでは、デスクトップPCなどのコンピュータ向けに構築されたインフラの時代が続いてきた。われわれはそうしたコンピュータは使い慣れている。だがタブレットはまだ新しく、その活用法はまだ定まっていない。だからこそ、これは大きなチャンスだ。適切なコンセプトと革新力を持っていれば、独自のソリューションを編み出して市場をリードできるからだ」と同氏は語る。
ただしタブレットとクライアントPCは異なるため、ユーザー体験は違った観点で考える必要があるという。「デスクトップPCのユーザー体験をそのままモバイル端末に移すこともできなくはない。だが、人々は違うものを期待しているはずだ。そこで、ユーザーと関わる方法を見直すことが必要となる。これはある意味、非常に興味深いことだ。基本に立ち返ることになるからである」とアローニ氏は語っている。
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