エンタープライズ向けストレージ製品紹介:総括(前)
徹底比較! 主要8社のハイエンド向けストレージ製品
2010年10月に開始した「エンタープライズディスクストレージ製品紹介」連載で紹介した8社のストレージ製品について、各製品の機能の特徴や今後の展望などを紹介する。
連載「エンタープライズディスクストレージ製品紹介」では、主要ストレージベンダーが提供するエンタープライズ向けストレージ製品を順次紹介してきた。今回から2回にわたりこれまで紹介してきた製品の特徴や各ベンダーの製品戦略、さらにはストレージ市場全体のトレンドや今後の展望などを総括する。
連載インデックス
- 日本ヒューレット・パッカード:QoS制御とデータ階層管理の自動化を実現する「HP StorageWorks P9500」
- 日立製作所:ストレージ階層の仮想化・自動化を実現する「Hitachi Virtual Storage Platform」
- 富士通:最大容量と可用性にこだわったハイエンドストレージ「ETERNUS DX8000」
- EMCジャパン:仮想化・クラウド時代のストレージ「Symmetrix VMAX」
- ネットアップ:独自のキャッシュ技術でストレージの階層化を実現する「FAS6200シリーズ」
- 日本オラクル:ZFSを活用した拡張性が強み「Sun ZFS Storage Appliance」
- デル:データ管理を自動最適化するストレージ「Dell Compellent」
- 日本IBM:ビッグデータ管理を簡素化するストレージ「IBM XIV Storage System Gen3」
「増え続けるデータ」への対処が課題
ストレージ製品に対する需要は伸び続けており、今後もその傾向は続くと予想されている。IDC Japanが2011年8月に発表した調査結果によると「2010年から2015年にかけての国内ディスクストレージ製品の出荷容量は、年平均で45.1%の成長率が見込まれる」という。
その背景には、企業システムが保有するデータの量が急激な勢いで増え続けているという事情がある(関連記事:ゼタバイト時代の企業ストレージ環境とは)。データが増え続けている理由は幾つか考えられる。主な理由の1つに「企業におけるIT活用が進展してきた結果、データベースに保管された構造化データのみならず、文書や画像、動画といった非構造化ファイルデータが爆発的に増えてきた」ことが挙げられる。
また、データを活用する多様なソリューションが普及してきたことも理由の1つだといえよう。その代表格がBI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウェアハウス)などだ(関連記事:読めば分かる! ビッグデータのためのデータウェアハウス(DWH)とは?)。BIやDWHについては、高価な割にあまり実用性がないと見る人もかつては多かったが、サーバの処理性能が飛躍的に向上し、ディスク装置の容量当たり単価が劇的に下がった今日では、多くの企業が積極的にBIやDWHの導入・活用に取り組むようになっている。
最近よく聞かれるようになった「ビッグデータ」という言葉は、こうした状況を指すものだ。そして今日のエンタープライズ向けストレージ製品には、新しい状況に対応可能な「増え続けるデータをいかに効率良く管理できるか」という点が問われるようになってきた。近年、エンタープライズ向けストレージの分野で注目されている新技術のほとんどが、この目的を達成するために開発・実装されたものだ。
「ストレージ仮想化」と「シンプロビジョニング」によるストレージ管理の簡素化
例えば、「ストレージ仮想化」技術。この技術が出てきた背景には、容量が増え続けるストレージの運用管理を効率化したいというニーズがある。これまでストレージは、個々の業務システムの構成要素の1つとして位置付けられてきた。そのため、個々の業務システムごとに独立したストレージシステムが構築されるのが一般的だった。いわゆる「サイロ型システム」である。
しかし、業務システムごとにばらばらにストレージが散在している状況では、メンテナンスやバックアップといったストレージ管理の作業をシステムごとに行わなくてはならない。これは、IT部門にとっては非常に大きな負担である。ましてや、ストレージ上に保管されるデータ容量が増え続ける現在の状況下ではなおさらだ。
こうした状況を改善するために、複数のシステムにまたがってストレージを統合するソリューションが早くから提唱されてきた。ストレージ仮想化は、こうした流れの最先端に位置付けられる技術である。この技術が注目されるようになったきっかけの1つがサーバ仮想化技術の普及である。仮想化技術でサーバを集約することによるメリットが多くの企業で認識されるにつれ、同じくストレージについても仮想化して統合するソリューションの可能性がクローズアップされてきたのだ。
現在、エンタープライズ向けストレージ製品のほぼ全てが仮想化機能を搭載している。また、いかに競合製品の仮想化機能との差別化を図るかが、各ストレージベンダーの主な製品戦略となっている。例えば、日立製作所の「Hitachi Virtual Storage Platform」は、仮想化技術によって他社製ストレージ製品を含めた異機種ストレージをまとめて統合できる機能を特徴として打ち出している(関連記事:ストレージ階層の仮想化・自動化を実現する「Hitachi Virtual Storage Platform」)。また、ネットアップが提供する「FAS/V6200シリーズ」にも、同様の機能が搭載されている(関連記事:独自のキャッシュ技術でストレージの階層化を実現する「FAS6200シリーズ」)。
仮想化技術をベースにした「シンプロビジョニング」機能もほとんどの製品で実装されている。シンプロビジョニング機能を使うと、サーバに対するストレージ領域の割り当てを物理ディスクと論理的に切り離した仮想ボリュームの単位で行えるため、物理ディスクの制約にとらわれることなくシンプルに容量の割り当てや管理ができるようになる。
また従来なら、データ量増加の将来予測に基づいて物理ディスクを多めに確保し、あらかじめサーバに割り当てておくのが一般的なやり方だった。シンプロビジョニング機能を利用することで、物理ディスク容量が確保できない場合でも、仮想ボリュームを先行して確保し、サーバに割り当てることが可能になった。これにより、ディスクに対する無駄な投資を回避するとともに既存のディスクリソースの利用効率を向上させることもできる。
このシンプロビジョニング機能に関しても、現在各ベンダーが他社製品との差別化をこぞってアピールしている分野である。例えば、日本HPが提供する「HP StorageWorks」やデルの「Dell Compellent」に搭載されるシンプロビジョニング機能は、一度割り当てられた物理ディスク領域を自動的に解放する機能をセールスポイントにしている。
各ベンダーが独自の工夫を盛り込む「データ自動階層化」機能
もう1つ、エンタープライズ向けストレージ製品の最近のトレンドとして挙げられる技術が「データ階層化」だ(関連記事:情報ライフサイクル管理(ILM)を支える階層型ストレージ)。これは、利用頻度が多く、高いスループットが要求されるデータを高速なディスクドライブ上に、利用頻度が少ないデータを低速だが安価なディスクドライブ上にというように、データの種別や利用頻度に応じて異なる性質のディスク上に保管することで、ストレージシステム全体に掛かるコストを最適化しようというものだ。
データ階層化の手法を取り入れれば、ディスク装置のコストを減らすことが可能だ。しかしその一方で、異なる階層のディスク間のデータ移動を管理するための手間とコストが掛かるのが欠点だった。しかし、最近のエンタープライズ向けストレージ製品の多くでは、この階層間のデータ移動をストレージが自動的に実施する機能が搭載されている。
例えば、EMCが提供する「Symmetrix」シリーズには、「FAST」と呼ばれる独自の自動階層化機能が備わっている。また、ネットアップの「FAS6200シリーズ」では、アクセス頻度の高いデータブロックを自動的にフラッシュメモリのキャッシュ上に配置する自動階層化の仕組みをオプションとして用意している。さらに日本オラクルが提供する「Sun ZFS Storage Appliance」でも同様のキャッシュ機能が備わっている。
その中でも、自動階層化の技術を最も全面に打ち出している製品がDell Compellentだ。同製品はもともと、データ自動階層化の技術で定評のあったCompellent Technologiesの製品。自動階層化技術に長く取り組んできた成果が反映された製品だけに、独自の機能が数多く装備されている。
逆に、データ階層化を一切行わない「Tierlessアプローチ」という独自の設計思想に基づいて作られているのが、日本アイ・ビー・エムの「IBM XIV Storage System Gen3」である(関連記事:ビッグデータ管理を簡素化するストレージ「IBM XIV Storage System Gen3」)。分散並列処理アーキテクチャを採用することで、管理の手間が掛かるデータ階層化を一切行わずに高いスループットを実現するというのが、Tierlessアプローチの基本的な考え方だ。他製品がデータ階層化機能のブラッシュアップに注力する中、独自のスタンスに立った製品だといえよう。
次回は、多様化するストレージ製品の構成とともにクラウド時代を見据えた各ベンダーの製品戦略などを考察する。
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エンタープライズディスクストレージ製品紹介
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