ERP製品カタログ【第10回】東洋ビジネスエンジニアリング
「カスタマイズありき」でグローバル製造業を支援する「MCFrame」
製造業向けのERPとして実績を持つ「MCFrame」は日本企業の海外展開に合わせて機能やサービスを拡充させてきた。「カスタマイズありき」というポリシーの裏側にはどのような判断があるのか。
Web型とクライアント/サーバ型に対応
製造業向けの国産ERPパッケージ製品として、長い実績と高いシェアを持つ東洋ビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G)の「MCFrame」(エムシーフレーム)。同製品は1996年の販売開始以来、製造業における生産管理、販売管理、原価管理の3つの業務エリアにフォーカスしたパッケージ製品をそろえる。
MCFrameは、大きく2つの製品体系に分かれている。1つが、1996年以来一貫して提供を続けているクライアント/サーバ型の「MCFrame CS」シリーズである。当初は生産管理のモジュールのみを提供していたが、顧客の要望に応じて販売管理と原価管理のモジュールを追加してきた結果、現在では「MCFrame CS 生産管理」「MCFrame CS 販売管理」「MCFrame CS 原価管理」の3つの製品がある。
もう1つが、2008年から提供を開始した「MCFrame XA」シリーズである。こちらはMCFrame CSシリーズとは異なり、Javaで開発されたWebアプリケーションの形態をとる。当初は販売管理モジュールのみの提供だったが、2010年に「MCFrame XA 生産管理」、2011年4月には「MCFrame XA 原価管理」を提供開始し、現在ではMCFrame CSシリーズと同様に生産管理、販売管理、原価管理の各モジュールをラインアップに加えている。
この2つの製品体系、それぞれの特徴について、B-EN-G プロダクト事業本部 営業本部 本部長の入交俊行氏は次のように説明する。
「MCFrame XAはエンタープライズJavaのアーキテクチャに基づいて作られており、企業グループにおける大規模導入を前提としたマルチカンパニー機能などを備えている。さらに多通貨・多言語にも対応しているので、日本の製造企業が海外に進出した際、日本を中心として各海外拠点をワンシステムで管理できる仕組みを構築できるようになっている。一方のMCFrame CSはクライアント/サーバ型で、MCFrame XAと同じく多通貨・多言語に対応しているので、海外拠点のシステムをとにかく素早く立ち上げたいというニーズに応えることができる」
グローバル化の流れの中で、日本の製造企業の海外進出は、今後より増えていくことが予想される。その際、海外拠点を含めたシステムのグローバル化を進めていくに当たって、Webによる集中管理型システムのMCFrame XA、拠点ごとに独立したシステムを迅速に構築できるMCFrame CS、この2つの選択肢の中からそれぞれの企業の事情に合わせてソリューションを選べるようになっているわけだ。
製品と人材の両面におけるグローバル対応のノウハウ
B-EN-G自体、早くから日本の製造業の海外進出に深く関わってきた企業である。もともと同社の母体が海外でのプラント建設を手掛ける東洋エンジニアリングであり、また海外拠点向けの業務パッケージ製品「A.S.I.A」(エイジア)を長く手掛けていることもあり、特にアジア地域におけるグローバル対応に関しては多くのノウハウを持つという。
先述のように、MCFrame XAとMCFrame CS共に多言語と多通貨に対応しており、また現地の税法に柔軟に対応できる機能も備えている。もちろん、業務パッケージとしての基本機能も充実しているが、この点に関しては少し誤解しているユーザーも多いと入交氏は指摘する。
「一昔前までは、海外の生産拠点のシステムはMicrosoft Excelや簡易パッケージ製品だけで事足りるという考え方もあったが、今では日本国内の製造拠点をそっくりそのままシフトすることが多くなった。しかも海外では日本のように、システムの機能の足りない部分を製造現場の優秀な人々が補ってくれることもない。従って、海外の生産拠点のシステムにも、それ相応の高い機能が求められるようになってきている。その点、海外での高い実績を持つMCFrameには、“現地で必要とされる機能”に関して多くのノウハウがある」
また、製品だけでなく、その導入や運用を支える人材面でも多くのノウハウを有するという。同社はタイと中国に拠点を持ち、MCFrameの専門スキルを持つSEを配置している。また、現地のパートナー企業とも密接に協業し、人材の育成に取り組んでいる。現に、現地のエンジニアを日本に招いて、MCFrameのトレーニングを提供することもあるという。
「海外拠点向けの生産管理パッケージを提供しているベンダーは他にもあるが、B-EN-Gのように現地に拠点を持ち、生産管理のスキルを持つ要員が常駐し、現地のパートナー企業と一緒に導入支援やサポートまで提供できるところはそう多くない」
また、今後グローバル対応において欠かせないIFRS(国際会計基準)に関しても、製品の対応を着々と進めているという。
「MCFrameがカバーする生産管理や販売管理、原価管理のエリアで必要なIFRS対応については、大まかな部分では既にできており、今後は制度の変遷を見極めながら細かい機能を調整していく。例えば、着荷基準による収益認識などは、もともと機能として持っている。原価管理の固定資産関連の機能には、ある程度の影響が予想されるが、これも今後、状況を見極めながら随時対応していく」(参考記事:IFRSと日本基準で異なる収益認識――4つの対応法を示す)
バージョンアップをしなくても製品サポートを継続
なお、MCFrameのサポート契約には、他社製品にはあまり見られないユニークな特徴がある。製品のバージョンアップをしなくとも、サポートサービスが継続されるのだ。たとえ古いバージョンの製品であっても、「動いている限りはサポートする」という方針が一貫している。こうしたサポートサービスを提供するに至った背景には、同製品の出自が関係している。
「MCFrameはもともと、従来のパッケージ製品ではカバーできない顧客の細かい要望に柔軟に応えるために開発された。そのため、当初から『カスタマイズありき』という前提で作られている」
しかし、パッケージ製品に大幅なカスタマイズを施すと、通常はバージョンアップで問題が発生することが多い。そこでMCFrameでは、たとえバージョンアップを行わなくとも、ユーザーが使い続ける限りはサポートサービスを提供するようにした。事実、既に10年以上もバージョンアップを行わずに同製品を運用しているユーザーもいるという。
「パッケージの進化と顧客の業務の進化が完全にシンクロしていればベストだが、必ずしもそうなるとは限らない。そこで、この両者の方向性がずれてきたとしても、当初構築したシステムをそのまま使い続けてほしいという思いから、このようなサポート形態を取っている」
とはいえ、OSやデータベースソフトウェアなどのサポート切れから、やむなくパッケージをバージョンアップせざるを得なくなることも考えられる。そのようなケースでも、MCFrameでは柔軟に対応できるという。
同製品はオブジェクト指向技術を使って開発されており、プログラム全体がクラスの階層構造を形作っている。OSやデータベースとやりとりする処理は、このクラス階層の上位で実装されているため、処理を変更すれば自動的に下位クラスまでその内容が継承される仕組みになっている。またこうしたカスタマイズ作業は、プログラムコードを直接記述するのではなく、「FrameManager」という開発ツールを介してプログラミングレスで行うことができるようになっている。
「MCFrameには、このオブジェクト階層化技術とFrameManagerがあるので、開発生産性とシステムのメンテナンス性に極めて優れる。この点に関しては、ユーザーからも非常に高い評価をいただいている」
SaaS型のサービス提供にも積極的に取り組む
SaaS(Software as a Service)を早くから提供している点も、MCFrameが持つ特徴の1つである。B-EN-Gでは2009年からMCFrame CS 原価管理の機能をSaaSで提供する「MCFrame online 原価管理」というサービスを提供している。
「このサービスのユーザーは、中堅・中小企業が多い。やはり、IT資産の保有コストの削減や、今まで原価管理システムを使ったことがない企業が『まずはお試しで』という目的で導入するケースが多いようだ」
2010年11月には、マイクロソフトのクラウドコンピューティングのプラットフォームである「Windows Azure Platform」を活用して、製造実績や出庫実績などの実績データを登録する機能も、同サービスにオプションとして加えている。
B-EN-Gではこれに加えて、生産管理のモジュールもSaaSで提供するプランを持っているという。生産管理業務は原価管理など経理系の業務とは異なり、企業ごとにその形態が大きく異なるため、パッケージを導入する際もカスタマイズが前提になることが多い。そのため、パッケージの標準機能だけで業務をカバーすることは難しく、SaaSは困難だとされてきた。しかし、国内ならいざ知らず、海外拠点となれば少し事情は異なってくると入交氏は述べる。
「確かに、国内向けに生産管理をSaaSで提供するのは難しいと思う。しかし、海外拠点でわれわれの生産管理パッケージを導入している顧客のうち、8割程度は業務の部分にほとんど手を入れずに運用している。従って、海外拠点向けには生産管理パッケージのSaaS提供は可能ではないかと考えている」
具体的には、MCFrame CS 生産管理の機能をSaaSで提供するサービス形態を構想中だという。早ければ2011年度中には一部ユーザー向けにトライアル提供を始め、ビジネスとしてのめどが立てば次年度から正式にSaaSとして提供を開始したいと入交氏は抱負を述べる。
「中堅・中小企業の海外拠点では、専任のIT要員を置くことができないケースがほとんどなので、SaaSを導入するメリットは大きいのではないかと考えている。現地要員の負担も減るし、システム立ち上げのスピードも圧倒的に早くなるはずだ」
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