「クラウド移行後」を見据えたプラットフォーム徹底解説【第1回】
クラウド移行後に取り組みたい、「コンテナ」「アプリプラットフォーム」「サーバレス」って何?(1/2 ページ)
企業システムを真にクラウドネイティブで競争力のあるものに変革していくには、3つの技術を避けては通れない。その3つとは、コンテナ、アプリケーション、サーバレスだ。それぞれの特徴を解説する。
「クラウド移行後」を担うテクノロジー
クラウドコンピューティングという考え方が生まれてから10年が過ぎた(注1)。懐疑的な目で見る人も多かったが、そんな時代も今や昔。「クラウドファースト」という言葉が示すように、企業ITの第一の選択肢としてクラウドを挙げることも当たり前になってきた。既に社内のITをクラウドに移行し終わった読者もいるかもしれない。企業ITの更新サイクルを踏まえると、クラウド移行に取り組んでいる企業は、今後数年で大半が移行を完了すると考えられる。
※注1: 2006年に、当時GoogleのCEOだったエリック・シュミット氏が「クラウドコンピューティング」という言葉を使ったときを起点とした場合。
だが、クラウド移行が一段落つきつつある今だからこそ改めて考えてみたい。クラウド移行とは、ゴールではなく始まりであるということを。
クラウドを活用できているか 目を向けたい「IaaS以外」のサービス
クラウド移行が終わったという人、移行中だという人に尋ねたい。今使っているのはどういうサービスだろうか。ここで聞きたいのは「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」といった回答ではない。例えばAWSだとして、その中のどれだけのサービスを使っているかということだ。「Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)」「Amazon ELB(Elastic Load Balancing)」「Amazon RDS(Relational Database Service )」「Amazon S3(Simple Storage Service)」あたりは多く手が挙がるだろう。それ以外はどうだろうか。
そう、これまで世の中で言われていた「クラウド移行」とは、IaaS(Infrastructure as a Service)への移行を指すことが多かった。オンプレミスのサーバとネットワークをそのままEC2に置き換え、加えてデータベースをプロバイダーがインフラを運用するマネージドのRDSに、といった具合だ。
もちろんこれだけでも大きな進歩ではある。運用コストの削減は間違いなく見込めるだろうし、ハードウェアの保守切れによるシステム刷新に頭を悩まされることはなくなるだろう。
しかし、これは既存のITをそのまま別環境に移行しただけだ。そのITが企業にもたらす付加価値という意味では、何も進歩していないのだ。
ではどうすればよいか。まずクラウドを「オンプレミスを置き換える大規模なマネージドサービス」と捉えるのではなく、「全く新しい価値をもたらすプラットフォーム(OS、サーバ、ミドルウェアなどの集合体)」と考えるべきだ。従来のITには無い、クラウドならではの思想やアーキテクチャを取り込んだ仕組みに変革していき、高まるビジネスニーズに迅速に応えていくことが重要である。これを「クラウドネイティブ」と呼んでいる。
併せて読みたいお薦めの記事
コンテナとアプリケーションの違い
サーバレスのサービス比較
サーバレスの効果
「クラウド移行後」を担う3つのカテゴリー
クラウドネイティブの実現のために活用していきたいテクノロジーやサービスは山ほどあるが、今回は3つのカテゴリーを紹介する。「コンテナオーケストレーター」「アプリケーションプラットフォーム」「サーバレスコンピューティング」だ。
コンテナ時代の主役「コンテナオーケストレーター」
2013年に登場した「Docker」をきっかけに、コンテナが脚光を浴びることになった。コンテナ技術そのものは以前から存在していたが、Dockerはコンテナイメージの作成や配布などDevOps(開発と運用の融合)の実現にマッチした概念を持ち込み、一躍人気となった。
しかしDocker(ここでは中核要素の「Docker Engine」を指す)は、あくまでもシングルホスト(サーバ)内でコンテナを実行・管理するための仕組みだ。商用環境で利用する際に必要となる運用監視の仕組みや、冗長性の担保については他の仕組みを利用する必要がある。
そこで注目され始めたのが、複数ホストで動くDocker Engineに対して適切なコンテナの配置をするコンテナオーケストレーターだ
Kubernetes
恐らく最も注目を集めているコンテナオーケストレーターが「Kubernetes」である。KubernetesはGoogleが開発を始めたオープンソースソフトウェア(OSS)で、2016年にはCloud Native Computing Foundationに知的所有権を移管している。
Kubernetesの思想は、Google社内で利用されている「Borg」というクラスタマネジャーを基にしている。この点も人気を集めている理由の1つだろう。
KubernetesはOSSであり、クラウドのみならずオンプレミス環境でも稼働することが可能だ。マネージドサービスとしてKubernetesを利用できるコンテナオーケストレーターサービスには、Googleの「Google Container Engine」(GKE)、Microsoftの「Azure Container Service」がある。
2017年8月には、PaaS(Platform as a Service)向けソフトウェアベンダーPivotal SoftwareがVMware、Googleと共同で「Pivotal Container Service」(PKS)という企業向けKubernetesの提供を発表した。
Docker Swarm mode
Dockerの開発元であるDocker社も、「Docker swarm mode」というコンテナオーケストレーターを提供している。もともとは「Docker Swarm」という独立したソフトウェアだったが、Docker Engineに統合する形でswarm modeが誕生した。
swarm modeはDockerの無償版であるCommunity Editionの他、商用向けのEnterprise Editionでも利用可能だ。
“アプリケーションファースト”を実現する「アプリケーションプラットフォーム」
次に紹介するのが、アプリケーションプラットフォームである。あまり聞き慣れない言葉かもしれないが、例としては「Heroku」「AWS Elastic Beanstalk」「Cloud Foundry」などが挙げられる。「それってPaaSじゃないの?」と思われる読者もいるだろう。その通り、このカテゴリーはつい最近までPaaSと呼ばれることが多かった。しかしながら、プラットフォームという単語が指す範囲は非常に広い。定義によっては、コンテナオーケストレーターや後述のサーバレスコンピューティングもPaaSと呼べてしまう可能性がある。そのため、より現実に即した名称として、今回はアプリケーションプラットフォームという呼び方を採用した。
Cloud Foundry
アプリケーションプラットフォームの代表格として紹介したいのがCloud Foundryである。自身を「クラウドアプリケーションプラットフォーム」と位置付けるCloud Foundryだが、このカテゴリーの中では歴史が古く、2011年からOSSとして公開されている。現在はPivotal、IBM、General Electric(GE)の他、MicrosoftやGoogleも名を連ねる、Cloud Foundry Foundationが開発を主導している。
Cloud Foundryは内部に「Diego」と呼ばれるコンテナオーケストレーターを内包しており、ソースコードからのデプロイの他、Dockerイメージを持ち込んでの実行も可能となっている。
Kubernetesをはじめとしたコンテナオーケストレーターは、当然のことながらコンテナ管理に特化した仕組みであり、利用者もコンテナの存在を意識しながら利用する必要がある。一方、Cloud Foundryはあくまでもアプリケーションのためのプラットフォームであり、利用者はコンテナの存在を意識する必要がない。ソースコードからの場合も、Dockerイメージの場合も、同じように「cf push」というシンプルなコマンドでアプリケーションのデプロイ(配備)が可能だ。
アプリケーションのデプロイや管理のみならず、ネットワークの設定やログの収集などもアプリケーション単位で、簡単なコマンドでできる。「インフラのことは全てCloud Foundryに任せ、開発者はアプリケーション開発に注力できるように」というのが、Cloud Foundryのキーコンセプトだ。
商用製品としてPivotalが「Pivotal Cloud Foundry」というソフトウェアを提供している他、Pivotal、IBM、NTTコミュニケーションズなどがCloud Foundryをベースとしたパブリックサービスを提供している。
OpenShift
Cloud Foundryと並んで取り上げられるのが、Red Hatが提供している「Red Hat OpenShift Container Platform」(以下、OpenShift)だ。2015年にアーキテクチャを一新し、Kubernetesをベースとしたアプリケーションプラットフォームに生まれ変わった。
今回のカテゴリーに当てはめるとアプリケーションプラットフォームだが、OpenShiftは自身を「コンテナプラットフォーム」と位置付けており、Kubernetesの一ディストリビューションとして展開している。
Kubernetesそのものの機能に加え、Dockerイメージのレジストリ(イメージ管理サーバ)やソースコードからのデプロイ機能、マルチテナント機能など、アプリケーションプラットフォーム向けの機能を追加したものとなっている。
インフラ関連の設定を隠秘して、開発者の思考をアプリケーション開発に集中させるCloud Foundryのアプローチに対し、OpenShiftはKubernetesによる抽象化されたインフラ機能を開発者にコントロールさせる権限を与え、かつアプリケーション運用に必要な機能を追加するという、柔軟性と多様性を重視したアプローチを取っている。同じカテゴリーに位置付けられる製品でありながら、その目指す先が大きく異なるのが興味深い点だ。
商用向けには、パブリックサービスの「OpenShift Online」、ユーザー企業ごとの専用環境を提供する「OpenShift Dedicated」、自前の環境にセットアップを行うOpenShift Container Platformが提供されている。
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