“全員野球”で取り組むデータ活用
Airbnbはこのツールで超高速な意思決定を実現、「データ民主化」とは(1/2 ページ)
民泊サービスのAirbnbは、起業当初からデータの価値を認識していた。同社は、データを「民主化」するツールを構築し、トレーニングを考案した。その結果、従業員はデータサイエンティストへと変貌を遂げた。
民泊サービスAirbnbの経営陣はデータの力を強く信じている。従業員には1人残らずデータを活用できるようになってもらいたいと考えるほどにだ。
「データを戦略的優位性と見ている」とAirbnbでマネジャーを務めるジェフ・フェン氏は述べる。同氏は分析製品と実験プラットフォームのチームを統括する。同氏が率いるチームは、信頼性の高いデータとツールを構築し、4000人以上もの同社の従業員に提供する役割を担っている。
フェン氏によると、Airbnbではデータの民主化に力を入れているという。この取り組みの中心は、日常業務を行う従業員に、企業データや分析テクノロジーへのアクセスを許可することだ。それにより、従業員は必要な情報を自ら見つけて分析できるようになり、業務効率が向上する。
アナリストや研究者はこれを賢明な戦略だと考える。
「幅広い従業員がデータにアクセスできるようにすることが実際に必要なのは間違いない。データという資産には勝者と敗者を分ける可能性がある」とローリ・シェラー氏は話す。同氏はBain & Companyの米国サンフランシスコオフィスの共同経営者で、同社の高度分析およびデジタルプラクティス部門の責任者も務める。
データには価値があるにもかかわらず、多くの企業はデータの民主化を実現できていない。それどころか、データの管理にさえ力を入れていない。
「2011年頃からどの企業でもデータを中心とするビジネスを行うことが増えている。データドリブンな企業になるためには、中堅レベルや幹部レベルの管理職がデータに精通しなければならないことは認識されている。だが、これが実現することはめったにない」とシェラー氏は話す。
シェラー氏の指摘によれば、大半の企業のデータ活用能力は進歩していないという。概算だが、いまだに30%近くの時間を管理職から要求されたデータの分析に費やしていると分析の専門家は話す。
こうした状況はその企業を不利な立場に置く。その理由の1つは、データ活用能力の抑制が意思決定に影響を及ぼすことにある。つまり、管理職は、分析の専門家に要請したレポートとダッシュボードが作成されるのを待つ間の時間を無駄にすることになる。一方、分析チームは戦略上高度なタスクではなく、レベルの低い作業に拘束されることになるとシェラー氏は指摘する。最も効果的にデータを活用している企業では、2倍の速度で意思決定が行われる。これは競争上極めて重要な強みになるとシェラー氏は述べる。
シェラー氏は、データの民主化を率先しようとする企業は、4つの重要な要素を実現する必要があるとアドバイスする。それは、適切な情報にアクセスできるようにすること、高速アクセスを実現すること、従業員が求める情報を視覚化すること、対話型方式で情報を利用できるようにすることの4つだ。
Airbnbでデータを民主化するツール
Airbnbは、2008年の創業時からデータの分析を重視している。継続的にデータを使用することで製品を後押しし、顧客とのやりとりを円滑化しているとフェン氏は話す。
「Airbnbでは、データを大きなユーザーの声だと考えている。つまり、データがユーザーを理解する1つの方法になる」とフェン氏は語る。
そのため、同社はデータインフラへの投資を優先し、オープンソースの「Apache Hadoop」と「Presto」で信頼できる唯一のデータソースを構築するところから始めた。その後、オープンソースの「Spark Streaming」と「Druid」を利用するようになった。
同社は初期の頃から強力なデータチームも編成している。データとツールをさまざまなビジネス部門の従業員に公開しながらも、このデータチームの育成は続けている。
「データは当社にとって重要な専門技術分野だ。そのため、自社の大部分のデータインフラとデータツールの構築に重点的に投資を行うことを決めた」とフェン氏は述べる。
データの民主化を推し進める中で、Airbnbではユーザー向けに独自のデータツールも構築している。その一例がデータポータルだ。フェン氏によると、このデータポータルは基本的にはデータ、視覚化データ、データリソースを対象とする検索エンジンだという。従業員は、データテーブル、視覚化データ、ナレッジポスト(データサイエンティストによる研究のようなもの)を検索し、結果をポータルに表示できる。その結果を、チームや個人のファイルに保存することもできる。
同社では、「Superset」というオープンソースツールを構築して使用した。Supersetはデータ探索と視覚化のプラットフォームで、本稿執筆時点ではApache Software Foundationのインキュベータープロジェクトになっている。また、データの視覚化にはTableau Softwareの製品も採用している。
だが、Airbnbの取り組みは、その全てがアクセス権の付与を中心としているわけではない。フェン氏は、機密データや規制データにアクセスできるユーザーを管理するために、データの責任者によって予防策が講じられていることを認める。
「だが、全体的な方針としては、データを一元管理し、主要データを整理してアクセスできるようにしている」(フェン氏)
Airbnbの「Data University」
Airbnbでは、従業員向けのデータトレーニングプログラムも作成している。
データの民主化を本格的に実現するには、実際にデータを使用して疑問を解決する上で不可欠なスキルを従業員が習得することが重要になる。フェン氏によると、Airbnbの上層部はこのことを認識しているという。企業従業員の大半は、こうしたスキルトレーニングを受けておらず、その準備もしていない。データと分析の力にまつわる騒ぎが加熱しているにもかかわらずだ。
2016年11月、Airbnbでシニアデータサイエンティストを務めるエリン・コフマン氏とフェン氏は、データリテラシーの提供を目的として設計した「Data University」を開設した。Data Universityでは、レベル100の初歩的授業から、データのヘビーユーザー向けに設計されたレベル300の高度な授業まで用意している。この社内向けプログラムの授業は従業員を対象とし、講師が指導する各授業は1~2時間の長さになる。Airbnbでは30教科の授業を全て無償で提供している。講師は、Airbnbのデータサイエンティストとデータエンジニア約40人が務める。2017年8月までに900人を超える従業員が授業を受けた。各従業員は1人当たり平均4~5教科を受講している。
この取り組みによる成果は大きい。データとデータツールの週単位の使用率は、Data University開設前は23%だったが、本稿執筆時点では45%まで向上している。
フェン氏によると、デジタル企業として発足したAirbnbには、データの取り組みに関して幾分優位点があるという。老舗の企業が独自のデータを活用しようとすると、過去のテクノロジーインフラや長年の積み重ねられたデータサイロが障害になる。だが、同社はそうした問題に対処する必要がない。
「歴史のある企業ほど、ツールやインフラに多額の投資を行わなければ、現在のAirbnbのような高度なユースケースはその一部でさえ実現できるようにはならない。人工知能、機械学習、実験に関しては特にそうだ」(フェン氏)
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