仮想化リーダー企業に聞く2010年の戦略【第3回:ヴイエムウェア】
全方位戦略で仮想化市場拡大を推進、クラウドでもリーディングベンダーへ
仮想化のリーディングカンパニーとしてまい進し続けるヴイエムウェア。2010年はサーバ仮想化の先にある新たな市場でも主導権を握るべく、4つの重点施策を掲げる。
2010年第1四半期、日本市場では前年同期比2倍の売り上げを達成
仮想化市場をリードするヴイエムウェアは2010年、好調に業績を伸ばしている。米本社が2010年4月に発表した2010年第1四半期の売り上げは、ワールドワイドで前年同期比35%増と大幅成長した。地域別では、米国市場が前年同期比30%増、米国以外のインターナショナル市場が前年同期比40%増となり、特に日本市場については前年同期比100%増と飛躍的な成長を遂げた。
同社の業績拡大は、本格的に盛り上がりを見せる国内の仮想化市場の現状をそのまま表しているといえる。一方で、競合ベンダーのヴイエムウェア追撃への動きは激しさを増している。特に、サーバ仮想化においてはマイクロソフトが「Microsoft Hyper-V」で、デスクトップ仮想化においてはシトリックス・システムズ・ジャパン(以下、シトリックス)が「Citrix XenDesktop」で、市場切り崩しに向け本格的に攻勢を掛け始めている。
こうした動きに対してヴイエムウェア マーケティング本部長の篠原克志氏は、「当社は競合ベンダーと同じ土俵で仮想化市場のシェア争いをするつもりはない。競合ベンダーが本格参入してきたことで、仮想化という技術が当たり前になり、市場が大きく拡大した。そしてその市場規模はまだまだ大きくなるポテンシャルを秘めている。当社の戦略では、サーバ仮想化の先にある市場ニーズを見据えながら、競合ベンダーとは異なる次元で新たな段階へと進んでいる」と、揺るぎない自信を見せる。
では、ヴイエムウェアは、拡大する仮想化市場の中でどこへ向かおうとしているのか。篠原氏は、2010年に取り組む重点施策として、
- サーバ仮想化環境における運用管理効率化
- デスクトップ仮想化の市場拡大
- 中堅・中小企業市場の開拓
- クラウドコンピューティングの推進
という4つのキーワードを挙げた。この4つの重点施策を追うことで、同社が目指している仮想化市場の姿が見えてきそうだ。
2010年に掲げる4つの重点施策――運用管理/デスクトップ仮想化/中堅・中小/クラウド
1つ目の重点施策は、サーバ仮想化環境における運用管理の効率化だ。
「ここ数年で仮想化という言葉が広く浸透したことで、実際に導入する企業は増え始めている。しかし現段階では、サーバ統合で仮想化が止まっているケースがほとんど。それだけではシステム全体の15~20%が仮想化されたにすぎない。また、サーバ統合に伴う運用管理負荷の増大に頭を悩ませるIT管理者は少なくない」と篠原氏は指摘する。
そして、「仮想化が企業にもたらす価値は、サーバ統合よりもその先の運用管理効率化および運用コスト削減の方が何倍も大きい。そこで2010年は、特にデータセンターを運用する大手企業に向けて“100%バーチャライゼーション”を推進する。サーバ統合の次のステップとして、クラウドOSである『VMware vSphere 4』(以下、vSphere 4)を活用したシステム全体の最適化を提案し、運用管理面の価値を強く訴求していく」考えを示した。
vSphere 4のEnterpriseエディションには、サーバ仮想化環境における運用管理を効率化する機能として、リソース管理を自動化する「VMware DRS」がある。リソースプール全体の使用率を監視し、ビジネスの優先順位を判断して仮想マシンにリソースを動的に割り当てる機能だ。さらに、電力消費を最適化する「VMware DPM」機能も備えており、夜間など仮想マシンの使用リソースが減少した際には、使われていないサーバの電源をオフにすることで電力消費を削減する。「こうした機能は、サーバ仮想化領域での当社の大きな差別化ポイントになっている」(篠原氏)という。
2つ目の重点施策である「デスクトップ仮想化の市場拡大」に向けては、2009年11月に投入したデスクトップ仮想化製品の最新版「VMware View 4」を中核に、国内市場のさらなる掘り起こしを進めていく。
「デスクトップ仮想化は、サーバ仮想化に比べて導入メリットが認知されていないのが実情だ。デスクトップ仮想化を本格的に普及させるには、仮想デスクトップ環境が機能制限なく快適に使えることをエンドユーザーに実感してもらうことが重要である。またIT管理者には、クライアントPCの運用管理コスト削減およびセキュリティ強化につながるメリットを認識してもらうことが必要だ」(篠原氏)と、デスクトップ仮想化市場の抱える課題を分析する。
同社がデスクトップ仮想化の市場拡大を進める上で避けて通れないのが、シトリックスとの競合だろう。シトリックスは2010年4月26日、マイクロソフトとの共同戦線を発表し、デスクトップ仮想化市場でのヴイエムウェア対抗を鮮明に打ち出している。
これに対して篠原氏は、「弊社はサーバ仮想化ベンダーのイメージが強いが、ハイパーバイザーの導入実績をベースに、デスクトップ仮想化市場においても国内で9割のシェアを確保している。ただ、その市場規模はシェアを食い合うレベルではなく、国内市場にはまだ膨大な潜在需要が眠っていると考えている。今後は、市場が本格的に拡大するタイミングに乗り遅れないように、パートナー企業との連携を図りながら、VMware View 4の販売体制をさらに強化・拡充していく」と、既存のインストールベースも強みにしつつデスクトップ仮想化市場の拡大に注力していく考えを示した。
3つ目の重点施策は「中堅・中小企業市場の開拓」。この市場では、マイクロソフトが強力なライバルとして立ちふさがることになる(参考:「MS、サーバ、デスクトップともに仮想化市場拡大へ本格攻勢」)。これまでエンタープライズ市場をメインターゲットとしてきたヴイエムウェアは、中堅・中小企業市場に対してどんな手を打っていくのか。
「中堅・中小企業市場はとても大きく、ヴイエムウェア1社だけで努力しても開拓は難しい。これについては、いかにパートナー企業との強力なエコシステムを構築できるかに懸かっている。現在、パートナー企業のトレーニングプログラムを積極展開し、中堅・中小企業向け販売体制の底上げを進めている。そして、パートナー企業との共同マーケティングによって企業の仮想化導入へのハードルをできるだけ引き下げ、中堅・中小企業のニーズに応えていく」と篠原氏は説明する。
同社では、この施策の一環として、2010年4月1日から6月15日まで、中堅・中小企業向けのオールインワンパッケージ「VMware vSphere Essentials」を半額で提供するというプロモーションを、ソリューションプロバイダー各社と共に展開している。このプロモーションは、エンタープライズクラスの仮想化ソリューションを1CPU当たり約1万円で導入でき、中堅・中小企業に費用対効果のメリットを強力にアピールするものである。
さらに、2010年6月下旬には「VMware仮想化サミット 2010」を、共同開催パートナー9社と全国30都市規模で開催する。2009年は17都市22回の実施だったが、2010年は規模を拡大し、30都市で50回以上の実施を予定している。「同サミットを通じて、中堅・中小の顧客を抱える全国各地のOEMパートナーやシステムインテグレーターに、VMware製品を活用した仮想化ビジネスの可能性を示す」(篠原氏)と意欲を見せる。
仮想化の先にある新たな市場でも主導権を握るべく、同社が力を注ぐのが4つ目の重点施策「クラウドコンピューティングの推進」である。
篠原氏は、「クラウドコンピューティングは、企業のIT部門に大きなパラダイムシフトをもたらし、サーバ仮想化とは異なる新たな市場を立ち上げるものになる。弊社は今、仮想化ソフトウェアベンダーとして認知されているが、今後はクラウドコンピューティングでもリーディングベンダーの地位を確立したい。そのためにクラウドコンピューティングには全社を挙げて取り組む」との方針を明らかにしている。
その基盤ソリューションに位置付けられるのがvSphere 4だ。この製品には、プライベートクラウドを構築するために必要な機能やサービスが集約されており、これによってクラウドレディの仮想化環境への移行を促進する。さらに、同社が推進するクラウドコンピューティング戦略は、プライベートクラウドとパブリッククラウドを連携するハイブリッドクラウドの領域を視野に入れ、今後vSphere 4で構築したプライベートクラウドとパブリッククラウドをつなぐための製品もラインアップに加えていくという。
クラウドコンピューティング市場におけるヴイエムウェアの役割について篠原氏は、「単にソフトウェアのライセンス販売をするだけでなく、クラウドビジネスを展開する企業のさまざまなニーズに応じて、最適なクラウドソリューションを提供していくこと」と述べる。
米本社が4月に行った米セールスフォース・ドットコムとの提携も、その布石といえるだろう。ヴイエムウェアはこの提携により、同社が2009年に買収した米スプリングソースのJavaアプリケーション開発フレームワーク「Spring Framework」を米セールスフォースに提供。クラウド基盤サービス「Force.com」と連携させることで、世界で600万人ともいわれるJava開発者をクラウド環境に取り込み、Javaアプリケーションのクラウド環境への移行を加速させる考えだ。
競合ベンダーの追撃を迎え撃つどころか、それを推進力として、サーバ仮想化からデスクトップ仮想化、中堅・中小企業の開拓まで全方位戦略で仮想化市場拡大を目指すヴイエムウェア。そして、仮想化の先にあるクラウドコンピューティングにおいても、市場拡大のけん引役を狙っている。
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