成長を続けるクラウド市場
「ハードウェアにお金を払う」時代の終わり
クラウド市場が成長を続けている。コスト効率の高さがメリットの1つだが、移行性やセキュリティなどに対する懸念もある。そういった中で、パブリック/プライベートクラウドはどのようなすみ分けがいいのだろうか。
IT業務の向上を模索する企業は、機密データをプライベートクラウドで運用する一方、インフラとプラットフォームはパブリッククラウドへのアウトソーシングを続けている。
クラウドコンピューティングは生産性向上の手段を企業に提供し、データセンターインフラを調達して維持する場合に比べてコスト効率の高い代替策になり得るとアナリストは指摘する。
「ハードウェアに投資したがらないのがこのトレンドだ。企業はコアコンピテンシー(中核能力)に集中し、ITサービスはクラウドから調達できるコモディティと見なしている」。米CloudeBrokerのクラウドアーキテクト、マーク・シナカ氏はそう解説する。
米データ分析企業451 Researchが発行した2013年版のクラウドコンピューティング概観リポートによると、クラウド市場は複合年間成長率(CAGR)36%で売り上げが増加し、2016年末までに200億ドル規模に近づく見通しだ。この調査はクラウドコンピューティング市場の各分野の300人以上から回答を得た。
「クラウドはデータの増減に対応できる柔軟性にメリットがある」とシナカ氏は解説する。さらには大量のデータを社内でサポートする能力や予算も不要になる。
451 Researchの調査ディレクターであるグレッグ・ズワクマン氏は「クラウドではITを保有するのではなく、レンタルできる。(経営の)観点から見ると、多額の設備投資をせずに済む。車を持つ代わりにレンタルするようなものだ」と話す。
クラウドをITサービスの自然な進化
2012年のクラウド市場の売り上げは、IaaS(Infrastructure as a Service)がパブリッククラウド市場シェアの半数強を占め、2016年までのCAGRは37%で推移する見通しだ。
PaaS(Platform as a Service)はIaaSほどの普及には至っていないものの、2012年のパブリッククラウドの売り上げ全体に占める割合は24%だった。PaaSは使いやすさを背景に、普及率は2016年までに41%に達すると予想されている。
「PaaSはデータベースの設計方法やサーバ上のデータベース運営方法が分かる担当者がいなくても構築できる。既に設定は済んでいるので、サポートしたり設計したりする必要がない」とシナカ氏。
このため企業はアプリケーションやビジネスニーズに集中する時間が持てると同氏は言い添えた。
実際に、クラウドはITの大きな一角を占めるようになっている。451 Research傘下のTheInfoProが実施したクラウドに関する調査では、大企業と中堅企業のIT専門職100人のうち60人が、クラウドコンピューティングをITサービス提供の自然な進化と見なし、クラウドコンピューティングプロジェクトに個別の予算を割り当てていなかった。クラウド用に個別の予算を割り当てている専門職では、69%が2013年と2014年の両年とも前年より出費が増えると予想している。
TheInfoProの調査ではさらに、クラウドコンピューティングプロジェクトの導入に当たって重大な障壁に直面しているという回答が83%に上り、2012年末に比べて9ポイント増えた。IT関連の障壁は15%に減る一方で、非ITの障壁が68%に増え、その大半を人、プロセス、社内政治といった組織上の問題が占めていた。
パブリッククラウドの欠点
シナカ氏によると、クラウドコンピューティングの1つの障壁として、移植性、つまり、1つのクラウドから別のクラウドへの移行の問題が挙げられる。
「特定のクラウドベンダーを使い始める際は、そのベンダーが廃業した場合や別の方向に進むことを選んだ場合に備えて、データを迅速に、かつ問題なく別のベンダーに移せるかどうかを知っておいた方がいい」とシナカ氏は話す。
また、セキュリティ問題も付きまとう。透明性が高く、セキュリティが優れていれば、クラウド事業者に対するIT専門職の信頼は深まると報告書は指摘する。回答者の25%は、クラウドの切り替えに当たってそのクラウド事業者と顧客の間の透明性が高まることを求め、19%はセキュリティ対策の向上を求めた。
シナカ氏はさらに、クラウド事業者がデータを参照できるのかどうか、もし情報が流出した場合はどうなるのかという問題も挙げた。米国家安全保障局(NSA)が電話やメールの記録を収集しているというニュースは、政府が企業に介入することの不安を浮き彫りにした。
「政府による盗聴は間違いなく懸念される。『政府に自分のデータを見られたらどうすればいいのか』『知らないうちに私のデータが見られているのか』といった疑問が湧くかもしれない」(シナカ氏)
クラウドの中でも、特にプライベートクラウドコンピューティングは成長し続けると同氏は予想する。
TheInfoProの調査では、現在プライベートクラウドを使っている回答者は35%だった。
「パブリッククラウドはこの技術を試す場だった。そこでの実証を経て、企業が自前のプライベートクラウドを構築するようになっている。プライベートクラウドでは戦略的なビジネスプランが必要になる。もし金融機関であれば、パブリッククラウドに取引情報は置かないはずだ」(シナカ氏)
民間セクタは巨大であり、プライベートクラウドに費やされる額はさらに増えるだろうと同氏は言い添えた。一方で、コモディティITはパブリッククラウドに置かれる見通しだ。
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